4階層への階段
モーニングスターブックスより 1巻が発売中です。
よろしくお願いします。
遠征による心の傷を癒すためにほぼ1週間ホームダンジョンの探索を休んでしまった。
他のメンバーも理解してくれて俺が回復するまで温かく見守ってくれた。
完全に回復したかと言われれば微妙なところだけど流石にこれ以上はまずい。
『ゲルセニウムバイト』
「ナイス野本さん!」
眼前の亀に迫り水月の刃を首の根元へと突き刺してそのまま刎ねる。
「お兄ちゃんやる~」
「このくらいはな」
久しぶりのダンジョンだけど、コンディションに反していつもよりも調子がいい。
その理由は自分でもわかっている。
同じ3階層のモンスターだけど先週のマッパに比べると怖くない。
俺の技術が上がったとかそういうのじゃない。
怖さが薄らいだせいでモンスターへと踏み込めるようになった。
これが良い事なのかどうか判断し辛いところだけど戦いがスムーズになった事だけは確かだ。
「あれって……」
「4階層ね」
3階層で探索を続け、ようやくここまで来た。
4階層への階段。
階段を降りればそこは4階層だ。
ここから先へ行くかどうかが問題だ。
これまでは、ある程度レベルが上がるのを待ってから次の階層へと臨んでいた。
現状3階層ではどうにかやれているけど余裕がある状況というわけではない。
もう少し3階層で留まるのもアリだけど、思い切って4階層に降りてしまえば案外スルッといけてしまうこともあるかもしれない。
「どうしようか」
「わたしは御門くんが決めたことなら」
「そうね、御門が決めて」
「お兄ちゃんが決めなきゃ」
「先輩」
ある種メンバーから信頼されているという事なので嬉しい反面、丸投げされている感もあり責任は大きい。
どうするべきか……。
みんなの安全の事もあるし悩みどころだ。
「降りてみようか」
俺は先へと進むことを選択した。
理由はいくつかある。
だけど先週の強制依頼の影響が大きい。
距離があるとはいえ隣接する都市のダンジョンが活性化しているのであれば明日は我が身。
このダンジョンも活性化する危険性をはらんでいるということだ。
俺達がダンジョンを踏破できるとは思わないけど、少しでもその可能性を下げるためにモンスターの数を減らしつつレベルアップを目指す。
今のままでは、まだ全然足りない。
それには多く経験値を稼げるであろう先の階層へ行くのがいい気がする。
「まあ、ダメならすぐ戻るのもアリだしね」
英美里の同意に他のメンバーもうなずいている。
階段の前で少しの時間だけ休憩して万全の状態で4階層への階段をそのまま降りていくことにする。