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第5話 メイドの朝

 フレイヤと共にイギリスから渡ってきたメイド、リタ・レイフォードの朝は早い。

 雇い主であるフレイヤの両親は仕事が繁忙期で最近家に帰ってこれていないが、フレイヤは学生で勉学などで忙しくすることはあるが帰ってこれなくなるなんてことはない。

 元々リタは過去にフレイヤから受けた恩を返すため、かなり無理を言ってメイドとして雇ってもらっている身なので、フレイヤから受けた恩と自分の無理を聞き入れてくれた恩を返すため日々滅私奉公している。


「サーモンフィレに長ネギの葉身、レモン、パセリ、ドライディルにニンジン……、ふむ。今日の朝食はあれでいいですね」


 さっとシャワーを浴びてメイド服に着替え、軽く化粧をしてからキッチンに向かい、冷蔵庫の中身を確認する。

 現在は午前四時半。フレイヤはまだぐっすり眠っている時間で、朝食を作るにはまだ早いが、今のうちに何を作るのかを決めておいたほうがあとで慌てずに済む。


 朝食を何にするか決めた後は、昨日の服を洗濯機に入れて回し、静音掃除機でほこりを吸ってからモップで綺麗に拭く。

 綺麗な布巾でテーブルからキッチンの台、テレビから窓と隅々まで徹底的に綺麗にしていく。最初は時間がかかってしまっていたが、今はもう手慣れたものだ。


「こんなものですね。……まだ朝食を作るには時間がありますね。外の掃除もしてしまいましょうか」


 懐中時計を取り出して時刻を確認。現在午前五時十三分で、まだ少し時間がある。

 たおやかな指を顎に当てて、んーっと考えてからそっと音を立てずにドアを開けて外に出て、箒で玄関から門扉までを掃除する。


「おや、おはようリタちゃん。今日も早いねえ」


 てきぱきと掃除していると、隣の家に住んでいる老婦人があいさつをしてくる。


「おはようございます、小山様。今日は少し冷え込みますね」

「そうだねえ。最近寒くなってきたから、こたつから抜け出せなくて困っちゃうよ」「フレイヤ様も寒くてお布団から出たくないとおっしゃる時があります。普段はしっかりなさっているのですが、寝起きは年相応にわがままというか。そこが可愛らしいのですけど」

「リタちゃんはフレイヤちゃんが大好きだねえ。髪の色も顔も違うのに、姉妹みたいだ」

「ふふっ、ありがとうございます。……あら、もうこんな時間ですね。そろそろ朝食の準備をしないといけませんので、失礼いたします」


 懐中時計を確認して、そろそろ朝食作りを始めないといけない時間になったので、玄関の掃除もきりがいいところだったので切り上げ、ぺこりと折り目正しく腰を曲げて頭を下げてから家の中に戻る。


「そういえば、フレイヤ様のチャンネルはどうなっているのでしょう」


 スリッパに履き替えてぱたぱたと歩いてキッチンに戻り、調理を始める前に先週からフレイヤが始めた配信のチャンネル管理を任されているリタは、スマホを取り出してアナリティクスを確認する。


「…………これは、少し予想外、ですね」


 昨日、フレイヤは配信を切り忘れたまま、迷惑系で有名な男性配信者をワンパンKOした挙句、その男性の持っていた撒き餌がその衝撃で割れて、寄ってきたモンスターを一撃で全て葬った。

 彼女が切ったのはカメラだけでマイクと配信自体は付いたままになっており、終了後の独り言などはばっちりとアーカイブに残っているし、当然その後の出来事も全て残っている。

 管理を任されているし、モデレーターとしてフレイヤの配信に張り付いているので切り忘れももちろん気付いており、家に帰ってきた後に気付かれないようにそっと配信を切っておいた。


 一撃で気絶させた相手は特上の炎上行為を過去に何度も繰り返しており、今回やろうとしていたのは今までとは比較できないほどの悪質なものだ。

 それが実行される前に止めたが結局撒き餌で寄ってきてそれを一掃した瞬間というのは瞬く間に拡散され、切り抜きも大量の作られてはどれも数十万から一番多いので四百万再生を突破している。

 相手側の視点のクリップや切り抜き動画と、ネットに蔓延る特定班というアカウントや場合によっては住所すら特定する人々にフレイヤのアカウントは瞬く間に特定され、最上級の炎上を止めたとしてネットでバズりにバズっている状態だ。


 一晩経ったので少し落ち着いたかと思ったが、全くそんなことはなくて苦笑を浮かべる。

 しかしこれは、寝起きのフレイヤにいいサプライズを仕掛けることができるだろうと、ふわりと悪戯笑顔を浮かべる。


 とりあえずそれは後回しにして、冷蔵庫を開けてぱぱっと朝食を作り始める。

 料理は最初は上手なほうではなかったが、何度もやっていく内に上達していき、今ではロスヴァイセ一家の胃袋を鷲掴みにしている。

 今日はどんな顔で食べてくれるのだろうかと楽しみになり、笑みを浮かべながら朝食を作って行く。


「こんなものですね。さて、それでは起こしに行きますか」


 あらかた準備を終えたので、並べられるものはテーブルに並べて置き、虫が寄ってこないようにキッチンパラソルをかぶせておく。

 それからアーリーモーニングティーを準備してそれを持ってダイニングを出て階段を上がり、フレイヤが寝ている部屋の前に立ってノックしてから中に入る。


「フレイヤ様、お目覚めの時間です」

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