ステーキを求めて
ステーキを求めて
4日目、部屋は薄暗く、少年の呼吸は浅くなっていた。彼はベッドに横たわり、天井を見つめていた。
「ステーキ、食べたい・・・」
少年は、何度も心の中でそう呟いた。もう4日も何も口にしていない。冷蔵庫には、わずかな野菜とパンしか残っていない。両親は、心配そうに様子を見に行くが、少年は頑としてステーキ以外は食べないと主張する。
「ステーキ、ステーキ、ステーキ・・・」
少年の目は虚ろになり、意識が遠のきかけていた。すると、視界が揺らめき始め、部屋がゆっくりと回転し始めた。彼はまるで、どこかに吸い込まれていくような感覚に襲われた。
気が付くと、少年は美しい海の真ん中に浮かぶ島にたっていた。そこには、金色の砂漠が広がり、椰子の木がそびえ立ち、どこまでも続く青い海が輝いている。少年は、この美しい風景に目を奪われた。
「ここはどこだ?」
少年がそう呟くと、どこからともなく声が聞こえてきた。
「ようこそ、竜宮城へ」
振り返ると、そこには美しい着物姿の女性が立っていた。
彼女は少年を優しく見つめながら、こう言った。
「あなたは、お腹がすいているようですね。どうぞ、こちらへ」
女性は、少年の手を引いて、豪華な宴会場へと案内した。
そこには、山盛りのご馳走が並んでいた。金色の食器に盛られたステーキ、新鮮なシーフード、色とりどりのフルーツ、そして甘い香りが漂うケーキ。少年は、それらの光景に目を輝かせた。
「これ、全部僕のためですか?」
少年は、信じられないような気持ちで尋ねた。
「はい、どうぞごゆっくり召し上がってください。」
女性は微笑みながら、そう答えた。
少年は夢中で食べ始めた。ステーキは、今まで食べたことのないような柔らかさとジューシーさで、口の中に広がる肉の旨味がたまらなかった、彼は、今まで感じたことのないほどの幸福感に包まれた。少年は感動のあまり涙を流した。
竜宮城での豪華な宴は、少年にとって夢のような時間だった。特に、毎日食べられるステーキは彼にとって最大の喜びだった。しかし、何日も続く贅沢な食事に、少年は次第に飽き始めた。
「毎日ステーキばかりだと、ちょっと飽きてきたな・・・」
最初は、一口食べるたびに歓声を上げていたステーキも、今では少し味気なく感じられる。他のご馳走もたくさんあるのに、少年の心は、どこか満たされないのだ。
ある日、少年は、竜宮城の広場で偶然、テレビを見つけた。画面には、美味しそうなステーキを豪快にかぶりつく人の姿が映し出されていた。その様子を見て、少年はハッと気づいた。
「あれ。そういえば俺、なんでこんなにステーキが食べたかったんだっけ?」
少年は、過去の自分を思い出そうとした。そして、あることを思い出した。それは、テレビのコマーシャルで、人が美味しそうにステーキを食べているのを何度も見たことだった・その光景を見て自分もあんな風にステーキを食べてみたいと思ったのだ・
「もしかして、俺がステーキを食べたかったのは、みんな美味しそうに食べてるから、自分もそうしたかっただけなのかな?」
少年は、自分の心の奥に隠された本心に気づいた。彼は周りの人と同じことをしたいと思っていたのだ。
「でも、いつもみんなと同じじゃつまらないな。僕はだれもやらないようなことを、自分で考えてやってみたい」
少年は、竜宮城での経験を通して、自分自身の心の声に気づくことができた。
彼は、もう周りの目を気にすることなく、自分の本当にやりたいことを追求しようと決意した。
終わり 読んでくれてありがとう!!!!