男たち
恐怖の3階層を戻り、2階層に上がった瞬間の安心感といえばいいのか何とも言えない解放感。
ダンジョンの2階層にいながら安心というのは、おかしいのかもしれないが、いやおかしいんだろう。
「うおおおおおおおお~」
「海江田さん⁉」
「いや、すまん。あそこを抜けれたと思ったら、ついな」
「気持ちはわかります」
やっぱり海江田さんもおかしくなってる。
「二人とも、こういう気を抜いた時こそ危ないんだからね。まだここはダンジョンの中だから」
「はい」
「すまん、浮かれてしまったようだ」
英美里の言葉に気を引き締めなおすが、そこからの俺達は結構強かったんじゃないかと思う。
殻を破ったというのが正しいかはわからないけど、通常のモンスターの動きが良く見える。
心が摩耗し身体も疲れてはいるけど、普通のモンスターへの恐怖心がいつもより薄らぎ、しっかりと見れているからか、モンスターの動きが、さっきまでよりゆっくりに感じる。
僅かな違いだけど、この違いはかなり大きく、それほど苦労することく2階層のモンスターを倒しながら戻ることが出来た。
途中で、後続隊と思しきセイバー達と遭遇した。
「戻りですか? この先はどうです? どこまで行ってきたんですか?」
「一応3階層迄はいってきました」
「3階層やっぱり行った方がいいですよね。3階層も2階層とそう変わらない感じですか?」
「あ~2階層とはちょっと違う感じです」
「そうなんですか? ここがそれほど変わり映えしないので、楽しみです」
「いや~あんまり楽しくはないかもしれません」
「へ~っ、もしかして3階層に強いモンスターが出たりするんですか?」
「まあ、出ると言えば出ます」
「よければ、どんなモンスターか聞いていいですか」
「ゴブリン、おそらくはホブゴブリンです」
「あ~ホブゴブリンか。何度か戦ったことあるんですよね」
ホブゴブリンと答えると探索者は明らかに興味を失ったような表情を見せた。
「いや、本当に気を付けた方がいいですよ」
「大丈夫です。問題ありません。ホブゴブリンなら何も怖がることは無いですから。情報ありがとうございました。それじゃあ、先を急ぐんで」
「あっ……」
そう言うと、セイバーの一団は足早にその場から去ってしまった。
彼らは全員男だった。
本来ならメスマッパの事を伝えるべきだったけど、伝える間もなく去ってしまった。
「御門、さっきのは不可抗力。こっちの言うこと聞かなかったのはあの人達だし」
「ああ、そうだな」
そう、いまのは不可抗力だ。
だけど、彼らは全員男だった。