少女は出会った。
この世界を眺めてみたいとか言ったけど出来ないかもしれない。たくさんの美味しいものを食べたいとか思ったのはフラグだったのかもしれない。
目の前にはクマっぽい何か。そいつが吠えたかと思ったら石が浮き上がって飛んできた。
なんてファンタジー。こちらは魔力無し幼気な7才児。対してあちらは猛獣が銃の扱いを覚えたようなもの。能力なんて無いから英雄章なんて始まらない。始まるとしたら某短時間料理番組。もちろん今日の講師はクマさんです★
「いや、まだ私仕留められてないし」
助かる方法を必死に考えながら後ずさってた時だった。不意に青白い炎が視界に入ったと思ったら器用にクマだけを燃やしていき、白い小さな犬っぽい何かに吸い込まれ、そいつはゲップをしやがった。
なんてファンタジー。栄養とはなんだ。クマさんは絶対的強者じゃなかったんだね。白い犬っぽい何かはゆっくりとこちらに視線を向けた。
「私の事も食べるの?」
木漏れ日が降り注ぎ白いそれはキラキラと銀色に輝く。見惚れてしまいそうなそれだがやつはクマより強い。
「食べるなら頸動脈をやってからにしてください!!さすがに生きたまま燃やされるのは苦しいとおもうから、お、お願いします!!」
「君を助けたのは迷惑だったか?」白いやつはきいてきた。話せたんですね。「とっても助かったけど、でもなんで?」それは私の疑問に少し考え込み答えた。
「何となくだが、強いて言うなら我が里に時々やってきた種族に似てるからかな。助けた方が良かろう? その、やってきた奴に比べて君はとてもひんそう、いや、その、質素だが。」
それはごまかすように咳払いをすると聞いてきた。
「それより、なぜ魔力で精神も肉体も守らない?記憶や感情を覗かれやすいと不便だし、怪我をしたら痛いだろうに。」
なんてファンタジー。魔力で守らないと記憶も覗かれるんですね。人と関わるの無理かも…
「あ、いや、その保有魔力量の差によるし、意識しなければそこまでわからないからから滅多に無いが」
「魔力が、無いんです。」
「は?」
「魔力が無いから気味悪がられて捨てられたんです。」
「よくここまで生きてこられたな。太陽の一族からしたら慈しまれるべき器だが」それは独り言のようにそう言った。
「まあ、お陰様で。太陽の…?」
「ああ、太陽の一族とは私が育った里の一族だ。もっとも、私は他と毛並みが違って月の子と呼ばれていたから旅に出なくてはならなかったが。」
それはそう言うと少し項垂れたように見えたが、すぐに表情を直して言った。
「その、提案なんだが、少しの間、私と一緒に行動しないか?」そしてそれは私のぽかんとした表情を見ると少し焦ったように続けた。
「確かに、私には貴女の心がとてもよく伝わってしまうが、私と一緒に行動すればそれ以外の人々にはわからなくなる。私の魔力はとても多いんだ。魔力を分ける事も出来る。わければ貴女が一時的に魔法を使えるようになる。私は無駄にある魔力のせいで1箇所にとどまれないから貴女の事を言いふらす仲間もいない。」