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こてつ物語3  作者: 貫雪
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「礼似さんが帰って来たのかしら?」立ち上がろうとする香に


「待て、急に出ちゃいけない」と、倉田が制した。


「なかなかいい勘してるじゃないか、倉田」戸口から長身の男が顔を出した。


「関口か」倉田の表情がこわばる。


「誰なんです?」香が倉田に聞いた。


「刀使いさ。俺が昔刀を研いでやっていたんだ。今じゃ誰にでも雇われる嫌な野郎だ」


「久しぶりだな。そう嫌そうな顔しなさんな」関口と呼ばれたその男の手には刀が握られていた。


「表にいた見張りの人たちをどうしたの?」香が関口を睨んだ。


「こんな真昼間に道端で無駄な殺生はしねえよ。気を失ってるだけさ。それより倉田。あんたに渡してもらいたいものがある」


「何だ? 言っとくが俺の手元にお前の役に立つものはないぞ」


「役に立つかどうかは俺が決めるさ。ここに春治の刀があるはずだ。そいつを渡してもらおうか」

 関口は刀を抜いて凄んで見せた。


「あれはお前の役には立たん」


「俺が決めると言ったろう?それに俺の役に立つかは問題じゃない。その刀を華風組の組長に渡したくないのさ。誰もがすっかり忘れていたものを、馬鹿な野郎があんたに余計な脅しをかけたんで、華風組が刀の事を調べ出した。俺はわざわざ刀使いが増えるのを、見過ごしておくほど人が良くないんだ。俺の仕事がやりにくくなるんでね」


「お前、こてつ組にたてつく気か?」


「そんなの知ったこっちゃないさ。俺は雇われ仕事をするだけだ。それに、こてつ組だって一枚岩って訳じゃない。あそこは大きくなりすぎた。今に必ずひと悶着起こるだろう。その時に目の上のたんこぶが増えるのはまっぴらなんだよ」


「やはり、反会長派がいるんだな」


「だからいい勘してると褒めてやったのさ。さあ、さっさと春治の刀を出してもらおうか」



 関口が二人に迫ってくる。倉田は工房の奥から、何本かの刀を出してきた。


「年取って物分かりがよくなったじゃねえか、倉田」


 関口がそういった瞬間、倉田は刀を一本鞘から引き抜いて関口に斬りかかる。関口が後ろに身を引くと、香も残りの刀を関口に投げつけ、倉田の手を引いて表へ飛び出そうとする。


 しかし関口も素早い。すぐに二人を追いかけ、刃を二人に振り下ろしてくる。とっさに二人は互いをかばい合った。香は思わず目をつむる。もう間に合わない!


 ガキッ。


 嫌な金属音がして、香は恐る恐る目を開けた。自分達の前に、土間が立ちはだかっていた。


「土間さん!」


「間に合ってよかったわ。倉田さん、この刀、ちょいとお借りするわよ」


 見ると、土間の手に刀が握られ、鞘からわずかに覗かせた刃の根元で関口の刀をせき止めている。

 土間はそのまま弾みをつけるようにして、関口の刃を跳ね返すと、鞘を引き抜き、関口の態勢を立て直す間も与えずに身ね打ちにしてしまった。関口がどさりと倒れる。


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