魂に焼き付いたもの
1ヶ月後の12/20
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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「もう、無理。むりだあああああああ~!」
山田さんの心の叫びがこだまする。
そんな大声出してモンスターを呼び寄せたらどうするんですかとは言えない。
なぜなら俺も全く同じ気持ちだから。
俺が舞歌に癒してもらっている間も2人は最後のメスマッパと死闘を繰り返してくれていた。
当然2人はスキルを解禁し死力を尽くしてメスマッパを倒す事に成功した。
ただし無傷というわけにはいかなかった。
2人の服の一部が破れ、そして彼らにはべっとりとメスマッパのよだれが付着していた。
肩で息をする2人の姿は勝利者のものとは到底思えない状態だった。
「終わった。いや、冗談抜きで危なかった。なんなんだこのダンジョン。こんなダンジョン有りなのか。いや、ナシだろう。なんで男の俺が襲われることがあるんだ。おかしいだろう。いやもうわけがわからん」
海江田さんが思いのたけを一気に口にする。
「皆さん、俺はもう無理っす。限界っす。ここまでよく頑張ったっす。これ以上ここにいたら妊娠させられます。早く帰りましょう。これ以上は無理っす。マジ無理」
山田さんももう限界のようだ。
口にしている内容もおかしいので、外傷らしい外傷はないけど精神的ダメージは計り知れないのだろう。
「俺触られたっす。ううううううっ、もうお嫁にいけない」
「大丈夫だ。大丈夫。俺もやられた」
「海江田さ~ん」
2人共ダメージ極大だ。
俺も舞歌の『ヒーリング』の効果で回復してもらったとはいえ、もうあれと戦う気力が残っていない。
「一応3階層まで来てモンスターを倒す事にも成功したし、義務は果たした。今回はここまでで戻りましょうか」
「能瀬君、一刻も早く上の階へ戻ろう」
「魔石がドロップしてるみたいなので回収したらいきましょうか」
「そんなのいらないから早く戻るべきっす。こうしてる間にも奴らが来てるかもしれないっす」
2人の気持ちは痛いほどわかるけど拾うのにそれほど時間はかからないので、2人を帰路につかせると同時に地面に落ちている魔石を拾っておいた。
メスマッパの魔石は特に変わったところはなさそうだ。
モンスターが特殊でも魔石にその影響は出ていないようだ。
先行する2人は、ほぼ小走りのような状態なので女性陣には、歩くペースが少し早すぎたけど3人も今回ばかりは何も言ってこなかった。
女性陣も2人の死闘はしっかりと目に焼き付けていたので、それも当然かもしれない。
「後ろは大丈夫っすか?」
「ええ、何もいませんよ」
「まだか? まだなのか?」
「海江田さん、もう少しだと思います」
「そうか、そうだな」