少女は自分のお皿とスプーンを手に入れた!
私がいじけている間にくぅちゃんはさっさと食事を済ませてしまった。
空になった鍋を熱している。
「何をしているの?」
「ああ、これか。鍋の汚れを燃やしてしまっているんだ。ブラシで燃えかすを払えば綺麗になる。ただし、メーナにはまだ危ないからやっちゃダメだ。」
「でも」
「まだメーナは魔力の使い方を覚えていないから自衛が出来ない。それに、まだ皮膚が弱いから万が一火傷をしてしまった時に病気になりやすい。」
「…わかった。ごめんなさい。」
「ふふ、よく出来ました。」
こやつ…!さっきから子供扱いしすぎだ!!
「私一応、大人だったときの記憶、あるんだけど」
「でも今のメーナはまだ7才なんだから、大人に甘えて良いんだよ」
それから食器に灰をかけて水で流して洗った。
水は水場がそばにない場合と安全が確保出来ない時は大切に使わなければならないが食器を清潔に保つ事もお腹を壊さない為にも重要だと教わった。くぅちゃんはとてもニコニコと笑顔でとても、とても鬱陶しかった。悪い気はしなかったけど。
「そうそう、そこも削って。」
食器作りは手頃な切り株から削り出して作る、近くの村の特産品なのだそうだ。
手頃な切り株の断面にナイフで印をつけて矢尻で削って行く。スプーンの方は作らせてもらった。深皿のほうはくぅちゃんがあっという間に作った。
それからまわりを火で炙りブラシで磨く作業を繰り返す。何回か繰り返していくうちに表面が滑らかになっていく。
私がお皿とスプーンを磨いている間にくぅちゃんは野うさぎと山菜を採ってきていた。いつの間に。
表面が滑らかになった食器は灰に包んで埋めて上で火を焚く。そうする事で丈夫になるらしい。最後に油を染み込ませた布で磨いて完成である。
「どこでそんな事覚えるの?」
「ギルドがよく作業手伝いのクエストを出しているからな。僕の使っているやつはそこで記念に貰ったんだ。」
「そんな事までクエストでやってるんだ」
焚いている火で山菜と野ウサギのスープを作る。
私が掘り出した食器を磨いているうちにくぅちゃんは食事の準備を終えてしまっていた。
「…いつの間に」
「お、出来たか。」
「うん。もう使える?」
意外にも食器はすぐに使えた。出来たお皿にスープをよそってもらう。自分の作ったものが使える事ににやけてしまう。
食事を終え、自分で手入れしたスプーンを眺める。
「んふふ」
それからどうやら、いつのまにか眠ってしまったらしい。