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月読の奏  作者: 南爪縮也
第一章 第一幕 夜余威(やよい)の修羅
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#14 凍解の事実(一)

「アルベルト国王は数年前より、パーシヴァルで開発された【とある技術】を欲していた。それが一体どんな技術なのかは、軍人である我には知り得ない。それでも一つ分かっているのは、その技術はボーア将軍とグラム博士によって生み出された画期的(かっきてき)な科学理論であり、それは世界の常識を変革する可能性を秘めたものだったのだ」

 そう言ったヤツは表情を酷く(ゆが)ませる。かなりの激痛に(さいな)まれているのだろう。それでもヤツは切り落とされた右腕をグッと抑えると、約束通り自らの知りえる事実をジュールに語った。

「アルベルト国王はボーア将軍とグラム博士に対し、必要に技術の開示を要求した。しかし将軍達はその要求を拒絶し、決して技術を渡さなかった。なぜならその技術をアルベルト国王に渡せば、間違いなく軍事目的に利用され、結果として多くの人々が傷つくと確信したからだ。将軍達はその技術が有する様々な可能性や危険性を十分に把握していた。そしてアルベルト国王の性格もよく理解していた。だから二人は絶対に国王の要求を受け入れようとはしなかったのだ。かつてアルベルト国王の【弟子(でし)】だった将軍達だからこそな」

 アルベルト国王は王族でありながらも【稀代(きだい)の科学者】と呼ばれるほどの高度な頭脳を持った人物であり、その名を世界中に(とどろ)かせていた。また国王は人材の育成にも熱心であり、科学の発展に(つな)がる事なら()しみなく資金を投じていた。特に王立協会を通してエクレイデス研究所には最先端の研究施設を幾つも建設し、そこで全国各地より集めた優秀な科学者達に研究の場を与えていた。するとそこから更に能力の(ひい)でた科学者が誕生して行く。そう、国王は互いを(きそ)わせる事で、研究の成果と科学者の質の向上を図っていたのだ。

 そんな科学者達の中で特に目を見張った活躍をしたのが、現在【世界最高の天才】と呼ばれるラジアン博士と、かつて【世界最高の鬼才(きさい)】と呼ばれたグラム博士、そして【若きパーシヴァルの偉才(いさい)】と呼ばれたボーアの3人であった。

 ラジアン博士とグラム博士はアルベルト国王と年齢的には然程変わらなかったものの、国王が提唱する科学的理論に強く()かれた事から進んで彼の弟子となった。そして彼らは国王と共にその理論を応用し発展させていく。

 幾つもの難解な研究に膨大な失敗を繰り返す国王ら三人。しかしそこから生み出される新しい技術は皆素晴らしいものばかりであり、その産物は時として人々の暮らしを大きく向上させていった。

 そしてボーアはそんな3人とは年齢こそ親子ほどに離れていたが、早くよりその素質を認められた事と、その直向(ひたむ)きな努力と()ね備えた才能で、彼らに(おと)らぬ科学者としての功績を残していた。そして目指す科学分野の方向性が同じであった事から、グラム博士とボーアは自然と深い友好を深めて行った。

 彼らはお互いを同じ分野を探求する仲間とし、またライバルとして認め合ったのだろう。そしていつしか彼らはその歳の差に関係なく【真の友】と呼べる間柄(あいだがら)になっていた。

「グラム博士がアルベルト国王の弟子だったのは知っているし、ボーア将軍が博士の親友だった事ももちろん知っている。だけどあんたの言う国王の態度については信じられない。グラム博士とボーア将軍が発明した科学技術がいくら凄いからって、それを国王が軍事目的の為に要求するとは考えられないよ。だって国王にとって二人はかつての弟子なんだ。弟子が開発した技術を欲しがるなんて、国王のプライドが許すはずがない」

 ジュールは我慢出来ずに吐き出した。彼はハイゼンベルクと名乗るヤツの話が(にわ)かに信じられなかったのだ。

 確かに画期的な技術を手に入れられれば、世界を屈服させる程の驚異的な武器を開発出来るだろう。しかし現時点においてもアダムズ軍に配備されている軍事兵器は、近隣諸国に比べれば数歩時代を先走(さきばし)る性能を(ほこ)っているのだ。そう言った意味で軍事兵器の為だけに、グラム博士らが生み出した技術を欲しがるなんて考えられない。ジュールはそう思ったのだ。それにもう一つ。ボーアの反乱を(のぞ)けばここ数十年の間、大規模な戦争は一度も起きていない。だから軍事兵器を強化する目的として技術を要求するというのは、ジュールにしてみればどこか腑に落ちないのである。それに国王の普段の活動からしても、それはハイゼンベルクの話しとは掛け離れたものであった。

 アルベルト国王は自らを生涯(しょうがい)の科学者と明言し、それを実践していた。かなりの老齢でありながらも、毎日の研究を欠かさなかったのだ。そんな忙しい日常を送る国王にとって、戦争を始める余裕などあるはずもない。だからジュールはハイゼンベルクの話しに反発したのだ。

 また数年前にジュールは一度だけ、アルベルト国王に直接会った経験があった。まだ彼が軍の訓練所でトレーニングを積んでいた頃、たまたま見物に来ていた国王に声を掛けられたのだ。ジュールはその時の事をよく覚えている。あの時の国王はとても(おだ)やかであり、若い駆け出しの隊士達に対して気さくに話し掛けていた――と。そしてそんな国王の寛大(かんだい)さに彼が感動したのは言うまでもなく、またジュールのみならず若い隊士達は皆国王に好感を持っていた。だからジュールは声を上げてハイゼンベルクに詰め寄ったのだった。

「ボーア将軍はパーシヴァルの王族を皆殺しにして、その後に俺達アダムズ軍と激しく戦ったんだ。あの戦争でどれだけのアダムズ軍隊士が命を落としたのか、あんただって知ってるだろ! だから俺からしてみれば、国王よりも将軍の方がよっぽど悪魔の様な人物に思えるぞ」

 ジュールは憤りを露わに言った。ボーアの反乱に参戦した経験を持つ彼からすれば、それは当然な想いであろう。だがそんなジュールの言葉に対し、ハイゼンベルクは静かに首を横に振った。

「パーシヴァルの王族達が皆死んだというのは事実だ。しかしボーア将軍が王族を殺したというのは完全な誤解なのだ。全ての原因はこの【鏡】にあるのに、あえて将軍がその誤解を解こうとしなかったことから、間違った噂が広まってしまった」

「ど、どういう事だよ?」

 突如話の表舞台に躍り出た【鏡】にジュールは首を(かし)げる。するとそんな彼に向かい、ハイゼンベルクは強い意志の込められた言葉で告げたのだった。

天照(あまてらす)の鏡。それは神話にて、女神が暴走した燦貴神(さんきしん)をそれに封印し、誕生させた神器とされている。まぁ、それが本当かどうかは誰も知らんし、我にしてみれば興味もない。ただし、実質的に判明している事柄が二つだけある。一つはこの鏡が神話で語られている時代と、ほぼ同じ時代に作られたという事。そしてもう一つは、この鏡に【不思議な力】が宿(やど)っているという事だ」

 そう言ったハイゼンベルクは話に聞き入るジュールの目をそっと見る。ただそこで一度だけ深く深呼吸したハイゼンベルクは、覚悟を決めた様に話の続きを語り始めた。


 ボーア将軍とグラム博士が生み出した画期的な技術。それは二人が苦慮の末に導き出した新しい科学理論であり、またそれを利用して【天照の鏡】が有する不思議な力を意のままに操る技術であった。

 兵士であるハイゼンベルクには、当然ながらその技術がどういったものなのか知り得るものではない。それでもアルベルト国王が求めているものが、まさにその【鏡の力を操る技術】と【鏡】その物なのだということは理解出来ていた。

 国王の要請は日増しに激しさを増していく。喉から手が出るほどに技術を欲しがった国王は、決して諦めようとはしなかったのだ。しかし再三(さいさん)の要求にもグラム博士とボーア将軍は応じなかった。するとついに国王は恐喝とも呼べる強引な手段に打って出る。なんとアルベルト国王は、コルベットの隊長でありアダムズ軍のNo.2であるトウェイン将軍を二人のもとに(つか)わせると、どうしても要求が受け入れられない場合は、軍事的介入をも()さないと伝えさせたのだ。

 これでは前時代の独裁国家による侵略戦争となんら変わりはしない。グラム博士とボーア将軍は、そんな国王の脅迫紛いの要求にどれだけ呆れ果てた事だろう。いや、かつて尊敬した師を思い、悲しくなっていたのかも知れない。ただどれだけ国王が圧力を掛けようとも、二人の答えは断固拒否に変わりなかった。

 しかし情勢は突発的に変化するものである。戦争を恐れたパーシヴァルの王族達が、(ひそ)かに鏡の明け渡しを(くわだ)てたのだ。恐らくアルベルト国王は、頑として聞く耳を持たぬ二人への対応を諦めたのだろう。だがその代わりに外交的手段を通じて、パーシヴァルの権力者達に畏怖という圧力を加えたのだ。すると(たちま)ちパーシヴァルの王族達は震え上がる。そして彼らはグラム博士とボーア将軍に悟られぬ様、計画を実行したのだった。

 それはちょうど誕生日を迎えたリーゼ姫の祝いの(うたげ)(もよお)された夜だった。

 鏡の明け渡しを(くわだ)てた一部のパーシヴァルの王族達は、(すき)をみて鏡の持ち出しに成功する。だがそこで思いも寄らぬ事態が発生してしまった。

 古くより厳重に保管されていた鏡。そんな鏡を運び出した王族達は、それをアダムズ軍に明け渡す前に、一目よく見たいという欲求に駆られたのだ。そして鏡について何も知らない馬鹿な王族達は、不運にも偶然に、鏡に(ほどこ)されていた【封印】を解いてしまったのだった。

「はじめに言ったが、この鏡は【死の鏡】と呼ばれている。なぜそう呼ばれているのか。それはこの鏡の中に、死を(つかさど)る神の【(あお)(ひる)】が眠っていると伝えられていたからだ。そしてその伝えは(まこと)であり、封印の解かれた鏡の中から、人ほどの大きさをした巨大な【(ひる)】が無数に飛び出して来たのだ」

 当時の事を思い出したのだろう。ハイゼンベルクは僅かに体を震わせた。ただそれ以上に彼は、欲望に身を(まか)せ、不用意に鏡を持ち出した王族達に憤りを感じていた。

「出現した巨大な(ひる)は、まるで魂を吸い取るように次々と王族達の命を奪っていった。蛭に吸い付かれた者は為す術無く、死に追いやられたのだ。もちろんその中には、パーシヴァル国王や王妃殿下も含まれていた。理由も分からないまま人々は死ぬ事しか出来ず、もはや宴は惨劇以外の何ものでもなかった。そしてついに王族はリーゼ姫ただ一人を残すのみとなってしまった。我らは決死の覚悟で姫だけはお守りしようと抵抗したが、虚しくも蛭にはどんな攻撃も通用しなかった。何百発もの銃弾を撃ち込んだが、蛭にダメージを与えられなかったのだ。すると蛭はそんな何も出来ない無力な我らを嘲笑うかの様に、リーゼ姫に襲い掛かった。あの時はもう、万事休すだと息を飲む事しか出来なかったよ。でもそこで一つの奇跡が起きたのだ。命を吸い取ろうと巨大な蛭がリーゼ姫の体に触れた瞬間、姫の胸元が激しく光り輝いた。そしてその光は鏡を激しく照らし、一時的に封印を(よみがえ)らせ、蛭の姿を掻き消したのだ」

 あまりにも現実離れしたハイゼンベルクの話にジュールは(ひど)く困惑する。しかし彼はその話を否定しようとはしなかった。理由は分からないが、ジュールはハイゼンベルクの話しがまったくの嘘とは思えなかったのだ。そして彼は無言のまま、話の成り行きに耳を傾け続けた。

 リーゼ姫のみを残し、国王や王妃を含むパーシヴァルの王族達は、その全てが巨大な蛭によって命を奪われた。それも時間にして(わず)か数分の出来事である。そんなとても現実とは思えない状況に、生き残ったボーア将軍やハイゼンベルク達は激しく混乱し、また酷く動揺した。それでも救いだったのは姫の命が無事だったのと、一時的にも鏡に封印が戻ったという現実であり、その事に彼らは少しだけ安堵(あんど)の表情を浮かべていた。


 だが事態は深刻さを増すばかりであった。突如として謎の光を放ち窮地(きゅうち)を脱したリーゼ姫であったが、彼女はその後意識を失いその場に倒れ込む。するとそんな姫の右腕には、姿を消したはずの蛭の【呪い】が掛けられていたのだった。

「呪い?」

 ジュールは不安な表情を顔に出して(つぶや)く。そしてその背中は尋常でない嫌悪感で粟立っていた。

 姫の右の二の腕には【奇妙な刻印】が刻まれていた。それは【蒼き蛭】によって魂を拘束された証であり、古来よりパーシヴァルに伝わる忌まわしい烙印の形をしていた。

 その刻印が刻まれし者は、他人にその刻印を見られただけで死んでしまう。それがパーシヴァルに伝わる(いわ)く付きの由縁であった。そして目の前でその異常さをまざまざと体験したボーア将軍達は、刻印に(まつ)わる言い伝えから目を背けるなんて出来るはずもなかった。

 ただし例外として、刻印が刻まれたその場に居合わせた者だけは、刻印を見ても影響を与えない。言い伝えにはそんな救いとなる条件も付け加えられていた。

 リーゼ姫を救えるのは、この場に居合わせた自分達だけだ。ボーア将軍はそう考えたのだろう。そして将軍は箝口令(かんこうれい)()き、鏡と刻印の存在を隠し通す事に決めた。いつ何処(どこ)で誰が見ているか分からない状況の中で姫の命を守る為には、そうする以外に方法は無かったのだ。

「皮肉にもその行為によって、ボーア将軍がパーシヴァルの王族を皆殺しにした主犯であると誤解されてしまった」

 ハイゼンベルクは(くや)しさを(にじ)ませ歯を喰いしばる。彼は忸怩たる無念さに酷く憤りを感じているのだ。それでもハイゼンベルクはジュールに全てを伝える為、懸命に話し続けたのだった。

「姫の命を最優先で守るために、生き残った我らにはやらなければならない責務があった。それは死の鏡を完全な封印状態に戻す仕事であり、それこそが姫の命を救う唯一の方法でもあったのだ。姫の不思議な力で一時的に封印を甦らせたとは言え、いつまた鏡より巨大な蛭が現れるか分からない状況だったからな。そんな危険な状況から抜け出す為に、ボーア将軍はリーゼ姫を連れて聖地である【プトレマイオス遺跡】に向かう事を決断したのだ。パーシヴァルに伝わる鏡の封印方法を実行するには、プトレマイオス遺跡に行かなければならなかったから」

 ボーア将軍は信頼する兵士数百人を引き連れ出発する。そして険しい山岳地帯をひたすら登り歩き、三日後にようやくプトレマイオス遺跡に到着した。

 声が出せぬほど疲れ切っていたボーア軍の兵士達。完全武装した状態で山を登り切ったのだ。その疲労度は相当なものであっただろう。だが残念な事に、彼らはそこで休む時間を与えられなかった。

 なんと遺跡には、全身が銀色に輝く【巨大な(わし)】が住み着いていたのだ。そして兵士達はその美しい姿に目を奪われた。しかしそれは一瞬の出来事だった。なぜなら彼らは銀の鷲の姿に言葉で表すことの出来ぬ恐怖を感じたからだ。

 震え出した奥歯が噛み合わない。そんな兵士が大半だっただろう。その中には失禁してしまう者もいたほどなのだ。でもどうして銀の鷲にそれほどまでの畏怖を感じたのか。それは銀の鷲が天照(あまてらす)の鏡の一つである【火の鏡】に宿る獣神であったからだ。

 死の鏡に宿る【蒼き蛭】と同様に、銀の鷲は神話に(うた)われる存在だったのだ。そして不幸にも兵士達は蒼き蛭の恐ろしさを肌身で体験していただけに、その心は絶望感で塗りつぶされたのだった。

 ただその中で一人、ボーア将軍だけは冷静だった。そして将軍はその鷲に(おく)する事なく、プトレマイオス遺跡に来た経緯を語った。すると周囲の予想に反し、銀の鷲はとても(おだ)やかな反応を示す。銀の鷲はその姿からは想像出来ないほどの柔和な言葉で、将軍に向かい言ったのだった。


 ハイゼンベルクらパーシヴァルの兵士達は、少し離れた場所から将軍を心配そうに見つめていた。銀の鷲からはまったくと言っていいほど敵意の様なものは感じない。それでもやはり彼らは現実とは思えない獣神の姿に(おのの)き、萎縮していたのだ。だがそんな彼らの心配をよそに、将軍は微笑みながら銀の鷲と話しをしていた。そして一通りの話しを終えたのだろう。将軍は待機するハイゼンベルク達の所へ戻って来た。

 将軍は言った。銀の鷲の名は【ラヴォアジエ】と言うのだと。そして驚くべき事に、将軍は不確かであった死の鏡の封印方法をラヴォアジエから伝授されたと告げたのだ。

「正直なところ、あの時は本当に驚いたよ。銀の鷲と対等に話しをする将軍の姿はもちろん、予想外に暖かな対応をしてくれたラヴォアジエの姿勢にね。それに曖昧だった鏡の封印方法までラヴォアジエは教えてくれた。それこそがまさに遺跡に来た目的だったから、我らはホッと安堵したんだよ」

 そう告げたハイゼンベルクの眼差しは穏やかなものであった。きっとその時の安堵感を思い出したのだろう。ただそんな彼に向かい、ジュールは強く詰め寄った。

「それで、その銀の鷲は、ラヴォアジエはそれからどうしたんだ?」

 ジュールは何故か焦燥感に駆られていた。銀の鷲に蒼き蛭。そんな神話の中にしか出現しないはずの獣神という存在に、彼は極度の不安と緊張を感じていたのだ。ただジュールの問い掛けに対してハイゼンベルクは静かに首を横に振る。そして彼は少し寂しそうな面持ちを受かべて言ったのだった。

「ラヴォアジエと名乗る銀の鷲は、我らとアダムズ軍が交戦を開始する直前に姿を消した。そして当然だが、ラヴォアジエが何処に行ったのかは分からない。我らは一度も言葉を交わさなかったし、ボーア将軍ですら接触したのは数回だったはずだからな。結局我らはラヴォアジエの事を何も知らないんだよ」

「何だよそれ。ラヴォアジエはすぐ近くに居たんだろ。軍人なら勇気を出して、少しくらい話ししてみろよ」

「ラヴォアジエは何も告げずに突然姿を消したのだ。それにいくらラヴォアジエが話の通じる相手だとしても、やはりあの獣神の姿には抵抗を覚えてしまってな。そう簡単に話し掛けられる相手ではなかったのだ。ただな、今でも思い出すよ。ラヴォアジエのあの燃え上がるような真っ赤な瞳が、やけに哀しく感じられたのを――。どうしてラヴォアジエはあんな目をしていたのか。とても印象深かったからな。気になったのはよく覚えてるよ。でも我らには時間が無かった。アダムズ軍との激しい戦闘が始まってしまったから。そして我らはギリギリの戦争を繰り広げる中で、鏡を封印するためのタイミングを必死に待ったのだ」

 鏡の封印には二つの組み合わさった条件が必要であり、それは【満月の光】と【姫の誕生日】であった。

 この二つの条件を重ね合わせるのは至難の業である。ひと月に一度程度の頻度で迎えられる満月はまだしも、姫の誕生日は年に一度しかない。この事から戦争が長期戦になるのは明白であり、ハイゼンベルクらパーシヴァル兵は常に不安と迷いを抱え込んでいた。

 ただでさえアダムズ軍との戦いは熾烈を極めており、いつ命を落としてもおかしくない状態が日々続いている。そんな中で姫の誕生日を待たなければならないのだ。それがどれだけ耐え難い状態なのか。想像すら困難であろう。それに姫の誕生日に運良く満月が重なるとも限らない。いや、仮に重なったとしても、天気が悪く月の光が雲で遮られてしまったら意味が無いのだ。

 ボーア将軍は兵士達の士気をどうにか保とうと必死だった。気持ちが萎えてしまえば、あっと言う間にこの戦争は終わる。そうなれば姫の命に危険が及ぶし、そもそも姫をアダムズ軍に渡すわけにはいかない。ボーア将軍はそんな使命感で戦いの指揮を取っていたのだ。

 だが兵士達の士気が低下する以前に、リーゼ姫が酷く衰弱(すいじゃく)していった。訳も分からないまま家族を失い、そして現状では自分を守るために兵士達がその命を散らして行く。その事に彼女は心を痛めていたのだろう。それに右腕の刻印は、何もせずとも姫の命を徐々に削り取っていたのだ。

 そんな目に見えて弱っていくリーゼ姫の姿を将軍達は歯がゆい思いで見続ける。そして彼らはアダムズ軍と全力で交戦しながらも、その一方で姫に対して何もする事が出来ない自分達を()めていた。

 どうして兵士達は自分の命の心配よりも姫の命に気を遣ったのか。それは姫が疲れ果てた兵士達に優しく微笑み、温かい声を掛けていたからだ。

 先にも述べた様に、リーゼ姫は愛する家族を一瞬で失い、更には自分の命もいつ尽きるか分からないという、誰よりも張り裂けそうな不安に日々(さいな)まれている。だがしかし、彼女は泣き言一つ口にする事無く、むしろ彼らを勇気づけたのだ。もう少しの辛抱だからと、同じ目線になって励ましてくれたのだ。そしてそんなリーゼ姫の事を兵士達は心から守りたいと強く決心したのだった。そして戦争を開始してから四度目の姫の誕生日の夜、その時は来た。


 雲一つない満月の輝く夜、誕生日を迎えた姫は短刀の刀身を素手(すで)でぐっと(にぎ)り締めていた。痛みが全身に波及しながらも、姫はそれを懸命に堪えて短刀を握り続ける。そして姫の手から流れ出た真っ赤な鮮血は、満月の明かりに照らされる死の鏡に(したた)り落ちていた。

「ウオォォォ」

 鏡全体が姫の血で赤く染め上げられた頃、鏡の中より苦しみに(もだ)える獣の声が発せられた。まるでキツく首を絞められているかの様な、そんな苦痛に(あえ)ぐ声だ。そしてもがき苦しむその悲鳴は1時間ほど続く。だが次第に声は小さくなっていき、ついにまったく聞こえなくなった。

 完全な封印が成功した。死を司る神である蒼き蛭を再び鏡に閉じ込めたのだと、誰もがそう確信した。――が、その時だった。

 月の光が流れ雲によって(わず)かに(さえぎ)られる。するとその瞬間、悪夢は再度繰り返された。なんと鏡が突如として激しく輝き出し、その中から蒼き蛭が飛び出して来たのだ。

 ハイゼンベルクは目をつぶり、グッと奥歯を噛みしめる。その時の絶望感が急速に甦ったのだろう。それでも彼は震え出した体に構うことなく、話しの続きを語ったのだった。

「あっという間の出来事だった。再び姿を現した巨大な蛭は、その場にいたボーア将軍を含む多くの幹部兵士達の命を奪ったのだ。あまりにも理不尽な状況に我は激しく動揺し、恐怖で体が(すく)んだ。それでも我は蛭の動きを止めようと必死で銃の引き金を引いたのだ。だが放たれた銃弾は蛭の体をすり抜けるばかりで、まったく意味をなさなかった。そしてついに蒼き蛭は縮み上がって動けない姫にその矛先(ほこさき)を向けた。我はもうダメだと思った。手も足も出ない状況に諦めるしかなかったのだ。ところがだ。姫まであと一歩という距離で、蛭は動きを止めた。蒼き蛭はその体を石に変え動かなくなったのだ。まさに間一髪とはこんな状態を言うのだろう。死の鏡の力は姫の血によって完全に封印されていた。そして流れ雲が消え去り、再び月の光に照らされた現場は、耳が痛いほどの静寂に包まれていたんだ――」


 しばしの沈黙が流れた。薄らとした涙を溢すハイゼンベルクは、あの日の惨劇を思い出し震えていたのだ。そしてそんな彼の姿を見つめたジュールの心には、その感情が痛いほどに()み渡っていた。

 化け物の姿をしているにも(かかわ)らず、ハイゼンベルクから(かも)し出される(くや)しさと悲しみの感情は、人のそれとなんら変わる事はない。ジュールは直感としてそう思っていた。だからこそジュールはハイゼンベルクが落ち着くのを静かに待ち続けたのだ。ただハイゼンベルクの方も、そんなジュールの優しい気遣いに気が付いたのだろう。彼は残された左手で軽く涙を(ぬぐ)うと、気を取り直して話の続きを始めたのだった。

「その場に居合わせた者で生き残ったのはリーゼ姫と我、そしてディラックの三人だけだった。(わず)か三人しか生き残れなかったのだ。そしてあまりにも突発的に事が起きた為、我らはしばらくの間現実を受け入れる事が出来なかった。いや、きっと受け入れる事を拒否していたのだろう。弱音を吐いてしまうが、堪らなく怖かったからな。絶対的な畏怖で我の心は()()くされてしまったのだ。だってそうだろ。ボーア将軍をはじめとして、パーシヴァル軍の幹部兵士達が一瞬で死んだのだからな。将軍の為なら命などいらぬ覚悟はとうに出来ていたはずなのに、我は無残(むざん)にも(はかな)く将軍の命をいとも簡単に奪った死の鏡の力を目の当たりにして、(ふる)えが止まらなかったのだ……。ただそんな我のもとにリーゼ姫が歩み寄って来てくれた。そして姫は震える我の手を取りそっと握った。姫も我と同様に震えていた。それでも彼女の手から感じる(ぬく)もりは、不思議と我の恐怖を(やわ)らげさせ、さらに落ち着きまでもを取り戻させた。ふと見ると、姫の右腕に刻まれていたあの刻印は、何事も無かったかのように消えていた――」

 東の空が薄らと明るくなりはじめている。夜明けはもうすぐだ。ほぼ全ての幹部兵士が死に絶えた結果、必然としてパーシヴァル軍の責任者とならざるを得ない立場となったハイゼンベルクは決断を迫られる。アダムズ軍に対して、これからどう対応するのかを。

 ただハイゼンベルクの心は決まっていた。姫の温もりによって持ち前の冷静さを取り戻した彼は、夜明けとともにアダムズ軍に対して全面降伏する事を決めたのだ。

 すでに目的は達成されている。そう、蒼き蛭の呪いは姫の体から完全に獲り払われたのだ。そして鏡の封印も無事に成功した。ならばもうこれ以上、アダムズ軍と戦う理由は存在しない。ハイゼンベルクはそう判断し、降伏を決断したのだった。

 それでも鏡だけはアダムズ軍に渡す気にならなかった。恐らくパーシヴァル軍が降伏した後、アルベルト国王はリーゼ姫の身柄の保護と鏡の回収を軍に指示するだろう。ただリーゼ姫については、刻印が消えた事で命の危険は回避出来たと考えていい。それに姫はパーシヴァルの王族なのだ。いかにアルベルト国王が絶大な力を有しているとはいえ、他国の王族に危害を加えるわけがない。

 しかし鏡は違う。そもそも事の発端(ほったん)は、アルベルト国王が死の鏡を強く渇望し、それを将軍が拒否したことから始まったのだ。易々と鏡を渡してしまったら、ボーア将軍の死は無駄になってしまう。ハイゼンベルクはそう考え、鏡の明け渡しに難色を示したのだ。

 だがそこで問題が浮き彫りとなる。今はアダムズ軍に完全に包囲されている状況なのだ。こんな状況では鏡を持ち出せないし、それに何処かへ隠したところで、それは単に発見の時間稼ぎにしかならないだろう。ハイゼンベルクはそう思い、頭を悩ませた。

 夜明けはもう直ぐそこだ。降伏の準備も着々と進んでいる。だが鏡の処置だけはどうしても思いつかない。やはりせめてもの悪あがきとして、どこか人目のつかない場所に隠すしかないのか――。極度の焦りでハイゼンベルクは息が詰まりそうになる。だがその時だ。突然一人のアダムズ軍隊士が、ハイゼンベルクの前に現れたのだった。

 何者だ! いや、それより何処からこの場に進入したというのだ。降伏の準備でいかにパーシヴァル兵が慌ただしい状況だとはいえ、遺跡の内部を固めた状態である事には変わりない。そんな中をアダムズ軍の隊士が歩いていれば、すぐに取り押さえられるか、最悪は射殺されるはず。それなのにこの隊士は現実として目の前にいる。

 幻でも見ているのか。ハイゼンベルクは真剣にそう思った。蒼き蛭によって巻き起こった非現実的な現象が、彼の心にそんな錯覚をイメージさせたのだろう。しかし目の前に現れたアダムズ軍隊士は現実として存在し、その証拠として隊士はハイゼンベルクに向かい、こう告げたのだった。

「私はボーア将軍の友人である、グラム博士の遣いで参じた者です。ですので当然あなた方に危害(きがい)を加えるつもりはない。だからどうか、落ち着いて話を聞いて下さい。私の名は【ファラデー】。アダムズ軍の隊士ですが、グラム博士とは古くから付き合いがあり、その博士の指示を伝えに来ました」

「えっ! ファラデー隊長!?」

 ジュールは唐突(とうとつ)に出てきたファラデーの名に動揺(どうよう)を隠せない。しかし話の核心はまさにこの後なのだろう。ハイゼンベルクはジュールに対して目だけで(うなず)くと、決意を強めて話し始めた。


 パーシヴァルの王族達が死の鏡の力によって死に絶えた頃、グラム博士はアダムズにいた。アルベルト国王の要求に対して事前にボーア将軍と話し合った博士は鏡を将軍に(たく)し、彼自らは発明した科学技術を隠す為、一時アダムズに帰国していたのだ。

 それからアダムズ軍とボーア軍の戦闘は、時を経て四年目を(むか)えていた。予想を大きく超えて長引く戦闘に、当事国であるアダムズやパーシヴァルは酷く頭を悩ませる。そしてグラム博士も同様に、ボーア将軍の身を強く案じていた。

 双方ともに疲弊しきっているからなのか、四年目を迎えた戦闘は硬直状態の(にら)み合いが続いていた。しかしそんな状態であっても、時折激しい衝突が起き、その度にその情報はアダムズやパーシヴァル、そして周辺諸国に大きく報じられた。

 グラム博士は、そういったニュースを耳にする度に酷く心を痛めていた。今すぐにでもボーア将軍のもとに加勢に行きたい。そして将軍を救いたい。博士は痛切にそう思い、悩み考えていた。しかし博士は結果としてボーア将軍の加勢には向かわなかった。何故なら博士には、その場から離れられない理由があったのだ。

「恐らくグラム博士は事の結末を予想していたのであろう。ゆえに博士は将軍に加勢するよりも、まだ未完成であった研究を続ける方を選んだのだ。そうすれば将軍にもしもの事があった場合でも、迅速(じんそく)に次の行動に移行出来るからな。そしてあの日が訪れる。誰よりも鏡に詳しい博士は、姫の誕生日と満月が重なるその日に、将軍が鏡の封印を決行すると確信していたのだろう。だから博士はあのタイミングでファラデーを遣いに出したのだ」

 ハイゼンベルクの語る博士の話に、ジュールは息をするのを忘れる思いで聞き入った。いや、彼は聞かなければいけないという使命感に駆られていたのだ。そしてそんなジュールの耳に届くハイゼンベルクの話は、真実の扉を少しずつ開いていくものだった。

 ファラデーがハイゼンベルクに伝えた博士の指示は二つ。一つは武器を捨て、アダムズ軍に全面降伏すること。そしてもう一つは封印されし死の鏡を、ファラデーに託せというものだった。

 ハイゼンベルクにとって、前者はもとよりそのつもりだったから素直に承諾した。しかし後者については、さすがの彼も躊躇(ちゅうちょ)せざるを得なかった。

 ハイゼンベルクは困惑を露わにする。その後しばらく経ち、博士と直接話す機会を設けた事で、ハイゼンベルクはそれが正しい判断であったと思えたが、その時はまだ何の確証があるわけではなく、突然現れた敵軍の兵士に今まで必死に守ってきた鏡を渡すなど、まったく受け入れられなかったのだ。ただそんな思い悩む彼の心情を察してか、またしてもリーゼ姫は優しく彼の手を握りしめる。そして姫はハイゼンベルクに向かい小さく言ったのだった。

「この(かた)を信じましょう。この方の目は本当の事を告げている気がします。きっと大丈夫です」

 そう言って姫は穏やかに微笑(ほほえ)んだ。そして戦場に最も似つかわしくない姫のその笑顔を見たハイゼンベルクは、なぜか肩の力がすっと抜ける思いがした。


 彼の考えは決まった。それでもハイゼンベルクは隣に座っていたディラックの顔を見る。彼は共に死線を乗り越えた部下であり、また友であるディラックの意見にも耳を貸そうとしたのだ。ただそんなハイゼンベルクの気遣いは無用の配慮であった。

 ディラックは黙って(うなず)いていた。彼はボーア将軍同様に、絶対的な信頼を寄せる上官のハイゼンベルクの決断に快く賛同したのだ。

 確証なんてどこにもない。しかし姫が言う様に、ファラデーの言葉には信じていいだけの価値がある気がする。ディラックはそう思い、ハイゼンベルクに向かって微笑んだのだった。

 そんなディラックの姿勢に頼もしさを感じたハイゼンベルクは鏡をファラデーに手渡す。そこには強い覚悟と共に、重荷を手放す安堵感が込められていた。するとそれを見ていたリーゼ姫が小さく一言だけ(つぶや)いた。

「良かった……」

 張り詰めていたものが切れたのだろうか。姫はハイゼンベルクに()()いながら、眠るように意識を失う。誰よりも気持ちをすり減らして今日まで生きて来た姫なのだ。ホッとした気の弛みで、それまでに蓄積された疲労感が彼女を深い眠りに(いざな)ったのだろう。その証拠に見た目には血の気が引き青ざめた顔色をするリーゼ姫であったが、その表情はどことなく安らぎを(かも)し出した優しいものだった。

 まるで女神が眠っているかのようだ。ハイゼンベルクとディラックはそう思いながらリーゼ姫の姿を温かく見守る。そして鏡を丁寧に布で包んだファラデーは、ハイゼンベルクらに向かって最後に言った。

「私を信じてくれてありがとう。ただパーシヴァル軍幹部のあなた方二人は、降伏後間違いなくアダムズ軍に拘留(こうりゅう)されるでしょう。でも決して反抗などせず、静かに自重(じちょう)してもらいたい。いずれ必ず私が迎えに行きます。だからどうか、少しの間辛抱して下さい」

「信用して良いんだな?」

「もちろんです。それに今後決行するグラム博士の【計画】には、鏡の力を知ったあなた方の協力が絶対に必要になるはずなんです。だから私を信じて待っていて下さい。それは亡きボーア将軍の【遺志(いし)】でもあるはずですから――」

 そう言い残し、ファラデーは遺跡を(あと)にした。そしてそんな彼の後姿をハイゼンベルクとディラックは強い視線で見つめていた。

「グラム博士の計画、それにボーア将軍の遺志。我はファラデーが何を言っているのか、まったく意味が分からなかった。でもなぜだろうか、その言葉を聞いた我は、不思議と生きる希望を持つ事が出来たのだ。正直に言えば我はあの時、全面降伏を行ったあと死ぬつもりでいた。将軍の後を追う事だけが、我に残された仕事だと思っていたから。でもファラデーが最後に告げたグラム博士の計画と将軍の遺志。それらが一体どういったものなのか、我は知りたくなっていた。たとえ生き(はじ)(さら)そうとも、それが将軍の願いに(つな)がるのであれば、甘んじてその苦痛を受け入れよう。そう心に決めたのだ」

 そう告げたハイゼンベルクの表情からは強い意志が感じられた。そしてそんな彼の熱い気持ちに、ジュールの心も少なからず揺さぶられていた。ただグラム博士やファラデーは何をしようと画策していたのか。それが気になるジュールの胸の内は、只ならぬ不安で満たされていくだけだった。

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