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「あんた達が礼似の言ってた反会長派?」
御子は自分達を取り囲んだ男達に聞いた。
「随分と早耳だな。もうそんな話が出回っているのか」御子の正面にいる、細身の男が答えた。
こいつが中心人物か。御子は男を睨みつける。良平は御子の肩につかまりながら立っていた。
「まあね。情報の早さはちょっと自慢なの。良平のドスさばき程じゃないけどね」
喋りながら御子は、良平が懐のドスを確認しているのを、横目で確かめる。
「さすがは式目前のカップルだな。仲が良くて結構だ」男が油断のない表情のまま笑う。
「それはどうも。妬ける?」そういいながら自分のバッグの中に手を入れ、ナイフを探る。
「ああ、妬けるね。羨ましい限りだよ。式じゃ牧師はこう言うんだっけ? 死が二人を分かつまで、愛し合う事を誓いますか?」
「悪いが御子は神社の育ちだ。クリスチャンには縁がないね」良平が御子につかまりながらも、一歩前に出る。
「そいつは良かった。あんたらは幸せだよ」そう言いつつ、男は周りの男に目くばせする。
「二人で一緒にあの世に行けるんだからな」
男のこの言葉を合図に、男達が一斉に二人に襲い掛かった。
「義足がない事を後悔するんだな!」
男の一人が良平に向かってナイフを振りかざそうとした。
「良平! 左!」御子が叫ぶと同時に良平が左から振りかざされたナイフの刃をドスで跳ね返す。
「上!」他の男が上から振りおろしたナイフをドスで受けると、肘でみぞおちを突きあげる。
「右!」今度は御子が自分のナイフで相手のナイフを跳ね返し、良平が殴りつける。御子はそのまま身体を回転させて、後ろから襲おうとした男を回し蹴りにした。
「そして、後ろ」男はどさりと倒れる。御子の千里眼が怪しく光った。あっという間に四人の男が倒される。
「あんた達、何か勘違いしてない?」御子が言う。
「良平は義足がないと、自分からは襲えないけど、そっちが襲ってくるなら、いくらでも叩きのめせるんだからね」
「あ、足が動かせなけりゃ、逃げるのもままならないだろうが」リーダー格の男が言う。
「逃げる?」御子は男に目を向けた。
「なんで? 私が横にいるのに? 千里眼の先読みと、良平の電光石火のドスさばきのスピードがあるのに、なんで逃げる必要があるのよ」御子はせせら笑った。
「お前らぐらいじゃ義足でも十分だが、今は御子が俺の第三の目だ。へたすりゃ全員、切り刻む事になるかもしれないな。俺の義足がない事よりも、御子と一緒の俺を襲った事を後悔することになるぜ」良平もうっすらと笑う。
「守る相手が真横にいれば、俺は動く必要なんかないんだよ。こいつを置いて、何処にいこうってんだ」
「私も良平から離れる気はないしね。どうする? 切り刻まれるまでやるの?」
すると、男達の背後からも声がした。
「それもいいけど、私達と遊んでもらうのもいいかもね。良平だって参加できるわよ。はい、義足。お待ちどうさま」
礼似が良平の義足を持って立っていた。後ろにはハルオや、真柴組の若い男達もいる。
万事休す。男達はそう思ったのか、じりじりと後ずさりした挙句、脱兎のごとく逃げていった。




