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モーニングスターブックス
俺はこのモンスター溢れる世界をスキル『ガチャ』で生き抜く 最初に出たのは美味しいパンでした
は今週金曜日 12/20発売です。
電子受付も始まりました。
買って〜
事務所への報告を終えようやく今回のノルマを終える事が出来た。
山田さんは海江田さんの車で、俺達は来た時と同じくバスと電車で帰る事にした。
みんな疲れからか、会話も少なめでいつの間にか眠ってしまっていた。
どうにか目を覚まし乗り過ごすことは無かったけど、比較的体力のある俺でこれなのだから女性陣はもっと疲れていたことだろう。
重いからだを動かしどうにか家にたどり着くことが出来た。
家へと戻るといつものように向日葵の元気な声が。
疲れ沈んだ心が陽に照らされる。
「ただいま」
「おにいちゃ~ん、おかえり。どうだった? わたしたちのと何か違うの? なにかいいことあったりした?」
「あぁ、いや」
「ん? おにいちゃんどうかしたの? なんか疲れてない?」
「まあ、そうだな」
「え~っ、わたしだけ行けなかったんだからおしえてよ~」
向日葵の気持ちはわかる。
パーティメンバーの自分以外が道のダンジョンへと潜って来たんだから、話を聞きたいのは当たり前だ。
「ちょっと座っていいか?」
「うん、本当にどうかしたの? そういえばちょっとやつれてない? そんなにハードだったの?」
「まあ、ハードといえばハードだった」
「もしかしてドラゴンとか出た?」
「いや、ドラゴンはないだろ。3階層迄だから」
「じゃあ、どうしたの?」
「う~ん、なんていうか18禁な感じだった」
「18禁? それってお兄ちゃんもダメじゃない」
「まあ、だめといえばダメだった」
「えっ、それってエッチなダンジョンって事?」
向日葵が興味津々という表情で聞いて来る。
まあ、興味があるお年頃なのはわかる。
わかるけど、向日葵そうじゃないんだ。
「向日葵、あのダンジョンには絶対に行っちゃだめだ。大人になるまで、いや大人になっても行っちゃだめだ」
「どういう意味? 18禁なのに大人もダメなの?」
「ああ、あそこはダメだ。マッパ地獄だ」
「マッパ地獄? 何それ」
「裸のモンスターが襲って来る」
「えっ⁉ それって」
「ああ、完全マッパだ」
「え~っ、でもモンスターの身体って」
「いろいろ違うけど、違わないところもあるんだ」
「…………」
「あれは、ダメだ」
「でも、お兄ちゃんがなんで? 英美里さんとかならわかるけど」
「メスもいるんだ」
「メス? それがどうかしたの? 役得とは言わないかもしれないけど何か問題があるの?」
「問題しかない」
俺は中学生の向日葵に何の話をしているのだろう。
だけどここはしっかりと教育しておかないと怖いもの見たさでということもあり得るし。
「おそらくは発情してる。オスもメスも。あれは立ち入ってはいけない場所だ。向日葵が入ったら大変なことになる。トラウマどころじゃない。あれはヤバイ」
「お兄ちゃんが何を言ってるのか、半分くらいしかわからいけどヤバいのは伝わってくるね」
「ああ、ミノタウロスに迫る恐怖だった」
「そんなに⁉」
「ああ、そんなにだ」
「そうなんだ。あとで英美里さん達に連絡してみよ~」
ダメだ。
これほど真剣に伝えているのに半分しか伝わってないからか、そこまでビビってない。
まあ、あとは英美里達にまかせればしっかり伝えてくれるだろう。
今日のありのままを。
あの魔境を。
恐怖を。
地獄を。