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月にらくがき

 そろそろお休みの時間。

 ベッドに入ろうとしたとき、僕はふと月を見上げた。

 今夜は半月だった。


 しかしなぜか、月の暗くて見えない部分に数カ所だけ光っている点があった。

 それはただの星ではなかった。

 それから日に日に月が欠けていく度、謎の点々は明るくなっていき数も増えた。


 三日月の夜、望遠鏡でよく見ると、点一つ一つそれぞれ違う色で、何か巨大な絵を形作っているようだった。

 新月の夜、ついに光る絵が完成した。


 色とりどりな星空のようにも、色鮮やかな宝石箱のようにも、光を放つ花畑のようにも、空に映るサンゴの海のようにもとれる、幻想的で美しい絵だった。


 しかし、なぜ突然月にきらめく模様が現れたのだろうか。

 もしかしたら月には宇宙人がいて、宇宙人が月に模様を描いたのかも知れない。


 そう思った僕は早速、小さなロケットに乗り、月へ行った。

 月へたどりつくと、赤、青、緑、と多様な色のランタンが辺り一面無数に置かれていた。


 ランタンのあまりのまぶしさとおびただしさに驚いていると、いきなり怪物のようなものが姿を現した。

 怪物は大きな体に恐ろしい形相をしていた。


「ごめんなさい、いたずらをしたわけではありません。どうか許してください」


 今にでも襲いかかってきそうな見た目の迫力さに、僕は慌てて何度も謝った。

 一方の、鬼のように醜い怪物はというと、怒っていたというよりはびっくりした様子だった。


 何とか落ち着きを取り戻した僕は、その怪物こそが月にらくがきをした宇宙人なのではないかと思い、質問をした。


 すると、その通りだ、と怪物は肯定した。

 その上で、絵は何万何億ものランタンだけを組み合わせて作ったと明かした。


 怪物によると実は、宇宙の数多くの惑星で"宇宙芸術"という文化が古くから親しまれていたという。


 "宇宙芸術"とは、様々な画材もしくは素材を使用して天体に絵や文字を描く芸術分野をいい、虹色にきらめく月のらくがきがまさに一例である。


 その宇宙芸術への道を志望していた怪物は、見習い修行をしに月へやって来たのである。


 月での出会いを通し仲良くなった二人はしばらく会話を楽しんだ。


 そして、夜明け直前になり僕は地上へ帰らなければならなくなった。

別れ際、怪物に言った。


「良かったら、僕の住んでいる星にも遊びに来てくれませんか」


 すると、怪物は寂しそうな表情に。


「本当なら遊びに行ってみたい、でもいろんな事情があるからすごく難しいかも知れない」


 怪物は返事をしたあと、僕に約束を告げた。


「今までの話は全部秘密だ。もちろん、私と会ったことも周りには絶対言うな」


 僕はうなずき、別れのあいさつを交わした。元の星へ戻った。


 同じ頃、地上では、虹色の絵が朝陽の中に包まれ消えつつあった。



おわり

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