表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘めごと  作者: 彩霞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第4話 秘めごと

「悩み、ですか……?」


「そう」


 この美しく、賢い男に、どんな悩みがあるのだろう――?

 ……と、清二は想像力のとぼしい頭で考える。だが、一向に何も思い浮かばない。


「だけど、今から話すことは誰にも言ってはいけないよ」


「それならなおのこと、私が相談役になるなんてとても難しいかと思いますが……」


 他者に言わないでくれと先に言うということは、余程のことだろう。自分ごときが聞いていい話とは思えない。

 だが、宗一は涼しい顔をして「いいのだ。清の答えを聞きたいのだから」と言う。


「ですが……」


 大概たいがいのことは許す宗一といえど、清二は求める返答をできると思えずしぶった。


「精一杯答えてくれればよい。それで十分なのだ」


 宗一が、そう言う。清二の心中を察したのだろうと思うが、そこまで言われたら何かしら答えないわけにはいかないと思った。


「わ、分かりました……」


 清二の返事に宗一はにこっと笑ったあと、足の上に両手を組み、くつろいだ様子で言う。


「私は、清の姉と結婚できたことをとても喜ばしく思っている。彼女のことも好きだ。だが、実を言うと、私には彼女以外に心に秘めた者がいる」


「……え?」


 清二は、狼狽ろうばいした。


 柳沢と西村の婚姻は、元々《《家の当主の間》》で決められたこと。困窮こんきゅうしている西村を、柳沢が助ける――そういう構図である。


 ゆえに、清二は心のどこかで心配していたことがあった。「宗一の気持ち」についてである。


 そもそも、柳沢が金の巡りが悪い西村と、何故婚姻を結ぼうと思ったのか、清二には疑問だった。「結婚」という名の契約をするなら、お互いが利益になることのほうがいいに決まっている。

 ゆえに柳沢は、価値のない西村と繋がりを持っただけで、特段の得はないはずなのだ。


 それでも結婚をすることになったのは、宗一が依子のことを好いていたからだろうと、清二なりに解釈していた。


 だが、解釈していただけで、宗一の本心は分からない。


 聞きたいようで、聞きたくないことだったため、宗一の言葉に、清二はついにそのことを打ち明けられたと思ってしまったのである。


「動揺するのも無理はない。だけど、私は別にその秘めた者とどうにかなりたいと思っているわけではないんだ」


 宗一はただ静かに、清二に自分の心中を語る。


「……ど、どうしてですか? その人のことを……好きなのではないのですか……?」


 野暮やぼなことを聞いているのは分かっていた。心に秘めた者への気持ちを置いて姉と結婚したのは、宗一が優しいから、助けを求めてきた西村に対して手を差し伸べてくれたからに決まっている。


 だが、宗一の気持ちを考えれば、聞かずにはいられなかった。


「好き……そうだな。とても特別な人であるのは間違いない。だが、どうにもできない相手でもあるんだよ」


 清二の問いに、宗一はまるでそよ風のごとく、特に気にした様子もなく静かに答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ