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こてつ物語3  作者: 貫雪
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 華風組に帰った土間は、さっそく元の女組長に倉田の事を聞いて見た。


「でもねえ。うちも研ぎを頼んでいただけで、個人的な事まではあまり聞いてはいないのよね。この世界ですねに傷を持たない人を探すほうが難しいくらいだし」


 元組長も困惑気味だ。とにかく話が古くなりすぎる。そんなに古い恨み事を今更蒸し返す者がいるのだろうか? もちろん時が解決しない傷も少なくはないのだが。


「確たる話でなくてもいいんです。人づての話とか、噂とか」


「倉田さんの事なら、アツシが一番詳しいんじゃないかしら?」


「アツシさん、ですか」土間の表情が曇る。


「倉田さんに直接砥ぎをお願いに行っていたのは、ハルと……」

 言いかけて元組長が、土間の顔色をうかがう。


 ハルとは土間が刀の扱いを一からたたきこまれた師匠であり、若かった土間を面倒見続けてくれた恩人でもある。土間が女になり、刀を握らなくなったのはこの師匠と、一緒になって間もなかった妻を殺されたことに由来している。この傷は今でも土間を苦しめているのだ。


「かまいませんよ。ハルさんと?」


「あの頃は、ハルとアツシが、倉田さんに砥ぎのお願いに行っていたのよ。組の中でも倉田さんと親しかったのはこの二人。何か聞いているとすれば、今ではアツシだけでしょうね」


 よりによってアツシさんか。しかも話は刀がらみときている。これはひと悶着は覚悟しなければならないわね。


「解りました。仕方ありませんね。アツシさんに聞いてみます」

 土間はため息とともにアツシの元へと向かった。



「と、言う訳で、しばらくの間、私達があなたの護衛を務めさせていただく事になりました。外には見張りの者もいますので、しばらくご不便をおかけしますが、よろしくお願いします」礼似と香が頭を下げた。


 二人は倉田の工房に来ていた。怪しいものから身を守るだけなら、そっと見守ればよいのだが、今回は銃で狙われているので、それは不可能だ。


 事前に怪しい者が捕まえられれば良いが、万が一という事もある。それで二人が倉田の部屋や工房に出入りする許可を得るために、挨拶をしていたのである。


「こんなおいぼれのために若い娘が二人も来て守ってくれるのか。これはこてつ会長によっぽどお礼を言わないとな」倉田は楽しそうに笑う。


「だが、本当に危険な時は無理をせんでくれ。お前さんがたと、俺とでは命の重さが違う」

 倉田の口調が変わる。視線が真剣なものになった。


「それほどの命じゃないですよ」香がぽつりと言ったが、礼似がキッと睨んで黙らせた。


「お気遣いありがとうございます。十分に注意しますので、ご心配なく」


「そちらの御嬢さんにも、是非、そう思っていてもらいたいね」倉田は悲しそうに言った。



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