表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

伝説はそれに心を奪われる


ただ、生きたい。その鮮烈な願いは突き刺すように僕の心を燃やした。


物心がついてから、普通への憧れは僕の心をジリジリと痛めつけるように炙り続けた。

僕は生まれてから一度たりとも普通では無かった。

生まれ持った異常な量の魔力の所為で決まった歳から旅をする事が義務付けられていた。

大人達は眉をひそめて僕を可哀想と言った。同じ歳の子達は最初は僕を羨ましいと言ったが別れが近づくにつれて大人達と同じ事を言うようになった。

それでも、僕は生まれてから一度たりとも不幸ではなかった。里を出るまでは。

里ではそれはもう大切に育てられた。里で生きることのできる手段である「器」を総出で探してくれた。僕が旅をするならば同じ世で生きようと言ってくれた兄がいた。時間制限付きのなかでも厳しく育ててくれた両親がいた。

家族はみんな僕の前では涙を見せなかった。

僕が旅立つ最後の最後まで。


とても甘えたことを言っても良いのなら里のみんなと同じように、年頃になったら里でお嫁さんを見つけて、穏やかに、穏やかに里で歳を重ねて行きたかった。生まれた場所を離れたく無かった。それが里の中では普通で、それが里の中で1番の幸せの定義だった。ただ、ただ周りのみんなと同じ幸せが欲しかった。


里をたってからは地獄だった。僕は誰に覚えていて貰っているのだろう?里のみんなは、家族は、まだ僕を覚えていてくれているのだろうか?そもそも膨大な量の魔力の所為で寿命すら違う。みんなはまだ生きているのだろうか?

最初の100年は怖くて怖くて、毎年暦を確認した。持っている魔力の根本をさまざまな地に分けなければ里に帰ることも死ぬことも出来ない。

そんな事をしてしまったら地のバランスを崩して周りを不幸にしてしまう。早く、早く。1番目の兄さまは大使として人の王と盟約を結び、人の世で生きる事が決まった。父の死と母の死は1番目の兄さまから教えられて知った。


その兄も寿命はあと半分を切ってしまった。

僕はあとどれくらい生きればいい?


そんな時だった。そのか弱くも眩しい生き物に出会ったのは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ