少女は選んだ。
前世の記憶は7才の頃から始まる。
前世の祖父は私の太腿をとても好んだ。
小学校から帰った後に呼びつけられては何度もさすられた。
両親は目を逸らした。いけない事だと理解した。助けてくれる人がいないのも理解した。家族の中での私の呼び名が娼婦になった。祖父には優遇されるようになった。
私は自分を売る先を7才にして初めて選んだ
祖父の側に居れば他の家族に暴力は振るわれなかった。お小遣いもくれた。でもとても気持ち悪かった。自分から選んだ事なのに。早く大人になる事を願って考える事を無理矢理やめた。諦める事、感情を表さない事、媚を売る事は自分の身を守るために必要だった。
大人になったらすべてが輝いて見えた。
体を売らなくても生活する術を得た。理不尽な暴力は訴えてもいい事を知った。負の感情も適切に表現していい事を知った。あれだけ軽蔑していた負の感情を表す人たちもなんだか素直な気がして輝いて見えた。
大人になってから苦労した。
普通の喋り方がわからなかった。普通の感情表現がわからなかった。普通の将来の夢がわからなかった。他人に期待するのが難しかった。わがままってどうやって言うんだろう?
何を考えてるか分からないと気味悪がられた。深い仲になる人は少なかった。友達とか、恋人とか。
とにかく普通になりたかった。
自分は不幸なんかじゃない、今とっても幸せなんだと言い張りたかった。奇跡的に出来た恋人に対して期待よりも諦めが勝った時、自分の中にある諦めに対して絶望し、
私は死を選んだ。
さて、今世の私も今、絶望しているらしい。
昨日は7才の誕生月の子供に対して行われる村の魔力測定と戸籍登録の日だったらしい。そして、魔力がある事が当たり前の世界で私は1人魔力が無かったらしい。前世では魔力がない事が当たり前だったっつーの。
からの、気味悪がられて森にリリース、捨てられた訳だ。
記憶無しの私は絶望したらしいが、どこが絶望だ、自由と若さは武器だ。何をしても許される。前世は子供の扶養義務、権利とやらで15年も無駄にしたが今の私は7才になったばかり。境遇はハードモードだけどこれから人との関わり方を学んで、たくさんの人と関わって、たくさんの美しい景色に出会って、たくさんの美味しいものを食べて
そうやってこの世界を眺めてみたい。