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「もう採寸が済んだのか。さすが倉田さんだ。仕事が早いや」良平が義足を受け取りながら感心した。
「何でもいいけど、こんな街はずれの写真館で、いったい何をしてたのよ」礼似が聞いた。
「お義父さんへのプレゼントを取りに来てたの」御子が紙袋から、写真を取り出した。
「写真?」礼似が写真を開いて見る。
「これって……」
「いいでしょう? 私が事前に撮った白むく姿に、お義父さんの亡くなった奥さんの写真を合成してもらったの」御子が自慢げに言う。
「隣にちゃんと、組長の袴姿も添えられてるんだ。いい出来だろう?」良平も言う。
「結構苦労したのよ。お義父さん達、式の直前に騒動があって、式を挙げる事が出来なかったらしいの。そのせいでお義父さん、奥さんに花嫁姿をさせられなかった事をずっと悔んでいたのね。それで、墓前に供えてもらおうと、この合成写真を思いついたんだけど、男の人って記念写真とかに疎いのね。家じゅう探してもろくな写真が無かったの」
御子は良平に、そうはならないでよと言わんばかりに視線を向けながら言う。
「それであいさつ周りの時に、あちこち写真の事を訪ね回って、会長のお宅に行った時に、いい写真をいただけたの。で、その時奥様に、そういう写真を作るなら、この辺ではここが一番いいって聞いたもんだから、出来あがるまでお義父さんにばれないようにこっそり用意してたって訳」
「式の前だから注意はしていたんだが、俺と御子ならめったなことはないからな。かえって組長とか守る人数が増えた時の方が怖いくらいだ。それでも念のためにハルオに連絡は入れていたし。まあ、騒ぎになったのは悪かったよ。ただ、こういうことは機会がないとなかなかできないからな」良平はすまなそうだ。
すると、今度はタクシーが止まって、中から土間と倉田、香が出て来た。
「あら、ごめん。もう終わってたわ」礼似が三人に向かって言った。
「何よ、人を呼びつけておいて。こっちも大変だったのよ。あんたが倉田さん達をほっぽって行っちゃたから、私が助ける羽目になったんだから」土間がむくれた。
「え? そっちも何かあったの?」
「のんきなもんね。倉田さんも香も危なかったんだから」
「すいません。私が倉田さんを守りきれませんでした」香が気落ちした様子で謝る。
「いや、そんなことはない。この娘はちゃんと俺を守ってくれたよ。それに自分の身も守った。俺は嬉しいよ。この娘が無謀な事をしなくて」そう言って、倉田がとりなした。
その様子を見て、礼似は香の心情に何か変化があった事を感じ取った。何かが良い方向に向かったようだ。
「ま……あ、私が二人をほっぽって飛び出しちゃったのが悪かったんだし、土間にも手間をかけたみたいだし。あら?」
礼似は土間が刀を携えているのに気が付いた。
「土間、あんた、刀持って平気なの?」
「ああ、これ? これは特別なの。私が持たなくちゃいけない刀なのよ」そう、土間は答えた。
「そうなの? 何でもいいけどそんな目立つもの持って、銃刀法で検挙されたりしないでよね」
礼似はごく、常識的な事を言った。




