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月読の奏  作者: 南爪縮也
第一章 第二幕 疼飢(うずき)の修羅
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#48 木の芽時の出立(東風に濁る理の諦観3)

「総司令。今後の為にはっきりさせておきたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」

 先に支度を整え終えたヘルムホルツがアイザックに物申す。

「以前より気になっていたんですけど、アルベルト国王は総司令がやろうとしている事を知っているんじゃないんですか? 水堀の件でもそうだったけど、国王の態度は明らかに俺達を泳がせている様に感じられた。それに総司令が国王を討つ理由について、俺達はまだその明確な真意を聞かされていません」

 強く詰め寄るヘルムホルツの口調は厳しいものだ。それもそのはず。この先彼らは命懸けの戦いに臨むのだから。国王が危険な獣神の仮の姿であるのは十分承知している。だが彼にはアイザックの並々ならぬ使命感に、腑に落ちぬ僅かな疑問を感じていたのだ。

 あえて気に留める必要はないのかも知れない。自分の気のせいでも良いのだ。しかしその気持ちの微かな迷いを振り払わねば、それが命を奪う要因になるかも知れない。そう考えたヘルムホルツは尋ねずにはいられなかった。そんな彼の胸の内を察したのであろう。総司令は少し口を重くしながらも、その真意について包み隠さず全てを語り出した。

「私が真に獣神を討つ目的とは、少し私情にも絡む事だ。皆も知っていると思うが、私はアルベルト国王を実の父の様に慕っていた。その国王がわけの分からぬままに命を絶たれ、その身を奪われた。その忸怩たる想いは所業の極みであるところ。でもどうしてアルベルト国王は獣神に支配されてしまったのか、どうして伝説の神器などというものを追い求めてしまったのか。誰よりも物理科学を追求する王が、そんな意味不明な事象に(うつつ)を抜かすなど私は未だに信じられていない。でも獣神と相対し、そして討ち取る事が出来れば、その真相が分かるんじゃないのか。根拠は無いが、なんとなく私はそう思うのだよ。身勝手な理由だと(あざ)けてもらっても構わない。ただ私はアルベルト国王が何を目的として道を誤ってしまったのか。それが知りたいが為に、国王に扮した獣神を討とうと決意したんだ。それが真意さ――」

 寂しそうに告げるアイザックからは悲壮感に近い哀しみが伝わって来る。彼にとってみれば、それほどまでにアルベルト国王は大切な人であったのだろう。そんな総司令の感情に理解を示すヘルムホルツであったが、それでも彼は再度確認を促した。

「本当に、それだけが理由なのですか?」

「……」

 ヘルムホルツの問い掛けにアイザックは口ごもる。その表情からして、別に何か思う節があるのだろう。しかし総司令はそれを口にしなかった。ヘルムホルツはその姿に話せない理由が存在すると即座に察する。彼はあえてそれを深掘りしようとはしなかった。恐らくそこには一筋縄ではいかない根深い問題が存在するのだろう。ただヘルムホルツは最後に一つだけ、アイザックに言葉を掛けた。

「総司令の考えは俺達の及ばぬ所にあります。ですので深く追求するまねはしません。でもいつか話せる時が来たら、その時は総司令の胸の内を全て聞かせて下さい」

 ヘルムホルツは軽く微笑みながらそう告げた。そしてその言葉にアイザックは救われる想いがした。済まないとばかりに総司令は頭を下げる。部下に対しても正直に詫びを入れるその姿勢は、アイザックの器の大きさを改めて知らしめるところであり、皆は思わず息を飲んだ。ただその行為は同時に自らの弱さを露呈することにもなる。それはそれで懐の深さを感じさせはするが、不憫に見受けられるのも事実だ。人であれば誰しも心に弱さは秘めるもの。だがそれでも総司令は強くあらねばならないはず。そう感じたアニェージは、彼を気遣いながら話題を逸らした。

「グリーヴスでジュール達をシュレーディンガーに引き合わせる件については、私が責任をもって任に当たります。だから総司令は心配なくご自身の成すべき仕事を進めて下さい」

「あぁ、了解したよ、アニェージ。よろしく頼む。そしてアカデメイアに拉致されていたその少女の面倒を見てくれ。ヘルムホルツから報告は聞いているが、やはり彼女の体についてもシュレーディンガーに診てもらうのが最良だろう。言いそびれていたが、彼女の事は私の(めい)として王子には連絡済みだ。だから同じ飛行機に搭乗できるはずだし、それが最も安全な移動にも繋がるはずだからね」

 総司令の行き届いた手筈(てはず)の見事さに皆は瞠目する。この人は何処まで先を見通しているのであろうか。ただリュザックは総司令に脱帽しながらも、王子について聞き及んだ。

「ちなみに王子様は国王の真の姿を知っているんかえ? 実の息子なんだき、王子が国王の手先(てさき)になっとったらアウトだでよ」

「それは心配には及ばんよ。トーマス王子は獣神の事は知らないはずだ。そして獣神の方も、王子には接触を控えている。恐らくは親族である王子ならば、正体を見破ってしまうだろうと危惧しているのだ。まぁ、たとえそれが現実になったとしても、獣神にはさして影響はないものと考えられるが、それでも奴からすれば無用な物議は避けたいのかも知れん。ただ確実に言えるのは、王子は【人】として信頼出来るという事だ」

「それなら良いいきね。でも勘の鋭い王子が、中身の入れ替わった国王の事に気付いていないっちゅうのも、少し疑わしい気もするがかよ」

 リュザックはそう言いながら王子が国王と疎遠な理由をそれとなく読み取った。ただ彼は訝しく口調を濁らせはするものの、思いの他その表情は陽気なものだった。自分の目で確認すれば良い話しだと、彼はそう思っているのかも知れない。そんな思考力の優れたリュザックの推測にアイザックは目を見張っていたが、直ぐに気持ちを切り替えて皆に下知した。

「やらねばならぬ仕事が多く存在するが、王子の護衛もしっかり頼むぞ。グリーヴスに向かう名目上の理由はそれなのだからな。今晩未明に王族の専用機で出発する。お前達は一旦アニェージのホテルに戻り、最後の支度をしたらその足で空港に向かえ。日付が変わる頃にはトーマス王子も空港に到着するだろうから、それまでは静かに待機しておくのだぞ」


 各自が暫定の支度を整え終わると、アイザックのもとに再度集った。それらの表情は思い思いの顔つきをしていたが、それでも一人として精彩を欠く者はいなかった。そんな彼らの顔を総司令は頼もしそうに見つめる。そして彼はグリーヴスへ旅立つジュール達に細心の注意を呼び掛けるとともに、新たな協力者の存在を口にした。

「裏組織にマークされているお前達だ。今こうして首都を離れるのは、ある意味幸運なのかも知れん。だが奴らの目は何処にでも存在する。その事はくれぐれも肝に命じて置くのだぞ。計画では王子のグリーヴス滞在は五日ほどになる。その間にどうにかシュレーディンガーと接触して話しを進めろ。そしてお前達が再びルヴェリエの地を踏みしめた時、改めてグラム博士の残した最終定理について謎解きを再開しよう。恐らくそれから先はもう、他者を気遣えないほど厳しい戦いが待ち受けているだろうがな。それともう一つ。グリーヴスに私の協力者を差し向けて置いた。未だに疑い深く乗り気ではないが、それでも彼ならばお前達の力になってくれるはずだ」

「協力者? それって俺達の知ってる人なんですか?」

 突然のアイザックの知らせにジュールは首を傾けながら尋ねる。極秘裏に進行する神殺しの計画に参加する協力者とは、一体どんな人物なのだろうか。誰よりも慎重であり、かつ類まれな審美眼を有する総司令が協力を求めた人物なら、信用に足りるのは申し分ないのだろう。ただジュールは不安を露わにせずにはいられなかった。命を削り捨てるほどに、神に挑むのは生易しい事ではない。だからこそ、決して折れない強い精神の持ち主でなければ、仲間として共闘することは出来ないのだ。それは自分の命のみならず、仲間全体を危機に至らしめる事にも繋がってしまうのだから。しかしジュールはアイザックの告げたその者の名を聞くと、それとはまったく別の心境を思い描いた。

「我らに協力しグリーヴスでお前達を待つ者。それはアダムズ軍の東方司令官【ストークス中将】だ」

「ス、ストークス中将だと!」

 思わず声を上げたのはリュザックだった。あまりの大物の名に彼は驚嘆し舌を巻いている。でもどうしてそんな上層部に名を連ねる軍の将校が協力を承諾したのだろうか。そう感じる皆の不安と驚きを(ぬぐ)う様に、アイザックは簡素ではあるがその経緯を説明した。

「ストークスは軍において私の一番弟子なんだよ。勤勉とは言い難い性格ではあるが、それでも軍を機能的に組織する手腕は誰もが強く認めるところであり、信頼のおける者だ。私にとって軍人で信用できる者は限られている。ただその内の一人が彼だったという話なのだよ。そしてこれも幸運の一つなのだが、ストークスは東方指令となるずっと前より、長い期間ルヴェリエから離れている。それが結果として国王やアカデメイアから距離を置くことになっていた。話の大きさに彼自身はまだ迷っている部分はあるだろうが、それでもあいつは私達を裏切る様な矮小な男ではないはずだ。それはボーアの反乱でその指揮に(くみ)したジュールやリュザックなら、理解出来るだろ」


 ストークス中将はボーアの反乱の終盤において、膠着(こうちゃく)した戦況を打開した最大の功労者である。

 開戦当初よりアダムズ軍の主な将校達は、圧倒的である自軍の戦力に慢心し、敵対するボーア軍を舐めきっていた。だがそれは当時の状況からすればごく自然な考えであり、一般の隊士ですら早期の終戦を予想し疑わなかった。しかしその思惑は想定外のものとなる。

 ボーア軍の兵士一人一人の決死の覚悟によって戦争が長引いたのは言うまでもない事実である。ただそれ以上に戦場を混乱に追いやったのは、ボーア軍の所持する特殊な軍事兵器の影響であり、中でも対象に幻覚を見せる【ミクロ幻想榴弾(りゅうだん)】による被害が甚大であった。

 軍事兵器の性能差や物量差もさることながら、ボーア軍において最も不利な要因は兵士の数の絶望的な少なさである。しかし彼らはミクロ幻想榴弾を使用することで敵対するアダムズ軍隊士に幻覚を見せ、その錯覚作用により不利な状況を打開したのだ。そしていつしかアダムズ軍の隊士達は、そこにいるはずの無いボーア軍兵士に怯え、(すく)み上がっていった。

 それでもアダムズ軍は体力に物を言わせ戦闘行為を続ける。いたずらに被害は拡大していく一方だったが、退くに退けない彼らには数に頼る作戦を続行するしかなかった。ただボーア軍にしてみても、そんなアダムズ軍の物量投下作戦は脅威であった。もともとボーア軍の兵士自身、この戦争に勝てる見込みなど初めから持ってはいなかったのだ。でも彼らは慈愛するリーゼ姫の為に尽力し戦い続けた。そして戦況は泥沼へと突入してゆく。

 開戦より三年半が経過した。まったく事態が好転しない事に、アダムズ軍の幹部将校達は怒りを通り越し(さじ)を投げる想いだった。だがそんな時に一人の若き将校に注目が集まる。開戦以前よりアダムズ東部を管轄していた将校の一人である彼は、混沌とする戦況の中で唯一善戦していた。効果的な戦略を駆使し、ボーア軍の特殊兵器を物ともしない卓越した戦術で数々の戦果を挙げてゆく。あれ程までに苦渋を強いられていたミクロ幻想榴弾ですら、彼の指揮する部隊は(てい)よく受け流していた。巧みに戦況を有利に進める彼に対し、軍の幹部達は唸りを上げる。そしてそんな彼に白羽の矢が立つのは時間の問題であり、自然の流れであった。

 この戦争で作戦総指揮を(にな)っていたトウェイン将軍は彼に命令を下す。全軍を指揮し、ボーア軍の討伐に当たれと。その指令に対して若き将校は若干の躊躇(ためら)いを見せたものの、ボーア軍に対して全面攻撃を開始した。

 彼の指揮による奇抜な作戦を遂行し始めたアダムズ群は、瞬く間にボーア軍を後退しせしめる。そしてボーア軍をプトレマイオス遺跡内部に閉じ込め包囲した。籠城を余儀なくされた彼らの絶望感は相当なものであっただろう。それでもボーア軍は遺跡の地下に眠る古代都市を利用して必死に抵抗した。しかし徐々にではあるが確実にその包囲網は狭く縮小していく。アダムズ軍のその攻撃の凄まじさたるや、まるで鬼の所業かと思わせるほどに完膚無きものであったからだ。

 隙をまったく見せず、若き将校は卓越した手腕で容赦なくボーア軍を追い詰めてゆく。戦争を指揮する者の責任を彼はよく理解していたのだろう。少しでも相手に情を掛け攻撃の手を緩めれば、それは直ぐ様当方に跳ね返り自軍が傷つくことになるのだと。それにボーア軍の決死の覚悟がどれほどのものなのか、それはこの戦争を通して嫌と言うほど痛感している。だからこそ若き将校は、忸怩たるも心の迷いを打ち消し、気持ちを鬼と化して攻撃を指揮し続けたのだ。そして彼は最後の攻撃を全軍に下知する。満月の夜の翌朝、日の出と共に全軍進行を開始せよと。

 しかしその満月の夜に事態は急変する。死の鏡の影響によって、ボーア将軍を含んだパーシヴァルの幹部兵士のほとんどが命を絶たれてしまった。そして生き残ったボーア軍兵士は無条件降伏を申し出る。出鼻を(くじ)かれた形になったアダムズ軍ではあったが、それでも若き将校は胸を撫で下ろしていた。これ以上無駄な殺戮(さつりく)を繰り返さないで済むと。軍人とは言え、人殺しを良しと思うはずがない。だが彼の命令で多くの人命が失われて逝ったことも、否定しようのない現実なのだ。そしてこのまま作戦を続ければ、双方において更に多くの犠牲が生じる事となろう。理由は分からないまでも、それが土壇場で回避された。それは彼にとって、いや戦争に身を投じる全ての者達にとって、願ってもない安堵感を抱かせる結果になった。

 こうしてボーアの反乱は終結したわけだが、アダムズ軍にとっての収益はリーゼ姫の身柄を無事に確保できた事以外に何もなかった。確かに姫の奪還こそがこの戦争の目的である。しかしその代償はあまりにも大きかった。

 ボーアの反乱でアダムズ軍は二百余名にも及ぶ隊士の命を失い、その数倍の負傷者をも生み出した。また多額の国費を投入したことで、国家の経済状況にも悪影響を及ぼしていた。それに戦後の処理として残された仕事は膨大であり多岐に渡っている。その後始末を誰が行うのか。この上なく面倒で骨の折れる仕事に、軍の幹部将校やアダムズ王国の官僚達は見下げ果てていた。そこで起用されたのが、この戦いで英雄となった若き将校の彼なのである。

 終戦に導いた最大の立役者として、彼は【中将】の称号を得ると共に【東方司令官】の地位まで寄与された。軍人としてはこの上ない名誉な勲功(くんこう)である。しかしそれは厄介仕事を押し付ける為に、王国の高官によって体よく祀り上げられた飾りものに過ぎなかった。そして彼はその不遇を十分認識しつつも、嘆かずに現在まで職務を全うし続けている。そんな若き将校こそが【ストークス】であった。


「ストークス中将が味方になってくれるなんて、これ以上心強い事はありませんよ!」

 ジュールは思わず声を上げる。彼はボーアの反乱でストークスの直接指揮する作戦に従事していた。それゆえにジュールはストークスの卓越した戦闘手腕を直に体感していたのだ。

 恐ろしいまでに手加減なく敵を駆逐していくストークス。その面影を思い出したジュールの気持ちは激しく(おど)った。だがそれにもまして彼は言い知れない安堵感を感じホッとする。もしストークスが敵であったならば、想像し得ない凄惨(せいさん)な未来が待ち受けていたんじゃないのかと。しかし彼は自分達の味方なのだ。そう思うジュールは嬉しさを噛みしめずにはいられなかった。そしてその心境はリュザックも同じだった。

 当時からトランザムとして戦争に参加したリュザックは、ドルトンらと共にストークスの直接の指示で戦場を駆けた。そこで彼は優れた状況判断と的確に広範囲を見渡すストークスの洞察力の高さに、ぐうの音も出ないほど目を見張った。同じく洞察力に優れたリュザックだからこそ、ストークスの持つ戦術家としてのスキルの高さを誰よりも評価し畏敬(いけい)したのだ。そんなリュザックもジュール同様に安堵感を抱いている。それでも彼は総司令に対して再確認するように尋ねた。

「本当にストークス中将は味方なんだきな? それにしても良くあの人が獣神に挑む事を承諾したきね。いくら総司令の一番弟子だからって、中将がそんな現実離れした話を信じるとは思えんでよ」

 リュザックは少し首を傾けながら総司令に視線を向けている。彼の知る所、ストークスは現実主義者なのだ。目の前にある事実に対し、明確な対処を効果的な手法で遂行する。それが強みであるストークスが、神話に語り継がれる曖昧な獣神という存在に対して真剣に立ち向かってくれるのだろうか。リュザックはそう思ったのである。それに表面上は真面目に職務を遂行しているストークスだが、実は要領よくかなり手を抜いて仕事をしている。彼の本質は事なかれ主義を信条としており、かつ目立たぬところでは御座なり主義を貫いているのだ。そしてリュザックはそんなストークスの不真面目で姑息な一面も尊敬の対象としていた。自分が目指すべき人物像こそ、彼であるとリュザックは考えていたのだ。でもだからこそ、ストークスが総司令の切望とは言え、それだけが理由で神に挑むとは考えられなかった。リュザックは強くアイザックを見つめている。そんな彼に対して総司令は動じずに返した。

「先にも言ったように、ストークスはまだ完全には決心していない。彼の中に迷いがあるのは確かだ。でもそれは仕方ないだろ。そもそもボーアの反乱の時とは異なり、今度敵として相対するのは【人】じゃなくて【神】なのだからな」

「だったら中将が手を退く事も考えられるきね。総司令が信頼する人物じゃけ、裏切るマネは無いと信じたいけんど、それでも期待する分だけそうなった時の落胆度はデカいぜよ」

 リュザックの発言にジュールも同調しながら頷く。ただそんな彼らにアイザックは軽く微笑みながら告げた。

「お前達が心配する気持ちは分かる。でも大丈夫! あいつは必ず協力してくれるよ、きっとな」

 確信めいた口調で語りだしたアイザックの話にジュール達は耳を傾ける。

「ストークスはボーアの反乱に開戦当初から大儀を感じられずにいた。ゆえに彼はパーシヴァル兵に対して銃を向けるのを思い悩んでいたのだ。なんの遺恨もない相手に、理由も知らないままどうして挑まなければならないのかとな。長期間アダムズ東部に暮らしていたストークスにしてみれば、その想いは人一倍大きかったのだろう。土地柄(とちがら)パーシヴァル人とも数多く親交を深めていたはずだからね。だがあいつは軍人としての使命を(まっと)うした。心を鬼にしてボーア軍を駆逐したのだ。だれかがそれをしなければ、自軍の隊士達の命が更に失われてしまう。そう考えたストークスは強く決意した。すでに戦争は始まってしまったのだ。被害を最小限に食い(とど)めるには、一秒でも早く戦争を終結させる(ほか)ないと。そして彼は忸怩たる嫌悪感に苛まれながらも攻撃を命令し続けた。全ての責任を自分一人で背負う覚悟でね。しかし彼は真実を知った。その大義の無い戦争のきっかけが、獣神によるものであると。最も憎むべき相手は誰であるか、あいつにとってその答えはもう出ているはずだ。グリーヴスで直接あいつに会えば、お前達にもそれは分かるだろう」


 アイザックの語ったストークスの心情は、彼の胸の内を的確に見抜いたものなのだろう。その証拠にジュールは総司令の言葉に負い目の様な気の咎めは微塵にも感じなかった。いやむしろ頼もしい協力者の出現に、胸の高鳴りが抑えられないほどだ。

 神に挑むにはグラム博士の最終定理を紐解くのが必須事項なのは分かり切っている。だがそれにもまして必要なのは、屈強な精神と肉体を持ち合わせた信頼できる仲間の存在なのだ。そしてストークスはその仲間としてそれ以上望むのが不可能なほど申し分ない人物であり、願わしい協力者なのである。

 自然と表情が緩むジュール。その想いはヘルムホルツにアニェージ、リュザックとて同じはずだ。彼らはお互いの顔を見合いながら先行きに自信を(のぞ)かせた。それほどまでにストークスの存在は大きなものなのだ。ただそんな中でリュザックが少し皮肉を込めた口ぶりで嘆いた。

「ストークス中将ほどの人が力を貸してくれるんだったら、俺の存在は必要ないんじゃないがか? 正直なところ、俺はまだ今回の件に二の足を踏んでるでよ。それにグリーヴスなんて田舎街に行きとうないがきね」

 溜息まじりに呟いたリュザックは肩を落とす。確かに彼にしてみれば、アイザックによって無理やり引きずり込まれた形なのだ。彼の中に命を懸ける十分な理由があるとは到底思えない。それでも一旦は協力を受け入れたリュザックに対し、アニェージが嘲笑しながらトゲのある口調で言った。

「グリーヴスが田舎街だっていうのは聞き捨てならないね。個人的に言わせてもらえば、グリーヴスは決してルヴェリエにも負けていないと思っている。それほどあの街は都会的であって、洗練された近代都市なんだよ。なにせこの国の経済を下支えしている場所なんだからね。それにしてもお前の口から田舎を嫌う言葉が出て来るなんて思わなかったよ。だってその(なま)り具合からして、地方の出身なんでしょ? そうか、だから逆に都会に焦がれ、田舎を軽視しているのか」

「バカを言うなきよ! 俺は生まれも育ちもルヴェリエだでな。北部出身の親父と南部出身の御袋が中央の首都で出会い恋に落ちた。その愛の結晶が俺だきね。これほどの都会人、他におらんがよ!」

「なんとまぁ、幸せな話だね。でもお前の(なま)りがどうしてごちゃ混ぜなのかは理解出来たよ。ただ私はお前が同行するにしてもしないにしても、別に気にはしないよ。だから好きにしてくれて構わない。始めから私はお前に何も期待はしていないからさ。それでも少なからずお前の事は認めていた。観測所で見せた身の(こな)しや、ソーニャの話における観察力の高さにね。だからもしお前が同行するのなら、グリーヴスで酒の一杯でも振る舞ってやろうと思っていたんだけどな。残念だよ」

 アニェージは満更でもなさそうに軽く落胆する素振りを見せる。そんな彼女に対し、少し動揺しながらもリュザックは確かめる様に聞き尋ねた。

「グ、グリーヴスの酒っていうのは(うま)いのかえ?」

 恐縮しながらリュザックは確認を促す。そんな彼にアニェージは胸を張りながら揚々と応えた。

「腰を抜かすほど旨いに決まってるでしょ。酒好きのくせにそんな事も知らないの。東部は米も麦も上等なものばかりなのよ。質の良い原材料が揃っているからこそ、自然に銘酒が生まれそこに根付いたの。一度飲んだらその口当たりの良さに肝を潰すよ」

「そ、それならグリーヴスに行かない理由はないきよ。アニェージちゃんが飛び切りの酒をご馳走してくれるっちゅうんなら、俺は東部で死んでも悔いはないきね」

 どうしてこの人はこう軽薄で出鱈目(でたらめ)な性格をしているんだろうか。洞察力の高さに目を見張り、その前向きな態度を見直したはずのジュールだったが、しかし命を懸ける事など二の次と言った感じで女と酒に目が(くら)んでいるリュザックに彼は呆れた。ただそんな不真面目な先輩隊士の態度に気持ちが和むのも事実である。戦いを前にその瞬間だけは(つら)い現実を忘れさせるリュザックの行動に、ジュールは唖然としながらも心強い頼もしさを覚えていた。それでも彼は総司令に対して最後に一つ、首都を立つ前にどうしても聞き及ばねばならない胸にくすぶる思いを口にした。


 最後の質問にジュールは思いの丈をぶつけた。この場でそれを明確にしなければ、今後自分に訪れるであろう決断の時に、必ず迷いが生じてしまうと感じたからだ。なによりその迷いは仲間を危険に(さら)す事態に直結するはずである。しかし裏を返せば総司令にとって、それは耐え難い苦痛を強いることになってしまうのだ。見方によっては獣神を倒すよりも、それはずっと難しい頭痛の種なのだから。でもだからといって、その課題を放置するわけにはいかない。ジュールの告げた最後の質問。そう、それは総司令の実子であるテスラについての処遇だった。

「総司令、あなたにはっきりとした答えをお尋ねしたい。それはテスラについての今後の対応です。あいつは国王直轄部隊のコルベットの一員だ。そして間違いなくあいつは国王の正体を知っている。そう考えなければ納得出来ないほど、あいつの内面は変わってしまった。――いや、決定付けるのはまだ早いかも知れない。そうであってほしいと信じたい。でも肯定的にそう思うのは、テスラが敵であってほしくないという俺の希望であって、現実的に考えればあいつが獣神側についたのは確実なんです。だってそう思わなければ説明のつかない言動や行為が、あいつから数多く見受けられてしまうんだ。どうなんですか総司令! あいつは、テスラは何を考えてコルベットになったんですか!」

 ジュールの悲痛な叫びがアイザックに浴びせられる。彼にとって親友であるはずのテスラに剣を向けねばならぬ事は絶対に避けたいはずだ。それでも今後の成り行き次第では、それは避けられぬ結末となろう。すでに彼とテスラは羅城門で一度、現実に相対しているのだから。

 ジュールの胸をきつく締め上げる感覚は尋常ではない。それでも彼は決断を迫った。たとえ理に適っていなくても、彼には無理やりにでも収まりをつける理由が必要だったのだ。そうでもしなければ自分はテスラに勝てない。たとえ取り(つくろ)った口実だったとしても、彼にはテスラと戦う意義、テスラを討つ根源たる動機が欲しかった。アイザックを鋭く見つめるジュールの視線は辛い哀しみで溢れている。そしてその気持ちは総司令に痛いほどに伝わっていた。アイザックにしてもまた、実の息子に剣を向けることになるのだから。

 神妙な面持ちでアイザックは項垂(うなだ)れている。それはジュールの問いが極めて確信めいたものであり、また避けて通れない現実として、彼自身強く受け止めているからであった。それでも総司令は搾り出すように答えを告げる。怒りをかみ殺した様に、その表情は薄っすらと赤く色付いていた。

「テスラがお前たちの前に立ちはだかる様な事があれば、その時は容赦なく殺せ。あいつは王国きっての剣の使い手だ。半端な対応では、逆にやられるのはお前達の方だからな」

 アイザックは強くそう言い放った。しかしその言葉には僅かであるが迷いが感じられる。それはそうだろう。実の息子の命を討つのを許可したのだ。理屈ではそれが正論であると分かりきっている。世界中の人々の命と息子一人の命、そのどちらが重要なものであるかは天秤に掛けるまでもない。しかし親の心情として、それは受け入れ難いのも事実なのだ。たとえ世界を敵に回したとしても、自分の愛する子供を守りたいと思うのは親の常である。それでもアイザックは答えを下した。彼は人の親であることよりも、総司令としての職務を優先したのだ。決して報われない試練に満ちた職責を。そんな悲壮感漂うアイザックに対して、ジュールは少し恐縮しながらももう一度だけ確認した。

「本当に、良いんですか――」

 アイザックはグッと奥歯をかみ締めるも、一呼吸置いてからジュールに返した。

「構わん。むしろ躊躇(ちゅうちょ)せずに全力で叩き潰せ! コルベットに所属した時より、当然テスラにはお前と戦う覚悟は決まっているはずなのだ。だからお前も腹を(くく)れ、ジュール。どう(さと)したとて、あいつが考えを改めるとは思えない。それほどまでにテスラの決意は固持されている。ただどうしてあいつが獣神側に(くみ)したのか、その理由について話すのはもう少しだけ私に時間をくれないか? お前達がグリーヴスから帰任するまでの間に、最後にもう一度だけ確かめてみるつもりだ。父として私が直接テスラに真意を問う。それでもあいつの意志に変化がない様であれば、もう何も語るまい。だから頼む、もう少しだけ時間をくれ――」

 アイザックは頭を下げた。その姿からは彼の(なげ)きの様な最後の願いがひしひしと伝わって来る。息子を真に大切な存在だと思っているからからこそ、アイザックは切望しているのだ。そんな彼の態度にジュールは頷いてみせた。彼もまた、総司令の最後の説得に懸けたいのだ。

 どうしてテスラが道を踏み誤ったのかは気掛かりで仕方ない。でも最後に微かな望みが残されているのであれば、彼はアイザックにそれを託したいと心から思った。ただその時、ジュールは背中を軽く摘まれる。総司令の話に集中していたために、彼は背後の気配にまったく気づかなかった。

 ジュールはハッとしながらもそっと振り返る。するとそこには身を(すぼ)めたソーニャが控えめに彼の服を掴んでいた。


 ソーニャは訴えかける様にジュールの目を見つめている。その眼差しにジュールは彼女の要望を即座に把握した。ソーニャには総司令に確かめなければならない事案があるのだと。しかし彼女は目の前にいるアダムズ軍総司令という権威ある存在に萎縮してしまい、口が開けないのである。そのため彼女はジュールに代弁してほしいと訴えているのだ。それを受け止めたジュールはソーニャの目を見つめ返し強く頷く。そして彼はアイザックに向き直り聞き尋ねた。

「総司令。実はここにいるソーニャがアカデメイアの施設を抜け出す際、あなたに渡すよう授けられた品があったんです。それは裏組織の仕事を担う科学者の一人が、自分の知り得るアカデメイアの情報を保存したメモリーカードでした。でもそれは今、テスラの手中にあるんです。まさかとは思いますが、あいつからメモリーカードを渡されてませんか?」

 僅かながらもジュールはアイザックの返答に期待を込める。そして彼の後ろでは、ソーニャも同様の気持ちで固唾を飲んでいた。しかし彼らの期待は予想通りに打ち破られる。アイザックは目を閉じながら首を横に振った。

「済まないな。そのような物は受け取っていない。と言うよりも、テスラとはここ半月近くまともに会ってもいないんだよ」

 総司令の返答に落胆するジュールとソーニャ。ただそんな二人を横目にアニェージが矢継ぎ早に質問を投げ掛けた。

「ならば王立協会の科学者で、ノーベルという男をご存じないでしょうか? メモリーカードを彼女に託した科学者の名前なのですが」

 アイザックはアニェージの問いに首を傾げている。王立協会の目ぼしい科学者を思い浮かべているのだろう。しかし彼の口から出たのは詮方(せんかた)ない言葉だった。

「残念だけど私の知る限り、ノーベルという名の科学者に心当たりは無いな。でもお前はどうだ、ヘルムホルツ。同じ王立協会に身を置くものとして、心当たりはないか?」

 総司令の問い掛けに皆の視線がヘルムホルツに向けられる。すると彼はバツが悪そうに頭を掻きながら否定的に告げた。

「勘弁して下さいよ。もし知ってるならとっくに伝えてますって。それに俺は王立協会に属してはいても、軍事に携わる科学者くらいしか面識はないんです。軍事兵器の開発は王立協会の中でも限定された科学者しか担う権限がない。だから俺の知る科学者なんて、協会内でも僅かなモンです。そもそも首都にいる王立協会の科学者は、エクレイデス研究所だけでも三千人は在籍してますからね。どこか特徴的な人相でもしてれば気に留めたかも知れないけど、名前だけじゃ難しいですよ」

 ヘルムホルツは手の施しようがないと諦めを告げる。ただそんな彼にアニェージが食い下がった。

「見た目にはどこにでもいそうな華奢(きゃしゃ)な若造だったけど、特徴ならあったよ。あいつの【水色の瞳】は極めて印象深かったからね。恐らくノーベルを一度見た者なら、大抵はその瞳の珍しさに気に留めておくはずだよ。一瞬パーシヴァル人の瞳にも似てたけど、あれは完全な別物だった。真偽のほどは分からないけど、あいつ自身も北の国の出身だと言っていたしね。ただ私はあの澄んだ水色の瞳に得体の知れない嫌悪感を覚えたんだ。それに天体観測所での異常な豹変ぶりには、どこか現実離れした不気味な印象を感じ取った。今になって冷静に思い返せば、あれはまるで異次元の存在であるかのようにしか思えない。あいつは一体何者なんだろう?」

 アニェージは苦言を吐き捨てた。一見美しく見える水色の瞳ではあるが、その奥からは身の毛の弥立つ恐怖感を感じてならない。なにより幼い子供の描いた絵を微笑ましく見せた彼の柔和な態度と、ソーニャの前で見せた猟奇的な一面。その性格の(へだ)たり様は異常としか言いようがないのだ。豹顔のヤツとは質の異なる気味悪さに悪寒の走るアニェージの身震いは止まらない。アカデメイアとは、どこまでふざけた奴らの集まりなんだ。アニェージは気分を害しながら不審さを露わにしている。ただそんな彼女とは対照的に、アイザックは物思いに(ふけ)るよう考え込んでいた。アニェージの告げたノーベルの面影にどこか思い当たる節があるのだろうか。そんな彼に気がついたジュールはふと尋ねた。

「どうかしましたか、総司令。ノーベルについて何か思い出した事でもあるんですか?」

「いや済まん、そのノーベルという科学者については見目(けんもく)つかない。ただ水色の瞳というのに、ちょっとな……」

 アイザックは窓辺に移動しながら話を続けた。

「アダムズ王国の北部には二十にも及ぶ小国が隣接している。それらの小国とアダムズ北部を含んだ地域一帯を、古人は【愛沙斗羅(えすとら)】と呼んでいた。そしてその愛沙斗羅(えすとら)のうち、さらに北にある北極海に面した地域を【北羅(ほくら)】と呼ぶのだが、その北羅には古来より【カッシーニの戦士】なる伝説が言い伝えられているんだよ」

「カッシーニの戦士? 聞いた事ないな」

 首を捻るジュールに対し、軽く頷きながら総司令は続きを語った。

「数百年前になるが、北羅にはカッシーニと呼ばれる小国があった。そこには水色の瞳を携えたカッシーニ人が暮らしていて、高度な文明を築いて繁栄していた。だがある日の事、カッシーニは突如発生した天変地異によって一夜にして壊滅してしまう。もちろんそこに暮らしていたカッシーニ人も全てが死に絶えた。しかしそこから伝説が始まったんだ。北羅では厳しい自然環境による食糧自給の乏しさから、時折血生臭い事件が発生していた。だがそんな時にどこからともなく水色の瞳をもった屈強の戦士が現れ、瞬く間に混乱を平定したのだ。平和が訪れると、水色の瞳の戦士は何も告げぬまま何処成(いずこな)りと消え失せてしまう。そしてまた北羅のどこかで紛争が巻き起こると、再び水色の瞳の戦士が出現し、混乱を収めたというのだ。その話が実話かどうかははっきりしていない。でも未だに北羅では、その言い伝えは根深く生き続けている。悪事を働くと、水色の瞳の戦士に懲らしめられるぞっていうふうにね」

 遠く窓の外を眺めながらアイザックは伝説の概要を告げた。いつからか窓の外は強い風が吹き始めている。春一番を思わせる南東からの強い突風が、時折屋敷全体を(あお)るほどに駆け抜けていった。そんな外の景色を見ながらジュールは思う。言われてみれば確かに北部の小国という土地柄と、水色の瞳をもった人々というのはノーベルの特徴と噛み合っている。伝説を知っている者がノーベルの特徴を聞かされたならば、間違いなくそれを思い出すはずだろう。ただ戦士と呼ぶにはノーベルの容姿は貧弱過ぎる。それでも何か繋がりがあるのではないか――。ジュールは胸の内でそう感じずにはいられなかった。ただその話に相槌を打ちながら聞いていたリュザックが、徐に不思議な事を口走った。

「その話なら知っとるきね。ガキの頃に北部出身の親父からよく聞かされたがよ。でも俺が聞かされたのは、人じゃなこうて【虎】だったきね。イタズラすると、水色の目をした(つの)の生えた虎に食い殺されるって脅かされたでな。子供だっただけに、恐ろしゅうてよく覚えちゅうがね」

 父親に叱られた幼少期を思い出しているのだろう。リュザックは苦笑いを浮かべている。するとアイザックは彼の話を唯々として(うべな)った。

「あくまで伝説の話だ。北羅でも場所によって話の中身は少しずつ変わるものなんだろう。ただ共通して言えるのは、どの話にも水色の瞳をもった何かしらが登場するという事だ。そしてそれらは悪を容赦なく断罪している。絶大な力で敵をねじ伏せてね。――それにしても余計な話で本題が大きく逸れてしまったか。そのノーベルと言う科学者については、後で協会のメインサーバーから探ってみるとしよう。本当に協会の科学者なら登録されているはずだからな。その他に何か私に伝えたい事はあるかい?」

 アイザックはジュールの陰に身を置くソーニャに向かい、穏やかに呼びかけた。彼女は未だ緊張を隠せずにジュールの服を掴んでいる。それでもソーニャはポケットより一枚の写真を取出し、それを総司令に差し出した。

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