少女は少しだけむきになってみた。
飽きるまで朝日を眺めた後は食事をした。
くぅちゃんは人型をとると準備を始める。姿は適当に冒険者を真似たらしい。髪と目の色だけ変えられないようだった。
携帯型の鍋で長期保存用のパンと干し肉をふやかしてパン粥にした。それと、森で採った野いちごのような果物。
くぅちゃんがテキパキ準備する横で何も出来ずに落ち込む。
準備をしながらくぅちゃんは私に軽く説明する。
かまどの組み方、食べられる果物、食事の為の道具。
火の起こし方、長期保存食材の手入れと痛んでないかの確認方法。
ちゃんと覚えないと迷惑だと必死になって覚える。この世界では紙は高級品なのだろう。元々いた村でも村長が木を薄く割ったものを使っていたのを思い出す。書けないのは不便だけど覚えるしかない。
あまりにも必死に覚えようとしていたのだろう。
くぅちゃんは手を止めると振り返って私の頭を撫でる。
差し出された大きな手に体が竦んだが撫でられるとホッとした。
「何度だって教えるからそこまで詰めて覚えなくていい。
次は一緒に準備しよう。」
くぅちゃんはよく煮込んだパン粥を食器に取り分け、私が火傷をしないようによく冷ましてから差し出す。とても過保護だ。食器は1セット分しかないので食べ終わったら作る事になった。食事は順番に取る事になった。私が食事をしている間、くぅちゃんは私の事をジィッと眺める。
くぅちゃんを待たせているからとはやく食べようとすると咽せるからと注意される。
咽せてしまうと即座に背中をさすられる。
多分ちゃんと咀嚼出来ているかとか、変な飲み込み方していないかとか絶対見られている。少しでも急いで食べようとすると穏やかに注意される。それはもう何度も。
この世界は7歳児に対してそうなのだろうか?
いや、そんな訳ない。これは絶対くぅちゃんが過保護なだけだ。
「メーナはもう7才ご飯ぐらい自分で食べれる。」
咄嗟に口をついて出た言葉はとても幼稚で羞恥と心配して貰ってるだけなのにという罪悪感が込み上げる。
「…あっ、えっと」
くぅちゃんはへにゃりと笑うと言った。
「そうだな、偉いな。」
「うぐっ」
込み上げる羞恥心。だけど純粋に褒められて嬉しいと思う気持ちもあって。そして1番厄介なのが、
全部、全部、こいつに伝わっている……っ
それはもう恥ずかしくて恥ずかしくて食事の間ずっと私は涙目だった。