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秘めごと  作者: 彩霞


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第1話 華族

 明治十七年、初春。春めいた日差しの中、清二せいじの姉である依子よりこが祝言をげた。


 相手は伯爵家の長男、柳沢やなぎさわ宗一そういちである。柳沢家は由緒ゆいしょある家柄で、清二の家——西村家のように士族から男爵となった、名ばかりの家とは違う。


 そのため多く者は、「何故、西村と柳沢に繋がりができたのか」と疑問に思っていた。


 理由を答えるならば、柳沢宗一と清二の兄である康介こうすけが、幼いころから友人同士だったことが大きい。


 清二の父は、生活の困窮こんきゅうから脱するために、その関係性を利用し、二年ほど前から柳沢家の当主に「商売のやり方を教えて欲しい」と頭を下げに行った経緯がある。


 明治維新のあと、士族——つまり、武士たちは持っていた封建制度の特権を奪われた。それにより社会的地位が下がっただけでなく、経済的にも行きづまってしまったのである。


 しかし食べて生きていくには金がいる。その上、華族であるからには「華族」としての振る舞いを求められ、豊かである風によそおわなければならない。


 ゆえに、士族の連中は金を稼ぐために、こぞって商売に手を出したが、ことごとく失敗。お陰で「士族の商法」などという言葉が広まった。


 清二の父は家計が苦しくなる中で、そういった話を見聞きしていたため、華族の地位を捨てることを考えたこともあった。


 だが、少々おつむの弱い康介を、「エリート」にさせるには、華族の地位にとどまっていたほうが都合がよかったのである。


 華族は、地位相応の威厳を維持するのが大変だが、その分特権を与えられていた。その子弟は学業の面で優遇されており、場合によって帝国大学に欠員が出れば、試験をせずに入学することもできたのだ。


 そのため、清二の父は何とか金を作り現状を維持するために、商売に関してやり手であった柳沢に「何か手立てはないか」と教えをうたのである。


 柳沢といえば、今から十年前より、持っていた資産を使って「洋服」作りを始めた。舞踏会を開く華族たちは西洋の服を買うために、柳沢家が手掛けた服をよく買うという。富む者はさらに富むとはこのことだろう。


 しかし、己の商売技術を簡単に他人に教える者はいない。


 例にれず宗一の父であり柳沢家の当主もしぶっていたが、頼み込んだ三か月後に「貴様の長女を、宗一の結婚相手にするのであれば助けてやる」と言ったらしい。


 何故伯爵家ともあろう家が、男爵家の娘を嫁にもらいたいと言い出したのかは分からない。


 だが、こちらは生活がかかっているので、父は即断した。明治十五年のことである。

 当時十五歳だった清二の姉は、婚約を勝手に決められたのだが、「棚から牡丹餅ぼたもち」だと言い、二つ返事で引き受けた。


 それもそのはずで、姉の二つ年上の宗一は家柄がいいだけでなく、きれいな顔立ちをしており、頭がよく、人への気遣いがあって優しい、非の打ち所のない青年だったからである。

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