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第1話 新人配信女子高生

「今日も配信を観に来てくださり、ありがとうございます! See you in the next stream! Bye Bye!」


 そう言って金髪碧眼の少女、フレイヤ・ロスヴァイセは行っていた配信を切る。

 フレイヤは普段は学校に通いながら、放課後はダンジョンを攻略する探索者として活動するついでに、配信者として活動している。


 ダンジョン探索者。それは数十年前に突如として世界中に現れた、怪物が跋扈するダンジョンと呼ばれるファンタジー要素満載な魔境を探索し、モンスターを倒したり鉱石やそこにしか自生していない植物を採取して換金することで生計を得る者の総称。

 探索者は人気の職業の一つで、多くの若者がそれに夢を見る。そしてフレイヤもまた、ダンジョンという魔境を命をかけて探索する探索者に憧れて、半年ほど前から活動を続けている。


 探索者としては半年活動しているが、配信者として活動を始めたのはつい一週間前のことだ。

 フレイヤは中学に上がる頃まではイギリスに住んでいたが、親の都合で急遽日本に移住することになり、その時に雇っていた同い年のメイドのリタ・レイフォードという少女も一緒についてきた。

 こうして配信者活動を始めたのは、そのメイドのリタが「せっかくダンジョンに潜っているのですから、配信も一緒にしてみたらいかがでしょうか」と提案してきたからだ。


 元々ダンジョン攻略配信者というものに興味を持っていたし、モンスターが大量にいて怪物地獄と評される下層まで一人で潜ることができるし、戦い方もダンジョンに潜る時の格好も配信映えするという後押しを得て、普段から動画視聴に使っているアカウントとは別の配信用のものを作り、自作の浮遊カメラを持って一週間前から配信を始めた。


 まだできたばかりのアカウントで、軍服のようなダンジョン攻略用の服、そして身の丈ほどの大きなランスを持った金髪碧眼の日本語ペラペライギリス人女子高生。

 始めたばかりの初心者ブーストが多少かかってくれていることと、それらがいい具合に噛み合っているのか、配信初日から十人前後が見に来てくれる。

 有名配信者と比べれば少ないが、意外と自分でやっているとその十人でもものすごく嬉しいものだ。


「んー! 収益化にはまだまだ遠いけど、正直そこはそこまで重要じゃないんですよね」


 持っているランスを地面に突き刺し、思い切り伸びをしてから近くにある手頃な岩に腰を掛けて、足を組んで体を少し休める。

 フレイヤが使っている配信アプリは、アメリカに本社を置く会社が作った動画共有プラットフォームのアワーチューブというアプリで、世界で最もアクティブユーザーが多い。


 ダンジョン攻略配信者も今やレッドオーシャンといえるほどに数が多く、日々新しい配信者が生まれては同じ数だけ埋もれていく。

 フレイヤもまたその一人ではあるが、視聴者が十人も来てくれているだけかなりマシなほうだろう。

 一応配信で十人来るまでが大変で、それを超えたら伸びやすくなるというのはよく聞くが、まだ配信を始めて一週間とピカピカの新人なので爆発するように伸びることはない。


「それにしても、リスナーを一万人も集めている配信者はどうやったのでしょうか。やはり地道にこつこつ配信を続けることなのでしょうか」


 配信用とは違うスマホを取り出して、ダンジョン配信をしている配信者を人気順に表示させる。

 一番上に映っているのは、同時接続者数一万六千人越えと、フレイヤの千六百倍の数字を叩き出している男性配信者だ。

 何やらやたらと低評価が多いようだが、それでもここまで人が集まるのははっきり言って羨ましい。


「リスナーがここまで多いと、すーぱーちゃっと? もたくさん投げられるのでしょうね。ちょっと羨ましいです」


 前に着物姿に薙刀一本でダンジョンをソロで攻略している同い年の女の子、というか親の繋がりで何度か大きなパーティーで会って面識がある雷電美琴の配信を観た時に、ことあるごとに配信における投げ銭システムのスーパーチャットが投げられて、その額の多さに慌てふためくのを観たことがある。

 特にすごかったのはダンジョン深層上域のボスをソロで倒した時に、投げられるお金が全て高額であることを示す赤色だったことだ。

 流石にあそこまでお金でぶん殴られるほどはいらないが、ああやって視聴者から投げ銭してもらえるのはいいなと思う。


 チャンネルは始めたばかりということもあって二十七人しかいないし、切り抜いた動画の再生数も一番いいので百かそこらだったはずだ。

 収益化に必要なのは登録者千五百人だし、動画の総再生時間も百五十時間とかなりハードルが高めだ。


 一応それがメインではないし、収益化されなくとも探索者ギルドが年に一度行っている未成年でもダンジョン内でしか得られない素材の一つである核石という、モンスターを倒した時に得られる宝石のような石を換金できるようになる試験に受かっているため、調子がいい時は日給で五万から六万に行く時がある。

 前に一度、一日で十万円分の核石を得たことがあったが、やりすぎると扶養から外れるし確定申告とかいう面倒な手続きをしなければいけなくなるため、そこからはうまくセーブするようになった。


「さて、休憩も十分ですね。帰りますか」


 すっと立ち上がって突き刺してあるランスを持って、ダンジョンの入り口に向かって歩き出す。

 現在フレイヤは下層最深域と、下層の中では一番深く一番危険なモンスターが勢揃いしている危険エリアにいる。

 始めたばかりのひよっこで配信者としての才能があるかどうかはまだ分からないが、探索者としては間違いなくあるだろう。

 ここまで来れているのはどちらかというと、持っている武器や着ている服、そして家族とリタ以外に話していない一つの秘密があることが大きいかもしれないが、もちろんフレイヤだって日々努力して強くなっている。


 最近両親は忙しいので家に帰ってこれていないが、家に帰ればリタがいる。彼女の作る料理はどれも絶品で、今日の夕飯な何だろうかと楽しみになって足取りが自然と軽くなる。

 少しお腹も空いているし、いつもより三十分長く配信した上に下層最深域まで来ているので戻るまで時間がかかる。なので道中で遭遇するモンスターは、持っているランスでなぎ倒していく。


 そうして歩くことしばらく。下層中域を抜けて上域まで上がり中層への道を歩いている時だった。


「それじゃあ、今からこの撒き餌を使ってモンスター呼び出して、俺様一人で全滅させてやっからなー。俺様が真の一等探索者だってことを証明してやんよ」


 にやにやと笑っているのが想像しやすい、まるで人を小馬鹿にしているような声が聞こえてきた。

お読みいただき、ありがとうございます。




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