感染者の進化 ― 感染初期から2年後まで
【感染者の変異速度について】
・以下の7枚の画像は、標準的な感染者の身体変異を時間経過に沿って示したものである。
・FMウイルスは東アジア系、とりわけ日本人との親和性が極めて高い。
・日本人感染者では、標準的な感染者と比較して身体変異および精神変容が平均約2倍の速度で進行する。
・一部の高親和性個体では、最大約4倍の速度で進行する例も確認されている。
・そのため、日本人感染者では画像に示された身体変異が、標準よりも早い時期に現れる場合がある。
・外見上は健常者とほぼ区別できない。
・発熱、咳、鼻水、嘔吐、下痢、目の充血などの身体症状が確認される。
・精神変容が段階的に始まる。
・高熱・嘔吐・痙攣などの症状が確認される。
・筋肉の急激な再構築が始まる。
・強い倦怠感のため歩行は非常に遅い。
・一般的なゾンビのようなのろのろした動き。
・短距離なら瞬間的に速く動くことはあるが長続きしない。
・消化器系の変異が始まり、植物性物質を消化・吸収できるようになる。
・外見は依然として人間に近い。
・筋肉量が急増する。
・歩行速度が徐々に向上する。
・個体によっては短時間走れるようになる。
・人間より体力が高くなり始める。
・筋肉量が急激に増加する。
・さらに消化器官が発達し、腸管の肥大が確認される。
・筋肉はさらに発達する。
・脱毛が始まり、多くの個体で頭髪が失われる。
・外見は極端に筋肉質となる。
・全個体で巨大化の兆候が確認される。
・個体差が急激に拡大する。
・大型個体では身長約2m、体重約150kgへ達する例が確認されている。
・視力は著しく低下し、嗅覚および聴覚への依存度が高くなる。
・心肥大などの合併症を発症する個体が増加する。
・肩や胸の皮下組織が厚く硬くなる「鎧化」が完成する。
・鎧化した部分は硬いゴムや厚い革のように強靭になり、外傷に対する防御力が大幅に向上する。
・ただし、全身が鎧化するわけではなく、腹部などには防御力の弱い部分が残る。
■あとがきコーナー
今回は、感染者の異常な筋肉の発達や、身体が鎧のように変化する「鎧化」について、どのような発想から考えたのか。その裏話を少し紹介したいと思います。
まず、感染者の異常な筋肉の発達は、ボディビルダーから着想を得ました。
筋力トレーニングでは、筋肉に強い負荷をかけることで筋線維に微細な損傷が生じ、炎症や修復の過程を経て筋肉が発達していきます。
いわゆる「超回復」という考え方ですね。
そこで思いついたのが、「ウイルスによって筋肉に炎症を起こし、さらに男性ホルモンを大量に分泌させたら、筋肉が異常に発達するんじゃないか?」という発想でした。
人間の身体には、もともと傷ついた筋肉を修復する機能が備わっています。
そこへ、筋肉の成長を促す男性ホルモン「テストステロン」が過剰に分泌されたらどうなるのか。
さらに筋肉の発達について調べていくうちに、筋肉の成長を抑制する「マイオスタチン」というタンパク質の存在も知りました。
そこで、FMウイルスによってテストステロンが過剰分泌され、マイオスタチンの機能も低下するという設定を取り入れました。
普通の人間なら何年もかけて鍛え上げるような肉体が、短期間で形成されてしまう。
そんな感染者がいたら、相当恐ろしい存在になるのではないかと思ったのです。
そして、ここからさらに発想が飛躍しました。
「どうせ筋肉に炎症を起こすなら、脳にも炎症を起こしてしまえばいいのでは?」
人間の脳にある前頭葉は、感情や衝動の制御、理性的な判断などに重要な役割を担っています。
そこで、FMウイルスによって脳にも慢性的な炎症が起こり、前頭葉の萎縮も徐々に進行していくという設定を考えました。
筋肉は異常に発達して強靭になっていくのに、脳では反対に理性を維持するための機能が失われていく。
身体が強くなればなるほど、人間らしい判断ができなくなり、感情や衝動を抑えられなくなっていくわけです。
こうして、「異常な筋肥大」と「理性の喪失」という、FMウイルスの基本的な特徴が生まれました。
そして、もうひとつ紹介したいのが、感染者の「鎧化」です。
実は、この設定にもモデルとなった動物が存在します。
それが、雄のイノシシです。
成熟した雄のイノシシには、肩から胸の側面にかけて、皮膚の下に厚い防護組織が発達するという特徴があります。
これは「ショルダーシールド」と呼ばれ、繁殖期に雌をめぐって争う際、ほかの雄の牙による攻撃から身体を守る役割を持っています。
しかも、繁殖期には男性ホルモンであるテストステロンの分泌が増加し、ショルダーシールドも厚みを増すことが確認されています。
こうしたホルモンの変化も、防護組織の発達に関係していると考えられています。
つまり、自然界には本当に、身体の一部がホルモンの変化とも関わりながら、鎧のように発達する動物が存在するわけです。
これを知ったとき、「だったら感染者も、男性ホルモンを過剰分泌させることで、身体の一部が鎧のように発達したら面白いのでは?」と思いつきました。
そこで、FMウイルスによってテストステロンが異常に分泌され、その影響で肩や胸の皮下組織が徐々に厚くなり、硬いゴムや分厚い革のような防護層を形成するという設定を考えました。
これが感染者の「鎧化」です。
ただし、全身が硬くなるわけではなく、主に肩や胸の側面が強靭になる仕組みです。
また、ホルモンの影響による組織の変化には時間がかかるため、標準的な感染者では発症から約2年で鎧化が完成します。
振り返ってみると、筋肉はボディビルダー、脳は神経科学、鎧化はイノシシと、ずいぶんいろいろなところからアイディアを借りています(笑)。
もちろん、現実にこのようなウイルスが存在するわけではありません。
ですが、実際の医学や生物の仕組みを調べ、それらを組み合わせながら考えることで、感染者という存在に独自の身体構造を持たせることができました。
そして何よりもこだわったのは、感染者を単なるゾンビにしないことでした。
感染者は死んだ人間が動き出した存在ではありません。
かつて人間だった者が、生きたまま身体や脳を変異させられ、人間とは異なる存在へと変わっていく。
これが『Still Alive』に登場する感染者の基本的な考え方です。
それでは、今回のあとがきはこの辺で!




