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こてつ物語3  作者: 貫雪
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「もう! 繋がらない! こんな時になんで電源切ってるのよ!」礼似は物言わぬ携帯に文句を言う。


「でも今までの話って、全部憶測ですよね。何か証拠があるって訳じゃないし」と、香は言ったが


「憶測でも何でもいいのよ。別に犯人探しが目的じゃないんだから。二人に危険が迫っているかもしれないなら、早くそれを知らせないと。言ったでしょう? 命は軽くないって。誰にどんな迷惑がかかるよりも、二人の無事が最優先なの」


 喋りながらも礼似はリダイヤルしていたが、電源が切られているのか、繋がらなかった。


「まさか何かあったんじゃないでしょうね」礼似が携帯を睨みつける。


「落ち着きなさい、式の前の忙しい時だ。たまたま電波の届かない所にいるのかもしれないし、電源を入れるのをはばかられる状態かもしれない」倉田が礼似を落ち着かせようとする。


「婚約者同士だしねえ。お取り込み中なんじゃないの?」香がのんきな事を言う。


「いいわ、私、真柴組に義足を届けて来る。倉田さん、採寸はもうすんでいるんですか?」


「もちろんだ。あんたらがいるおかげで落ち着いて仕事が出来る」


「光栄です。じゃ、香、しっかり倉田さんを守ってよ。倉田さんの腕も狙われているかもしれないんだから」


 礼似は香がうなずくのを確認すると、義足を持って飛び出していった。


 まったく! 心配かけてホントに取り込み中だったら、二人ともただじゃおかないからね!



 さて、礼似が飛び出す三十分ほど前にさかのぼると、御子と良平は真柴組長と共に、式場での打ち合わせが済んだばかりだった。


 式場を出た所で、良平が御子に目くばせをする。


「お義父さん」御子が組長に声をかけた。


「どうした?」

 答えた組長はくすぐったそうな顔をしている。いまだに御子に「お義父さん」と呼ばれる事に慣れずにいるのだ。御子の方でもそれを面白がって、やたらと使っているのだが。


「私達、これら寄りたい所があるので、タクシーで先に帰っていてくれませんか?」


「そりゃかまわんが。良平は今、義足がなくて不便だろう。義足が戻ってからじゃダメなのか?」


「ううん。どうせ車だし、大した用事じゃないから。夕方までには帰ります」

 そう言って御子は良平を支えながら、駐車場の方へと歩いて行った。


 組長は珍しいなと思いながらも、まあ、組に戻れば人も多い事だし、二人でゆっくり話したい事でもあるんだろうと考えると、タクシーを捕まえて、一人、組へと戻っていった。


 二人はその姿をこっそり確認すると、自分達の車に乗り込んだ。


「おい、携帯の電源、切っておけよ。急にかかって来て会話がばれるかもしれない」


「あ、そうか。はいはい」


 良平に言われて御子が携帯の電源を切ると、良平は車を街はずれの方に向かって走らせる。


「うまく仕上がってるといいけど」


「大丈夫だろ? かなり細かく注文したし、腕は会長の奥様のお墨付きだ。散々探し回った甲斐があったってもんさ。組長もきっと喜ぶぞ」


「こういう時でないとなかなかできないものね」


「機会って大事だよな。いつでもできると思うと、人間何にもしないもんだ。時には形に残すことも必要だな」


「そうね。楽しみだわ」


「仕上がりがか?」


「お義父さんよ。どんな顔するかしらね」

 そう言って御子はくすくすと笑った。


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