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月読の奏  作者: 南爪縮也
第一章 第二幕 疼飢(うずき)の修羅
47/109

#46 木の芽時の出立(東風に濁る理の諦観1)

「激しい水圧に押し流されて気を失っていた私は、朝焼けの眩しい光で目を覚ましました。どれくらいの時間意識を失っていたかは分かりません。でも運よく組織の追手には見つかりませんでした」

 ソーニャの目からは止まらずに涙が流れ出ていた。ジュール達に拉致後の真相を伝えた事で、胸に詰まっていた想いが溢れたのだろう。それほどまでに彼女の話は衝撃的であり、また辛く重苦しいものだった。

 少女が体験するにはあまりにも痛ましい惨状に、話を聞いたジュール達は言葉を失っていた。ただ不思議な事に、ソーニャは涙こそ果てしなく流してはいるが、その表情は依然として平素を保ち続けている。それはまるで涙を流すだけの人形みたいだ。そんな感情の消え失せた彼女の表情に、ジュールは解せない不安感を覚えずにはいられなかった。

 極度の悲惨な体験が彼女の精神を崩壊寸前まで追い遣ったとでもいうのか。確かにそう考えても不思議ではないくらい、ソーニャは壮絶な体験をした。けれどそれだけでは納得するには不十分な何かを、ジュールは胸の奥で感じ取っていた。

 少女の話を聞けば、先への道が切り開ける。そう期待していたジュールにとって、目の前のソーニャの姿は悪い意味で思惑の外れたものだった。見た目には普通の少女の姿であるのに、彼女からは腑に落ちない怖さを感じて仕方ない。何故そんなふうに感じてしまうのか。得体の知れない不快感にジュールは(さいな)まれる。ただそんな彼の見つめる前で、ソーニャは無表情のまま続きを口にした。

「意識を失っていた為、どうやってあの庭園から脱出したのかは分かりません。ただ意識が戻った時、私の体はお城の御堀に浮かんでいました。ちょうど私の背丈と同じくらいの枯れ木に掴まりながら――。意識がない中で、どうしてそんな木にしがみついていたのかも分かりません。でも今になって思えば、ラウラやマラソン選手の女性が命を賭して私をあの施設から逃がしてくれた事に、何としても応えなければいけないと無意識に足掻いたんだと思います。それと私の周囲には、大量の落ち葉や折れた木の枝が水面を覆い尽くして浮かんでいました。恐らく私の体と一緒に庭園から流れ出たものなのでしょう。でもそれらが私の体を目立たなく隠れさせてくれました。運が良かっただけなのかも知れません。けれど私にはそれすら目に見えないラウラの力で守られているんだと思えました。冷たい水の中に身を浸しながらも、落ち葉で身を包まれた私はどこか温かみを感じていました。とても優しく、それでいて哀しい。人の温もりとは比べ物にならないほど些細な温かさではあったけれど、私にはそれでも掛け替えのないものに感じられた。でもだからこそ、どうしてラウラが自分自身を犠牲にしてまで私を助けたのか、その理由が知りたかった。私は彼女にありがとうの言葉しか伝えていない――。だからラウラ、もう一度ちゃんとあなたに会いたいよ……」


 涙ながらに語るソーニャの胸の内は悲しみで溢れ返っている。それは誰の目から見ても明らかであり、彼女の遣り切れない想いに話を聞く誰もがみな胸を打たれた。しかしその切ない言葉とは裏腹に、彼女の表情には相変わらず変化が見られない。どこか人間味が薄れている様にも感じられる。どうして少女は無表情を保ち続けているのだろうか。もしやこれもアカデメイアの人体実験による何らかの後遺症なのか。もしそうだとしたなら、裏組織は本当に悪魔の巣窟(そうくつ)とでも言うべき存在なのだろう。

 激しい怒りを込み上げるジュールは拳を強く握りしめる。こんな居た堪れない惨事は決して許されるものではない。それはこの場にいる誰しもが共通して感じた心情であり、まして収まりがつかないアニェージなどは、たまらず怒声を上げたほどだ。彼女の性格からして、素直に感じた胸の内をそのまま吐き出しただけなのだろう。でもその姿はまるで、感情を露わにすることの出来ないソーニャに代わって怒り叫んでいる様でもあった。

「ふざけやがって! 奴らはアスリートを何だと思っているんだ。彼女達が日々努力を積み上げていたのは、そんなわけの分からない奴らにナブられる為なんかじゃないぞ! クソっ垂れが、私の手で絶対に奴らを叩き潰してやる!」

 眉間に深いシワを刻み込みながら、アニェージは苦々しい怒りと敵意を表に出した。そしてその場にいる誰もが同じ気持ちなのは歴然としている。もちろんジュールとて、今直ぐにでもアカデメイアに乗り込み奴らを根絶やしにしたいと思った。しかし彼はそれでもどこか、自分の気持ちに折り合いがついていなかった。表情を一片も変える事無く話す少女の姿に、ジュールは訝しさを覚えて仕方ないのだ。体は込み上げた怒りで熱く(たぎ)っているのに、でも胸の奥では冷めた感覚に支配されている。ジュールはそんな矛盾する自分の意識に少し戸惑っていた。それでも彼はソーニャの話で改めて浮き彫りになった事実をヘルムホルツに確認した。

「お前の推察通り、庭園でヤツ同士が戦っていたのは本当だったな。それに城の庭園で見つかった、あの切断された女性の腕の持ち主も判明した。そしてポンプ室から延びる地下道でヤツと接触した事も、話を聞いた今なら全て(つな)がっていたんだと納得出来る。やっぱりあの地下道は、アカデメイアの拠点に通じるものだったんだな」

「確かにそうだな。状況証拠から推察したに過ぎなかったけど、それでも庭園でヤツが争っていたのが本当だったんだと思うと、我ながらゾッとするよ。彼女の話は俄かに信じ難い話でもあるけど、でも否定も出来ない。いや、むしろ彼女の話を真実と捕えなければ、この先の判断を見失う事にもなり兼ねない。そういった意味でも彼女の身柄を無事に保護できたのは、俺達にとって幸運だったと言えるだろう」

 正直に自分の見解を告げるヘルツホルムはソーニャに視線を向けている。彼もまた少女の過酷な体験を察し、胸に迫る遣り切れなさを感じているのだろう。ヘルムホルツの表情からも、少女を想う悲痛さが滲み出ている。そしてもう一つ、彼は忸怩(じくじ)たる口惜しさをジュールに告げた。

「ソーニャが話した通り、城と組織のアジトは繋がっている。それは紛れのない事実だった。でも突然の地盤沈下で城の地下は埋まっちまった。なら当然組織の拠点に通じるあの地下道もツブれちまったはずだ。せっかく奴らの手掛かりを掴んだっていうのに、これじゃ先に進めないぞ」

 悔しそうにヘルムホルツは顔をしかめる。そしてそれに釣られる様にしてジュールも表情を曇らせた。掴めそうで届かない裏組織の存在に、彼らは少し気が萎える思いがしたのだ。するとそんな二人の重い感情を気に掛けたのか、徐にリュザックが口を開き意見を述べた。

「裏組織に通じる道が途絶えたかどうか、それはまだ決まっとらんがよ。娘っ子の話じゃ、組織の男は何処からともなく庭園に姿を現したと言っとったきね。なら地下道以外にも道はあるかも知れんし、そもそも奴らのアジトは城から離れた場所にあるんだろ? 娘っ子はかなり長い距離、地下道を歩いたって言っとったが。ならアジト自体が消滅したとは到底思えんし、それに昨日の観測所の事もあるきのう。まだまだアカデメイアの痕跡は至る所にあるっちゅう事ぜよ」

 リュザックの前向きな意見にジュールとヘルムホルツのみならず、アニェージまでもが唸った。見た目からは想像し得ない彼の冷静で的確な分析に皆は舌を巻いたのだ。ジュールはそんな先輩隊士に尊敬の視線を向けながら、改めてリュザックの事を凄いと感じた。

 頼りになるとは思っていたが、これほどまでに頭が切れる人だとは失礼ながら想像していなかった。日頃は不真面目な態度ばかりが目につき、御世辞にも王国最強部隊の隊士だとは思えない。それでもリュザックは隊長のドルトンに次ぐ実力者であると、トランザムの皆は口を揃えて言い、それを否定する者は皆無だった。その本当の意味をジュールが理解するのは更にまだ先の事であるが、この時はリュザックの卓越した洞察力の片鱗を、僅かではあるが垣間見ることが出来ていた。そしてジュールはそんなリュザックに触発されるよう、ふと脳裏に過ぎった疑問を口にした。


「ソーニャの話にはいくつかの疑点がある。その一つなんだけど、俺達も実際に戦った豹顔のヤツ。あいつは人の姿とヤツの姿を自由に変化させられるらしい。でも俺が聞いたのは、ヤツは一旦化け物の姿になったら死ぬまで元には戻れないって話しだった。でもそれだからこそ、ヤツは驚異的な力を発揮できるのだとも聞いた。自分の命を尋常でないスピードで削り取りながら、それと引き換えに神に匹敵する力を手にする。それがヤツの力の由来だと俺は聞かされたんだ。なのに豹顔のヤツはそれを無視して人知を超えた力を手にしている。現実に起きている事だから否定は出来ないんだろうけど、でも信じられないよ。お前はどう思う、ヘルムホルツ?」

「あぁ、俺もお前の考えに同意するよ。ヤツについての知識は俺もお前が言ったレベルの事までしか知らない。でもその強さの秘密はまさに、命を凝縮させてそれを一気に爆発させる事によって引き起こしてるんだ。でも豹顔のヤツの様に、必要な時にだけヤツの姿になれるとしたなら、それは末恐ろしい事態に他ならない。自ら身を滅ぼすリスクから解き放たれたヤツなんて、とてもじゃないけど勝てる気がしないよ」

 ヘルムホルツの言葉にジュールはゾッとしながら思い出す。国王の姿と獣神の姿を自由に変化させられる黒き獅子の存在を。ならば豹顔のヤツも黒き獅子と同様に、神話に語りつがれるような特別な存在だとでもいうのか。ジュールはただならぬ不安を抱く。するとそんな彼に対してヘルムホルツが不意に問い掛けた。

「それにしてもお前、意外とヤツに詳しいんだな」

 ヘルムホルツの質問にジュールは少し気不味(きまず)そうに頭を掻いた。彼は改めてそう思い悩む。羅城門でハイゼンベルクから聞いたヤツ誕生の秘話を話して良いものなのかと。ただそんな彼の態度に訝しさを覚えたのか、アニェージが横から口を挟んで来た。

「チッ、お前達はどうしてそんなにヤツについて詳しいんだよ? 総司令から調査を命じられているヘルムホルツはまだしも、ジュールまでヤツについて詳細を認識しているっていうのは、どうもにも()せないね」

「認識って言い切れるほど、俺はヤツについて何も理解してないよ。ただ俺は今まで三体のヤツと戦っている。単にそれが経験となって、その場(しの)ぎだけどヤツにどうにか対処しているだけさ。あまり深い意味はないよ」

「戦闘においてはそうなんだろう。でも地下道であの猪顔のヤツに手を差し伸べた、あの時のお前の行動の理由はなんだよ? あの行為はとても戦闘経験で学んだ行為だとは説明がつかないぞ」

「あ、あれは、その、なんだ。あれは自分でも正直よく分からない。ただ何となく、あいつは敵じゃないって、そう感じたんだ」

「バカかお前は! 彼女の話を聞いた今だからこそ、あの猪顔のヤツが拉致されたアスリートの変わり果てた姿で、危険な存在じゃないって分かる。でもあの時は何も分からなかったんだ。正気の沙汰じゃないぞ、お前!」

「別にそこまで強く言う必要はないじゃないか! みんなこうして無事でいられたんだ、今はそれで良いじゃないか。それより俺は、あんたの方こそ不思議だぜ。シュレーディンガーの部下だってんなら、ヤツについては俺らよりもむしろあんたの方が詳しいはずだろ。俺の聞いた話じゃ、シュレーディンガーはグラム博士と一緒にヤツの体を隅々まで調査してるはずだからな」

「な、何だと!」

 ジュールの述べた口ぶりに、アニェージは唖然としながら閉口している。その驚き方からして、シュレーディンガーがヤツについて調査を実施していた事実を彼女は知らなかった様だ。押し黙るも(ひど)く憤慨するアニェージの心情が周囲に伝わる。そんな彼女の姿にジュールは思った。どうして腹心であるアニェージにシュレーディンガーは何も告げなかったのかと。

 敵が秘密結社であり、かつヤツであるのは初めから分かりきっている。ならば当然自身の知り得るヤツの情報を、アニェージに伝えるのは(しか)るべき取り計らいのはずだ。ただでさえヤツという謎の多き存在を相手にしなければならないのである。たとえ僅かではあっても情報は欲しいし、正確な情報ならば尚更だ。浅はかなヤツへの対応は、即刻命を落とす事に繋がってしまうのだから。ならばシュレーディンガーは故意にヤツについての知識をアニェージに伝えなかったとでもいうのか。だが皮肉な事に、彼女の歯がゆくも憤懣(ふんまん)やるかたない姿を見れば、それが事実なのだろうと(とら)える事が出来る。恐らく一番信じられないでいるのが彼女なのだろうから。ただそんなアニェージの肩にリュザックがそっと手を置く。

「まぁ、色々と思う事はあろうきね。でも今は娘っ子の話の方が重要だがよ」

 リュザックは話題を変えようと、ソーニャの近くへと歩み出した。意外な形で露見した上司の薄情な対応に、信頼を揺らがせるアニェージへの気配りなのでだろう。ただ彼女の波立つ胸の内はそう簡単には収束しない。アニェージは遠く窓の外に視線を向けて黙り込んでしまった。

「やれやれ」

 リュザックはそう溜息を漏らしながらジュールと視線を交わす。とりあえずアニェージは放っておいて、自分達はやるべき事をやろう。そう言葉なく告げるリュザックの意志にジュールは黙って頷いた。

 さすがは先輩隊士だ。優先順位をよく理解している。それにリュザックは羅城門でハイゼンベルクの話を聞いていた。ならば自分と同等の情報は把握しているはず。そんな彼ならば、少女の話に対して自分なりに思う節があったはずだ。そう心の中で思うジュールの目の前で、小さく屈んだリュザックが無表情のソーニャへ優しく尋ねた。

「ラウラって子から託された【写真】って、今持っているんかえ? もし持っとるんなら、ちょこっと俺達に見せてはくれんがか?」


 水に浸かってしまった影響もあり、ソーニャが差し出した一枚の写真はふやけていた。それでもそこに写し出された描写はしっかりと確認出来る。肌身離さず大切に身に付けていたのだろう。道なき道を組織から逃亡していたソーニャにとって、たった一枚の写真であってもそれを保持しつづけるのは容易ではなかったはずだ。リュザックが手に広げた写真を横から覗き込みながらシュールはそう思う。ただ彼はそこに描写された風景に首を傾げた。

 写真には何処かの山道が写し出されていた。緑を宿した木々の生い茂る森を真っ二つに分断するように、一直線の道が中央に伸びている。しかし写真にはこれといって不審な部分は見受けられない。至って普通の山道の写真である。いやむしろ普通過ぎて、逆に何処の山に通じる道なのか調べるのは困難そうだ。一通り写真を注視したリュザックは、それをジュールに手渡すとソーニャの前に向き直った。

「お嬢ちゃんは託されただけで、この写真にどんな意味があるんかは知らんのだがね?」

「――はい。ラウラは【誘道(いざなみ)】に通じる場所だって言ってたけど、その意味も私には分かりません。でも彼女は熱心なルーゼニア教の信者でした。なのできっとこの写真は、ルーゼニア教に関係のある【何か】を写しているんだと思います」

「フン、確かにそう考えるのが妥当だきね。それも秘密結社に拉致された身でありながら、それを教団の幹部へ渡せと指示するほどだが。ルーゼニア教にとって、重要な何かが示されているっちゅうがかは確かな様だきね。ところでこん中にルーゼニア教の信者はおらんでか?」

 リュザックの問い掛けにジュールは首を横に振る。ヘルムホルツも手のひらを上に向けているし、聞こえているはずのアニェージも外を向いたままだ。溜息まじりにリュザックは心得た。

「お前らなぁ。王国唯一の信仰宗教に誰も入っていないっちゅうのは、一体どういう了見なんじゃ? まったく、揃いもそろって役にたたんきね」

「そういうあんただって信者じゃないんだろ。俺らのせいにするような口ぶりは止してくれよ」

 ヘルムホルツがジュールから渡された写真に目を向けながら苦言を吐く。ただ彼もまた、その写真の意味不明さに首を捻る思いだった。ルーゼニア教の教えこそは漠然と理解している。しかしその言い伝え等については全くの無知なのだ。もしかしたら信者にとってはその【誘道(いざなみ)】というキーワードは常識的なものなのかも知れない。そう悔やむヘルムホルツだったが、それでも彼は冷静に写真に写る風景を注意深く考察した。

「真っ直ぐに山を通る上り坂か。気になるとすれば、真っ直ぐ過ぎるところかな。普通山道に通る道っていうのは、くねくねと山を縫う様に通っているモンだからね。でもこの写真の道はかなりの長い距離、真っ直ぐに山を登っている。強引に切り開いて作られた道ってわけじゃなさそうだけど、少し気になるな。それにしてもこの道はそこそこ勾配もありそうだし、こいつを登るのは骨が折れそうだ」

 ヘルムホルツは苦笑いを浮かべながらジュールへと写真を返す。頼りのリュザックやヘルムホルツが分からないんじゃ、俺が見てった仕方ないだろ。そう思いつつも彼は受け取った写真を眺めた。ただジュールはその描写された風景に、どことなく引っ掛かるものを覚える。この感じ、俺は以前にこの場所を訪れた事があるんじゃないか……。ジュールは浮かない表情を醸し出す。そんな彼の微かな戸惑いに気が付いたのか。リュザックがジュールに語り掛けた。

「なんぞしたか、ジュール? その場所に何か思い当たる節でもあるがきね?」

「いや、何でもないです。どこにでもありそうな山道ですからね。たぶん記憶の片隅にある似た場所の面影と重なっただけですよ」

 そう言ってジュールはリュザックへと写真を手渡した。がっかりする様にリュザックは肩を落とす。それでも写真を手にした彼は、少女に向き直り確認した。

「この写真が(いま)だにここにあるっちゅう事は、教団の幹部には会えなかったんだがね?」

「はい。ルーゼニア教の本部のある金鳳花五重塔きんぽうげごじゅうのとうには行ったんですけど、どういう訳かあそこは倒壊寸前な状況で、教団幹部の方達の姿は見えませんでした。それでも近くにいた教団の関係者の人に、光世院鳴鳳堂こうせいいんめいほうどうがルーゼニア教の本部になってるって聞いたので、そこに向かったんです。でもその途中で組織の追手に見つかってしまって……。その後は必死に逃げ回っていました」

「そうか! 光世院鳴鳳堂の近くで君と接触したのはそういう理由だったからなのか!」

 目を丸くしたジュールが声を上げる。突然上げられた声にソーニャは表情は変えないまでも、どこか驚いている様に見受けられた。そんな彼女に対しジュールは少し申し訳なさそうにしながらも、彼女と一度遭遇していた事実を告げた。

「ゴメンゴメン、つい大きな声を出しちまった。実は俺と君は一度会っているんだよ。君は覚えてないだろうけどね、光世院鳴鳳堂の前の道でぶつかっていたんだよ。君が俺の彼女にメモリーカードを渡していたから、直ぐに君だって分かったんだ。でもあの時は君を見失ってしまった」

「お兄さんの彼女さんて?」

「ああ、俺の彼女はオフィス街の花屋で働いているんだ。君はそこでメモリーカードをアイザック総司令に渡してくれって頼んだんだろ」

「じゃぁ、お兄さんがあの女性(ひと)の――。ならメモリーカードはどうなったんですか!」

 無表情ながらもソーニャの必死さが伝わって来る。あまりにも偶然な巡り合せに、彼女も胸中では驚いているのだ。ただそんなソーニャに対してジュールはバツが悪そうに口ごもるしかなかった。

「ごめん。メモリーカードは総司令の息子の手に渡っているんだ」

「でも息子さんが持っているのなら、総司令には渡るんですよね」

「いや、それが……。ちょっと複雑な事情があってね。恐らく総司令の手にメモリーカードは渡ってないはずだ」

「そ、そんな――」

 気落ちするソーニャの脱力感がジュールに伝わる。やり場のない悲壮感に胸が詰まりそうだ。でもここにいる誰にも責任があるとは言えない。しかしジュールはその罪悪感を一人背負う様に気を咎めた。誰がどうしたって、上手くいく結果が得られたとは到底思えない。それほどまでに事態は残酷で無慈悲なものなのだ。それでも彼は奥歯を喰いしばって悔いるしかなかった。

 黒き獅子(ふん)する国王が直接指揮を下すアカデメイア。その秘密結社が名立たるアスリートを無理やり拉致してまで研究している事案である。自分の身に宿る【未知の力】も、恐らくはそれらに関係しているものなのだろう。胸の内でそう考えるジュールは、やり場のない感情に()じるしかなかった。

 重苦しい空気が周囲を包む。――とその時、携帯端末の着信ブザーが鳴った。


 端末はヘルムホルツのものだった。彼は着信の相手を確認すると、反射的にその場を外す。自分達に知られてはいけない相手なのだろうか。そう思いながらジュールはヘルムホルツの背中を見送っている。するとそんな彼にアニェージが近寄り声を掛けた。

「私にも写真を見せてよ」

 ボスに対するわだかまりは未だに(くす)ぶっているはず。それでも彼女なりに現実を把握しようと努めているのだろう。多少なりとも気を揉む素振りを見せるアニェージではあったが、リュザックから手渡された写真を丁寧に見つめた。ただ残念な事に、彼女にとってもそこに写る山道には見覚えがないらしい。やはり写真の意味する真相を知るには、ルーゼニア教を調べるしかないのか。ジュールは溜息を吐きながら肩の力を抜いた。そんな彼に対して写真を手にしたままのアニェージが小さく呟く。

「アカデメイアは何の目的でソーニャ達を拉致したんだろう? それだけでも分かれば、奴らの出方を少しは予測できるのにな」

 どことなく寂しそうにアニェージは告げた。組織の行動目的が不明確なままでは、こちらの動き用がないのも事実である。彼女はその事に悔やむ思いなのだろう。そしてそんな彼女の思慮にリュザックが同調する。

「アニェージちゃんの言う通りだが。いやむしろそこが本質なのかも知れんきよ」

「奴らの目的なら、ノーベルがソーニャに告げたじゃないか。確か、アスリートの遺伝子抽出による体力増強だったっけ」

 ジュールはソーニャの話を思い出しながらリュザック達に反論する。しかしアニェージは彼を諭すように返した。

「あのノーベルって奴こそが、そもそも信用出来ない。観測所で初めてあいつに会い、話をした時から私はどこか不審なものを感じていたくらいだしね。それに昨夜のあいつの豹変ぶりは異常過ぎる。お前もその目で見ていたから分かるでしょ、ジュール」

「そ、そりゃ確かにそうだけどさ」

「あ、あの……」

 ジュール達の会話を(さえぎ)る様に、ソーニャがか細い声を発した。その声はどことなく不安感に怯えているようにも感じられる。しかし変化の無い表情ゆえに掴みきれない。ただ彼女はジュール達に対して信じたくない自らの記憶を語った。自分一人の胸の中に仕舞っておく事など、今の少女にとっては不可能だったのだ。それほどまでにソーニャはあの施設で、不快で気味の悪い光景を見ていたのだった。

「実は私、あの施設でアスリート以外に拉致されたと思える人を見たの。それも結構な人数だった。どうしてあんな所にあんな子達が――」

「どういう事? 詳しく教えて」

 アニェージがソーニャへ詰め寄る。しかし少女は首を横に振って答えた。

「一度きり、それも一瞬だったからよく分からなかったけど、あれは十歳くらいの子供達の姿だった。少なくとも10人はいたと思う。みんな虚ろな目をしていて、それがすごく印象的で怖く感じたの。だってあの目は自我を失っているアスリート達の目と一緒だったから」

 ソーニャは自らの肩を抱きかかえている。当時の状況を思い出し言い表せぬ嫌悪感に駆られているのだろうか。微かだがその体は震えていた。そんな居た堪れない姿の少女を見つめたジュールは新たな疑問に頭を悩ませる。

「一体どういう事なんだ? アカデメイアはアスリート以外にも幼い子供まで誘拐したっていうのかよ?」

「娘っ子の見間違えでないんなら、事実なんだきね。でもおかしいでよ。そんなに大勢の子供がいなくなったんなら、ニュースで報道されてても良いきね。でも俺はそんな事件、聞いた事も無いき。どういう事ぜよ?」

 リュザックに激しく同意しながらアニェージも呟いた。

「仮にアダムズ各所で個別に拉致された子供達だとしても、どこかしらで報道はされるはずだしね。確かに変だ。増々奴らの目的が分からなくなってきたよ」

 ジュール達は訝しく表情を曇らせている。まったく先行きの定まらない状況に息が詰まりそうだ。すると痺れを切らせたのか、アニェージが鋭く声を尖らせながら言った。

「今の時点でアカデメイアの手掛かりがはっきりしているのは天体観測所だけね。やっぱりあそこに行くしかないよ!」

「ちょっと待てよ、まさか今から乗り込む気じゃないよな! 観測所が怪しいのは誰の目から見ても明らかだけど、ソーニャの事はどうするんだ? いくらこのホテルが安心だからって、彼女を一人ここに置いてはいけないだろ。どう見たってソーニャの体は正常だなんて言えないんだからさ」

「ジュールの言う通りだがよ。秘密結社が絡んでいる以上、病院も警察も、もちろん王立協会も信用できないきね。そうなれば必然的に俺達が娘っ子の身柄を保護し続けるしかないぜよ」

「そんな悠長な事をしていたら、奴らの尻尾を掴み損なう。お前達が行かないって言うなら、私一人で行くだけよ」

「落ち着けアニェージ、解決方法なら他にもある」

 奥の部屋より戻ったヘルムホルツがアニェージを鎮めるよう声を掛けた。そして彼は続け様にその理由を告げた。


「今しがた端末に連絡があったのは、アイザック総司令からだ。今からここにいる全員で総司令の自宅に移動するぞ。もちろんソーニャも一緒にな」

 ヘルムホルツは皆を和ませる様に少し微笑んで見せた。首都ルヴェリエにおいて、唯一絶対に信頼がおけるのは総司令しかいない。その総司令から直接指示が出されたのだ。彼の自宅へ赴くのはごく自然な流れであり、それ以外に安全な行動は思い付かない。しかしジュールはどこか気になる。あまりにタイミングの良過ぎる総司令からの連絡に、彼は行き先を危ぶむ疑念を感じずにはいられなかったのだ。そしてジュールは溜まらずヘルムホルツに一言尋ねた。

「アイザック総司令からは何の用だったんだ?」

「あぁ。俺達を呼んだ一番の理由は、トーマス王子のグリーヴス出張に同行する件についてだよ。だから本当の意味で用があるのはお前なんだろうな、ジュール」

「そうか。なら総司令はソーニャを保護した事で連絡をしてきたんじゃないんだな」

「もちろんさ。総司令に彼女を保護したと伝えたのは今さっきだよ。予想外の報告に総司令は驚いていたぞ」

 ヘルムホルツの返答にジュールは少しだけ胸を撫で下ろす。そして彼は過剰に疑心暗鬼になっていた自分を責めながら苦笑いを浮かべた。ソーニャの悲痛な話を聞いた影響なのかも知れない。それでも無二の存在である総司令に、僅かでも疑いを抱いてしまったと恥じたのだ。するとそんな彼の不面目な姿を気遣うように、アニェージが軽く肩を叩きながら告げた。

「気にする必要はないよ。意味不明な出来事が連発して起きてるんだしね。こんな状況なら、誰にだって疑いは掛けたくなるもんさ」

 少し口元を緩めながらアニェージはジュールを見つめた。ボスであるシュレーディンガーに対して疑念を抱くゆえに、彼女にはジュールの気持ちがよく理解できたのだろう。それに彼女の言葉には自分自身に対して強く言い聞かせている節がある。アニェージもまた、不安に苛まれているのだ。そしてそれを必死で堪えようとしている。そんな二人に向かい、ヘルムホルツが総司令の下へ向かうための趣旨を説明した。

「ジュールやリュザックさんが言っていた通り、ソーニャの身柄は俺達が保護しなくてはまずいだろう。それに彼女は短期間とはいえ、アカデメイアによる人体実験を受けているんだ。その影響が今後どう表面化するかも分からない。そこで俺は提案した。ソーニャをグリーヴスのシュレーディンガー氏に診せようとね。その為にはもちろんアイザック総司令の助けが必要だ。だからそれを今からお願いしに行こうと思う」

「彼女をシュレーディンガーに診せるのか?」

 ジュールが訝しそうに聞き返す。ただそれに対してヘルムホルツは毅然と答えた。

「あぁ、そうだ。ソーニャを不安にさせるのは極力避けたいけど、でもこの件には【ヤツ】が絡んでいる。当たってほしくはないけど、俺の推測だと彼女の受けたアカデメイアによる訓練は、ヤツの秘密に関係があると考えざるを得ないんだ。だったらヤツについて最も詳しいシュレーディンガー氏に診せるのが妥当だろう。急激な体力の向上や自我の欠如。ましてラウラっていうソーニャの友達は、現実にヤツ本体になっちまったんだしね」

 ヘルムホルツの言葉にソーニャは小さな拳を強く握りしめた。それもそのはず。彼の口にした話の内容は、全て少女の不安を的確に言い表すものだったからだ。さらに言えば、自分自身もあの醜い化け物の姿になってしまうのではないかという、必死に押し殺していた最悪の状況をも想像してしまうほどなのである。

 周囲に得も言われぬ重圧が圧し掛かる。ただそんな不安感を無理やり払拭するよう、ヘルムホルツが総司令に(すが)る事を強く皆に言い聞かせた。

「残念だけど俺達は無力だ。知識も無ければ敵に対抗する為の力も無い。それでも足掻かなければ先には進めないんだ。総司令だって、どこまで事の真相を知っているのか分からない。もしかしたら直接戦った事のある俺達の方が、奴らについて知っているのかも知しれないしな。それでもソーニャの話に出て来たメモリーカードの事や、その写真について尋ねる必要がある。豹顔のヤツが言っていた、組織の【新工場】ってやつも気になるしね。そしてその先にある獣神の心意や裏組織の行動理由もはっきりさせなければならない。それぞれ個別に思うところはあるだろうけど、だからこそ今はブレずに皆が一丸となって進まなければいけないんだと俺は思う。――どうだ、反対意見のある奴はいるか?」

 ヘルムホルツは一人一人の表情を確認する。ただ彼の意見に異を唱える者などいるはずがなかった。どう転んだとしても、彼の口にした意見以上の提案を出せるはずがないのだから。それでもジュールは悔しさを滲ませている。言い方を変えれば、ヘルムホルツの言っている事は総司令に頼り切る丸投げの対応なのだ。それは無責任な節操のない身の振り方とも言える。決してそれが悪いわけではない。いやそれしか今は方法がないのだ。でもだからこそ、ジュールは悔しくて仕方なかった。自分にもっと力があれば、もっと頭が良ければ、ソーニャの苦しみを和らげてあげられるのにと。そんな彼は少女の前にゆっくりと屈み込む。そして変わらない彼女の表情を見つめながら穏やかに告げた。

「どこか具合の悪いところはあるかい?」

 ジュールの問い掛けに対してソーニャは無言のまま首を横に振る。

「そうか、良かった。でももし体のどこかに変調を来したなら直ぐに教えてくれ。それともう一つ、君に聞いておきたい事があるんだ」

 ソーニャは少し首を傾けてジュールの言葉を待ち受けている。そんな彼女に対して彼は真剣な眼差しで言った。

「君は俺達を信頼してくれるのか? 君は俺達の事を何も知らない。組織に拉致され(ひど)い目にもあったのに、それなのに君は突然目の前に現れた正体不明の俺達を信じてくれるのか?」

 皆がソーニャの反応を見守る。ジュールの質問は誰しもが胸に引っ掛かっていた最も素朴で根源的な疑問だったのだ。ただ彼らの不安を打ち消す様に、少女は小さな声で自分の心意を皆に伝えた。

「確かに私はお兄さん達の事を何も知しりません。でも観測所でラウラはお兄さん達に私の事を託しました。どうしてラウラがそうしたのかは分かりません。でも彼女が意味もなくそんな行動を取るとは考えられないんです。だから私はお兄さん達を信頼するし、私にとって理由はそれだけで十分です」

 相変わらずの無表情で少女は淡々と語った。しかしその言葉の一つ一つには強い想いが込められているように感じられる。そしてそんな少女からジュールは逆に勇気付けられた気がした。守らねばならぬ相手に気持ちの面で救われる。そんな感じであろうか。ジュールは優しい笑みを醸し出すと、ソーニャに自分の素直な希望を伝えた。

「きっとあのラウラって子は生きてるはずだよ。なぜか俺はそう思うんだ。決して気休めなんかじゃなくね。彼女には俺達も命を救われた。君と同じように俺も彼女にちゃんと礼がしたい。だから俺達と一緒に前に進もう。そうすればきっと、ラウラにまた会えるはずだから」

 ジュールはニッコリと微笑んで見せた。するとソーニャの目から止まっていた涙がまたも流れ出す。ただその涙は先程まで流していた涙とは少し違っていた。いや、違っていたのは彼女の表情だ。泣きじゃくるソーニャのその表情は、哀しみに耐える悲痛さと、ラウラの優しさを受け止める温かさとで溢れていた。そして彼女は声を次第に上げて泣き始める。きつく縛り上げられていた心が解放されたのだろう。そんな感情を露わに泣き声を上げるソーニャの姿に、ジュール達は胸を撫で降ろした。まだ手遅れにはなっていない。絶対に救えるはずだ――と。

 ソーニャに対し直感的にそう思う気持ちは皆同じであり、その共有した想いが自然とジュール達を結束させていった。



 ルヴェリエ郊外にある閑静な住宅地にアイザック総司令の邸宅はあった。経済界の重鎮や上位の貴族が多く暮らすこの地域は、ジュールやヘルムホルツが育ったスラムとは真逆の世界と言える。それゆえジュールはどこか格式張ったこの雰囲気が肌に合わず、息苦しい窮屈な閉塞感を感じ弱っていた。

 訓練所時代からのテスラとの付き合いもあり、ジュールは総司令の屋敷に今まで数回足を運んでいる。ただ彼は毎度この場所を訪れる度に、妙な胸の(うず)きを覚え少し戸惑った。その感覚は決して不審なものとは言えない。いやむしろ優しく自分を包み込む、穏やかで柔和な感覚のそれに近いと言えよう。でもその不思議な感覚の正体は一向に掴めず、ジュールはただオロオロとするばかりだった。

 使用人に案内されるジュール達は、屋敷の長い廊下を歩みながらアイザック総司令の待つ部屋まで進む。毎度感じる奇妙な違和感にジュールは気を揉んでいたが、それとは別にもう一つ彼には気掛かりがあり複雑な心境になっていた。ジュールの危惧するもう一つの懸念。それはテスラが今現在、この屋敷にいるのかという事だ。

 先日のプルターク・モールでは、理由も分からないままテスラに噛み付いてしまった。いくらテスラの行動が怪しいからといって、(いたずら)に事を荒立てるのは控えねばならない。そもそもこの場所は彼の自宅でもあるのだから。しかしジュールはいざテスラを前にした時、自分を抑えられる自信がなかった。なぜ彼に対して自我を抑えられぬほど気持ちが荒立つのかは分からない。テスラが国王直轄のコルベットに属してしるかならのか。いや違う。そんな事は理由付けとしては根本的に的外れの考えだ。ならどうして――。自問自答しながら歩むジュールは、いつしか訝しさで苦々しい表情を浮かべていた。

 そんな煩悶(はんもん)を重ねる彼の姿に気がついたのだろう。先頭を進むヘルムホルツが何気なく使用人に対してテスラの所在を聞き尋ねた。すると使用人は事務的な口調ではあるものの、テスラの不在を簡潔に告げる。それを聞いたヘルムホルツは、少し口元を緩めながらジュールに目配せした。

(余計なお世話だな……)

 ジュールは強がるように表情を硬くしながらヘルムホルツを(にら)み返す。だが心の中ではホッと胸を撫で下ろし、気持ちが救われていた。まったくこいつは良く気が回る奴だ。少しすっきりした表情に戻ったジュールは、ヘルムホルツの配慮に感謝しながらも気持ちを引き締め直した。

 使用人に促され、ジュール達一行は扉の前で立ち止まる。そして重たそうなその扉を使用人がゆっくりと開いてゆく。そこはアイザック総司令の私室であり、大きな背もたれのある椅子に腰かけた総司令がジュール達を待ちわびていた。

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