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第11話 ダンジョン進軍攻略配信

「カメラOK、 マイクも……OK。髪と服の乱れもなし。よし、準備万端ですね」


 予想外にも、最終的に六万人と少しが集まってくれた雑談配信の翌日。

 いつも通り学校に登校し、雑談配信でまた注目が集まったこともあって学校中の注目の的となり、教室に着くまでに生徒に囲まれてへとへとになるという出来事があった。

 そんなこんなで賑やかな学校生活を終えた後に、また囲まれる前に教室を抜け出して帰宅し、いつもの軍服風のダンジョン探索装備に着替え、必要なものを持っていつも潜っている都内某所のダンジョンに潜った。


 ダンジョンに潜って少し進んだところにある、モンスターが寄ってこない安全ポイントで配信開始の準備をする。

 頭上にはあらゆる魔術や呪術に対する高い耐性を持ち、物理衝撃にも強い自作の浮遊カメラが浮いていて、一緒に搭載してある空間投射ホログラムで配信枠の画面を映している。

 左手首に着けている腕時計はパソコン代わりの代物で、ホログラムの画面と同期しており、投射しているキーボードを右手だけで打ち込むときちんと打ち込まれた文字が画面に表示されて行く。


 諸々の準備を終えて、あとは配信開始をクリックするだけで生配信が行われる。

 しかし、待機している人数が既に三万人集まっていると表示されているのを見てしまい、ワンクリックするだけの行動をためらっていた。


「来てくださるのはありがたいですけど、来すぎると何を話せばいいのかよく分からないですね……」


 幸い告知してある時間までまだ三分ほどあるので、その間に気持ちを落ち着かせる。


「それにしても、昨日の雑談配信以降で登録者が更に増えて八十九万人ですか。嬉しいことなはずなのに、少し怖さを感じてしまいますね」


 もうこのままの勢いで成長を続ければ、来週には百万人を軽く突破していることだろう。

 多くの配信者やアワーチューバーが百万人を突破しそうな時は、耐久配信なるものを行っているのを見かけるが、ここまで一気に伸びてしまうと感覚が狂いそうだ。


「……そろそろ時間ですね。この緊張を、美琴さんはどうやって乗り切ったのでしょうか」


 あと数十秒で配信時刻になる。

 友人というほど親しくはないが面識のある美琴が、どのようにして大バズりの後の配信を乗り切ったのか気になってきて、そのうち連絡でもしてみようかと思いながら配信開始する。


”課題が全然残っているけど配信に来たZE☆”

”通知から来ました!”

”ダンジョンに潜っていると作戦行動中っぽくてカッコいい! あ、昨日の動画から来ました”

”キチャアアアアアアアアアアア!!”

”舞ってました!”

”ゴミを処分した実力とモンスターパレードを一撃必殺した武器の性能を見せてくれ!”


 配信を開始すると、のんびりと動いていたコメント欄が大爆発したかのように加速する。

 あまりの速さにコメントを拾うのが間に合わず、思わずあわあわと狼狽えてしまう。


「は、Hi! It’s time of my dungeon stream! 今日も来てくださりありがとうございます。昨日の雑談配信の最後と今朝告知した通り、今日はダンジョンの攻略配信となります。皆さんを楽しませることができるかはまだ少し不安がありますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです」


”少し緊張しているね”

”新人ちゃんだもの、仕方ないよ”

”新人特有の、配信に慣れていない感じがこれまたイイ”

”あの後ゴミのクランから何か連絡来ました?”

”ランスが地面にぶっ刺さってんの、なんかすごくカッコイイと思っちゃう”

”今日はどこまで進む予定ですか?”

”武器はそれだけで行くつもりですか? もっと他のが見たいです!”


「武器はランス以外にも使っていきますよ。一応、この翼も攻撃にも使えますので、数が多い時はこっちも使います。それで今日は、いつも通り下層の深域くらいまで行こうかなと思っています」


 フレイヤは普段から、ダンジョンの下層まで進んでいる。

 理由としては、そこのほうがモンスターの数も多いし落とす核石の大きさも中層までと比べると明らかに大きくなるからだ。

 苦学生というわけでもないが、いつまでも親に頼ってばかりではいられないので、こうして自分でお金を稼いでいるの。


”いつも通り下層の深域って、結構やべーこと言ってて草”

”その翼も武器になるんかいwww”

”あれか? ガン〇ムで言うとこのファンネルみたいな感じで羽が分離してモンスターをぶち転がすのか?”

”もう全身武装じゃんwww ここまで来たら、フレイヤちゃん本体もめっちゃ強くても驚かないわwww”

”ランス以外の武器かー。巨大ロマン兵器と言ったらでっかいガトリングとかパイルバンカー、固定しないといけないくらいデカい大砲とかかな”

”それより浮遊カメラとかいいの持ってるじゃん。どこの製品?”


「他の武器がどんなものなのかは、見てからのお楽しみです。それと浮遊カメラは買ったものではなく自作です。というか、私の使う機材系は全部自分で作りました。昨日家で雑談配信した時に使っていたパソコンも、お父さんの仕事部屋にジャンク品として放置されていたものをくすねて作ったものです」


”それも自作なの!?”

”いやまあ、色々と意味分からん兵器作っているくらいだからそうだろうなとは思っていたけどさ”

”ただのカメラだけど、それにすら攻撃機構付いててもおかしくないな”

”追従する浮遊機械が銃撃とかレーザーでサポートとかしたら、どこぞのアンドロイドゲームみたいだな”

”他にも何を自作して普段使いしているのか気になる”

”もしかしてその時計もフレイヤちゃんの自作?”


「時計ですか? これはリタが作ったものです。こうしてホログラムキーボードが浮き上がるようになっていますけど、実はこれ歯車で動くアナログ時計なんです。もらった時はどうやってデジタルとアナログを共生させたのか気になったものですね」


 今でも実は、どうやってデジタルとアナログをくっつけたのか分かっていない。

 時計作りは家事よりも得意だとリタ本人は言っており、事実フレイヤの両親もリタの時計の方がデザインと性能がいいため、元々持っていたものを使わなくなったほどだ。

 リタがメイドになる前まで住んでいた実家は、イギリスでは非常に有名な時計をオーダーメイドする工房を運営していて、一度その工房の時計を買った人からはもう二度とデジタルには戻れないと言わせるほどだった。


”メイドさんって、何でもできるんだあ(遠い目)”

”料理洗濯にマネージャー。そして時計作りまでできるとか、あとは何ができるんだろう”

”リタさん一人で色んな種類のお店出せそう”

”実はもうこっそり出しているとか”

”地味にあり得そうで草”


「流石にお店は出せないですけど、まあいずれは私達のお店を出せたらなーと───同接四万!?」


 話しながらちらりと同接を確認すると、開始前までは三万強くらいだったのに、いつの間にか四万を超えていた。そしてその数は数百から千単位で増加している。


”おめ!”

”おめえええええええええええええええええ”

”今何かしれっと凄いこと言っていたような気が……”

”昨日の今日だしね。ここまで注目浴びるのも当たり前か”

”すんごい勢いで同接増えて行ってて大草原”


「あの、配信始めたばかりの初心者にとってこの数は流石に緊張するのですが……」


 緊張のしすぎなのか、口の中が渇いているような感じがする。

 とりあえず渇きを潤すために水筒を取り出して、中に入っているミルクティーを飲む。


”いきなり水筒出てきて草”

”どっから出て来たんだ今!?”

”中身何が入っているの?”

”緊張しすぎて喉乾いたのかな”

”その水筒すら自作で、なんか仕込んでてもおれは驚かんぞ”

”もうフレイヤちゃんが持っているからって、何でも武装に見えてきちゃうwww”

”大体自分で作っている発言しちゃってるからねえ。実はその水筒めっちゃ硬くて鈍器になるって言っても信じる”

”中に入っている水分を超凝縮して弾丸として発射したらウケるwww”


「私のことを改造魔か何かだと思っていませんか? 流石にこれは普通の水筒です。ほら、ここに会社のロゴが付いているでしょう?」


 カメラに水筒を近付けて、企業のロゴを映す。

 デザインが可愛くてつい衝動買いしてしまったものだが、使ってみると結構使いやすいしたくさん入るし保温保冷してくれるので、夏は特に重宝する。


「ふう、それではそろそろ探索を開始しますね」


 そう言って水筒をしまい、地面に突き刺したランスを掴んで引き抜く。

 しまって行動したほうが狭い場所とか通りやすいのだが、それだと即座に対応できないので、こうして武器は常に出した状態で移動している。


 まずは目指すはダンジョン下層。上層中層だとモンスターがあまりにも弱いので、手ごたえがないし落とす核石も小さいのばかりなのだ。


”こんなでっかくてぶっといランスでどう戦うのか楽しみ”

”下層のモンスターでさえ相手にならなさそうな性能の武器持ってるから、上層中層だと歩みを止めることもできないだろうなあ”

”デカすぎて場所によっちゃ壁にぶつかって満足に振り回せなさそう”

”そこは何か対策考えてんじゃない?”

”そういう時こそ翼生やして突撃一掃じゃないか”

”もしそうだとしたらモンスターからしたら恐怖そのものやwww”


「本当に私のことを何だと思っているのですか。怪物か何かと思っていません?」


”だって、ねえ?”

”一等の中でも強いほうの御影……げふんげふん、ゴミをワンパンできるくらいだし”

”自覚がないと?”

”モンスターパレード一発一掃しておいてよく言えるねwww”

”武器が強いのは重々承知だけど、使っているのはフレイヤちゃんだし”

”化け物武器を持っている人もまた化け物なのだ”


 視聴者のコメントを見て、確かにそうだと否定できなくてちょっぴり悔しくなる。


「ぐぅるるるるぅ……」


 でもどうにかした視聴者が自分に抱いている印象を払拭せねばと考えていると、通路の向こう側から全身真っ赤な毛でおおわれて、血のように赤い涎を垂らしているブラッディウルフが姿を見せる。


「ブラッディウルフですか。確か、毛皮が分厚く攻撃が少し通りにくいんでしたよね。探索者初心者の内は苦戦する相手と聞きます。そういう相手は、一点に集中させれば結構簡単に倒せますよ。こんな感じに」


 初心者探索者が苦戦する、分厚い毛皮の防御をもつブラッディウルフ。しかもその涎は毒を持っていて、噛みつかれたら激しい眩暈に吐き気を催し、まともに立っていられなくなる。

 そんな初心者のトラウマモンスターの一つであるブラッディウルフを、疾風のように鋭い踏み込みと共に突き出されたランスにいともたやすく刺し貫かれ、体をぼろぼろと崩壊させる。


”ふぁーwwwww”

”分かってたけどワンパンwww”

”俺のトラウマが……”

”えぇ……(困惑)”

”解説されても、初心者にあの毛皮を一撃で突破する攻撃力はありませんwww”

”完璧な対処法だな。持っている武器が規格外すぎるせいで再現不可能な点を除いて”


 コメント欄が解説は解説だけど、初心者に一切優しくない解説をしたフレイヤに困惑する。

 そんな中、当然この一週間の中で一番人が集まっているダンジョン攻略配信で上手く動けるかと心配だったが、それが全くの杞憂に終わったことに安堵して、本格的な攻略を開始する。

お読みいただき、ありがとうございます。




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