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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第6章 第1部最終章 別れ
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第69話 持ち込まれた難題(1)

 竜騎士を増やしたいけどお金が無い、北の大公は無茶を行って来る、挙句に国王からも。

 イガジャ男爵領は難題が山積だけど、どこかのんびりとした雰囲気がただよっています。

 春の訪れは、人々を外へと誘う。


 此処イガジャ邸でも庭へテーブルを出し、気の置けない仲間同士和気相合とおしゃべりを楽しんでいる。

 何時もの男爵邸で何時ものお茶の時間だ、マーヤも4歳に成りアリスからお茶会の作法を習っている。

 その一角でラーファはイガジャ男爵様からこの所何度か話し合った問題を話し合っていた。


 男爵様は少し上気した顔で熱心にラーファに聞いて来る。

 「造成工事はどのくらいできましたかな?」


 「まだまだ土地の基礎工事の段階ですから全体の1割も出来ていませんよ」

 答えは前回と同じ。


 現在イガジャ邸の南側の垂直な崖に、魔女の城郭から続く大きな城郭を作る工事を行っている。

 新たな城郭は竜騎士用の関連施設を建てる予定だ。


 イガジャ男爵様は竜騎士の活躍を受けて大々的に育成をする事にした。

 そこで目を付けたのが。イガジャ邸の裏(南側)で切り立った崖に成って居る場所に土魔術で城郭を造成し、其処を竜騎士養成所にしようと言う壮大な計画だ。


 男爵様が打ち上げた時は、竜騎士養成所のみだったが、おばば様やダンガー隊長にバンドル家宰が加わりイガジャ領の若者が学ぶ学園として整備する事へと変わって行った。


 でも先立つのはお金、イガジャ領には今対応しなければならない案件が目白押しなのだ。

 ちょっと上げてみると、腹張り病対策の生石灰の配布、肺病患者隔離棟建設、領内道路の整備、他にも領内の経済が活発になりそれに伴う設備投資が一杯あるし、竜騎士増員で領兵の増員も決まったのでその対処もある。


 オウミ国内の政治にも変化が在った、イガジャ領は今他の貴族から注目の的なのだ。


 北の大公様から飛竜を飼うのなら、大公領への脅威になるか調べさせろと言ってきている。

 大公はより親(直接の上司)でもあるので無碍には出来無いが、下手に許可して飛竜に手を出されると困った事に成る。


 問題をオウミ国王陛下へお願いして陛下の裁定待ちの状態だ。

 陛下にお願いした件で陛下からイガジャ男爵へどんな見返りを求められるのか心配でもある。


 他にも国内外から送り込まれたと思しき商人や護衛と称する怪しい者共が増えている。

 それだけでは無い、オウミ国内の貴族からはイガジャ男爵へも様々な話が持ち込まれている。

 アリスにはこの所急に求婚の申し込みが増えたし、レイにも婚姻を結びたいと申し込みが殺到している。


 新しい城郭を作っている場合では正直無いのだ。


 しかし、カカリ村の乙名たちは竜騎士が開いた新しい可能性に、心惹かれ此の城郭作成にのめり込んでいる。


 結局ラーファが此の新しい城郭の土台部分を作る事を引き受けて土木工事を始めたのだ。

 ラーファと隠れてマーヤは土魔術を大規模に行使して近隣の山から土や石を移動してきて新しい城郭の土台を作っている。


 ラーファがこの土木工事を請け負いほとんど一日中土地の造成に精を出しているのは、イガジャ領の変化が影響している。


 魔女の城郭やカカリ村内で何度も危険察知が敵対的な赤く染まった存在を感知したからだ。

 今では魔女としての診療を止め、集落へ行く事もイザベラ達に変わって貰っている。

 そろそろ此処も安全では無くなってきたのかもしれない。


 ラーファは考え事を止め、イガジャ男爵様に思い切って別れを告げる決心をした。


 「今後飛竜の数を増やしていくのに合わせて竜騎士を増やしたいと希望しているのじゃが、ラーファ様の見込みは何時位になりそうかの?」

 この前も同じことを聞いてきた、この所イガジャ男爵様からの相談は竜騎士関係の事ばかりだ。

 ひょっとしてイガジャ男爵様はラーファが別れを告げる事を察して恐れているのかもしれない。


 「そうですねぇ、飛竜は10才位で成竜に成ると聞いていますから、番を作るにしても後6年は先ですね」

 ラーファの予想はイガジャ男爵様には長すぎるようです。


 「そうか、残念じゃよ、せめて飛竜の数を10頭まで増やしたいんじゃ、それに合わせて竜騎士も10名は増やしたいが領兵からの期待が強くての、竜騎士学園に入りたいと希望者が多くてかなわん。」


 「竜騎士学園ですか?」

 もう名前が付いたのですね、初めて聞きました。

 今は飛竜舎での竜騎士養成所位の気持ちでしたから学園とは規模が違い過ぎて違和感が在りますね。


 「わっはっは、領兵がそう言っているんじゃ、彼らにとってあこがれの職業なんじゃよ。」

 笑いながら竜騎士の構想について話してくれました。

 「わしゃの、飛竜を10頭と魔女用の飛竜を5頭の合計15頭で考えとるんじゃ。」


 「15頭も成竜を抱えると年間の費用が大変な事に成りますよ、今でも食費だけでも羊を1日に2匹食べていますし、これが成竜に成ったら1頭当たりの食費が年間金貨20枚ぐらいかかりますよ」


 「竜騎士団の維持費がどのくらい掛かるか分かりませんが、飛竜の食費だけでも15頭で金貨300枚ぐらい必要ですよ」


 その金額を聞いたイガジャ男爵様は、顔をしかめて悩んでいるようです。

 「人数と経費から考えると年間金貨2000枚は考えなくてはならんじゃろうな。」

 「ラーファ様からお借りしている金額が3年で消えて行くぐらいとは、皆と相談して収入を増やす事を検討してみますじゃ。」


 イガジャ男爵さまがラーファから貸りていると言っているお金は、ラーファからしたら領内の医療体制を整えるための投資と思っている。

 ラーファとしては、ダキエ金貨を換金した金貨6000枚の有効活用としか思っていない。


 ラーファは腹張り病や肺病への十分な実績が出てきているので投資した見返りは在ったと思っている。

 「男爵様、領内でラーファがやりたい事へ投資したのです、決してお貸しした物ではありません、ですから返す必要は無いのです」


 「いや、ラーファ様、金貨6000枚もの大金を投資したと言われるが、投資には将来の利益を見込んで行う物、このままでは利益が在りませぬぞ。」


 「利益は既に出ています、各集落には診療所が出来ました、魔女による診療体制も出来て領民の健康が大幅に改善されています、その結果人の動きが出てきて領内の景気も良くなってきているではありませんか」

 ラーファには金貨6000枚の投資効果が十分出て来たと思っている。


 「今後魔女による診療体制が維持されれば、領内の景気も更に良くなって行くでしょう、男爵様がラーファの投資した金額を返したいとおっしゃるのなら税収が上がった中から数十年かけてお支払いくださればよいのです」


 「確かにお金を預かった時も同じことを言われたが、本当に其のままの意味だとは思っても居ませんでしたが、・・・ ラーファ様のお気持ちを汲む事に致しましょう、イガジャ男爵この通り感謝申し上げる。」

 と深々と礼をされた。


 ラーファはダキエ金貨を換金したお金を男爵領へ投資していたようです。

 次回、イガジャ男爵領にオウミ国王からの避けがたい提案が示されます。

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