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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第5章 魔女ラーファと竜騎士の卵達
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第68話・12 (閑話)教官

 魔女見習いのミンからの視点で描く救護所に帰還したラーファです。

 教官ラーファが救助した38名の女性を伴って救護所へ帰ってきたと、哨戒している防衛隊から伝令が治療所へきた。

 「やっと所長ラーファが帰ってきましたか、助手たち(ミン、ポリー)で助けた女性のお世話をお願いしますね」

 治療所の事務をしていた魔女のイライザ様が魔石に魔力を充填していた私に言って来た。


 「はい、もう一人ポリーを連れて行ってきます」返事をしてポリーを探しに行こうとしたら。


 「そうだ、あなた、着替えや体を清める必要が在るでしょうから、倉庫の隣の大き目のテントに下着と貫頭衣とタオル、それから履物とか必要そうな物を50人分先に用意しておいてね、後食堂へも連絡をお願い」

 イライザ様が追加で仕事を言って来た。

 イライザ様は教官の助けた女性たちの現状がひどい事を察して丸ごと着替えを用意するように言われたのだと、ミンは歩き出してから理解した。


 大量の着替えを用意するのは、一人では大変なので先にポリーを探す事にした。

 治療所の奥に在る治療室でポリーは魔女のサマンサ様の治療のお手伝いをしている。

 部屋を仕切る中が見えてるカーテン越しに用事を伝えた。


 「魔女様、教官が帰ってきました、助けた女性たちと一緒との事です、助手ポリーを手伝いにつれて言って良いですか?」と聞くと。


 「ええ、大丈夫ですよ、行って手伝ってあげなさい、此処は私だけで大丈夫ですから」

 とゆっくり歩く患者の体を支えていたポリーに言ってくれた。


 ポリーが頷いて、患者を座らせてから離れると、私の方を向いて「早く行こう」と言う、教官を心配していたから早く会いたいのだろう。


 治療所の側の倉庫用のテントから着替え用の下着や貫頭衣に履物とかタオルを隣の大きなテントへと運ぶ。

 生理用品も念のために幾つか運んだ。


 着替えはフリーサイズなので50人分ぐらい在れば足りると思う。

 食堂にしているテントへも連絡を入れる、急に大勢が来ると用意するのも大変なのだ。


 此の倉庫にはカカリ村から教官のインベントリで運んできた大量の資材が積み上げられている。

 食堂に隣接した食料テントにも教官のインベントリで運んだ食料が山に成って居る。


 いきなり何も無い荒野に200人もの人が住み始めたのだ、その需要を満たせる物資を運べる教官のインベントリってどれだけ入るのだろう?


 大勢のぼろをまとった女性を引き連れて教官ラーファが救護所の入り口に見えてきた。


 教官ラーファがきょろきょろとテントや立て札を見ている。

 恐らく救出に出た朝方に比べて、テントが増え看板や道案内の立て札が彼方此方に立てられているから迷っているのだろう。

 看板には、イガジャ男爵家臨時救護所と書かれていて、教官は正式な名前は知らないはずだ、看板を見て不思議そうな顔をされている。

 迷いながらも立て札の治療所と書かれた矢印に従ってこちらへ歩いてきた。


 治療所のテントの前にポリーと並んで教官ラーファを待つ。

 「教官、ご無事での帰還安心しました」とポリー。

 「そうですよ、一人で潜入したって聞いて、盗賊に教官が捕まったらどうしようって思っちゃいました」

 ミンはそういいながら自然に笑っていた、ラーファ教官が盗賊に捕まる事なんて想像もできない。


 「あなたたち、来ていたのですね、手伝って欲しいけど今大丈夫?」

 ラーファ教官が予想していた事を聞いてきた。


 「はい、その為に此処で待ってたんです」私が勢いよく答える。


 何日振りだろう教官の声を聴くのは、見た所ケガも無く元気そうだが声に疲れが感じられる。

 助けられた女性達も無表情な顔がひどく汚れている、イライザ様のお考えの様に先に着替えて貰う事にした。


 「お食事の前に体を洗って着替えましょう、体を洗って着替えれば気持良くなりますよ」

 一目見ただけで盗賊の付けた汚物や流した涙や血がこびりついているのが分る。


 「こちらのテントに着替えや体を拭くための水場とタオルが在りますから」

 着替えを用意したテントへ案内する。


 治療所の倉庫には今回のような事態に備えて衛生品やタオルに下着と貫頭衣に履物とかなんでもある。

 用意した物で足りなければ倉庫から出してくれば良いだけだ。


 でも倉庫に何でこんなに色々用意してあったんだろう?

 後でイライザ様に聞いたら、元々肺病の患者を隔離する施設を建てる計画が在って、少しづつ必要な物を作っていて倉庫代わりにラーファ教官のインベントリに入れて保管してあったそうだ。

 今回ラーファ教官が真っ先に此処に来たから、全部出してもらったんだって。


 女性達をテントへ連れて行き、3人で順番に彼女達の体を洗ってタオルで拭き、着替を渡して着てもらう。

 体に水を流して拭くと簡単に汚れが落ちていく、ラーファ教官が何か魔術を使っているのだと思う。


 それに、洗った後の彼女達の体にはどこにも傷や暴行の後が無かった、絶対ラーファ教官が回復魔術で直したに違いない。

 着替えを渡す時に名札を作って服に着けて貰った、救護所で受け入れた人のリストを作るために行っている調査も兼ねている。

 全員の着替えが終わると直ぐに食堂へと移動した。


 私はラーファ教官を食時用のテントへ案内しながら施設の説明をした。

 「食堂は防衛隊の小隊が交代で食事を作ってて、最大50人が一度に食べれるんですよ」


 食堂のテントでは事前に連絡したおかげで直ぐに食事が摂れるように用意してくれていた。

 彼女達38名とラーファ教官とポリーと私の3人が座る場所も余裕で在った。


 私もまだ夕食を食べて無かったので、お腹がペコペコだ。

 ラーファ教官もポリーもお腹が空いているそうなので、私たちも彼女らに交じり食事をする事にした

 調理場の前に食事を配給するテーブルが在り、其処でシチュウを木の器に注いで木のさじとパンをのっけてもらった。


 飲み水として、麦茶が大きなヤカンで用意されていて、その前に木のマグカップが山と用意されている。

 ラーファ教官がいそいそと麦茶をマグカップに注いでいるのを見て、そう言えば教官の大好きな飲み物だったわねと思い出した。


 食事は今回もシチュウとパンだったが、具沢山に野菜とチーズが入った味の濃い物が用意されていた。

 ありがたい事にお代わりが自由に出来るから、満足に食事を与えられて無かった女性たちは何度もお代わりをもらって食べていた。


 食事をしながらラーファ教官が救出に行っていた間の事を話した。

 「教官が居ない間に、私達を含めてカカリ村から応援が到着して人数が増えたんです、アリスが帰って来た第2便で、イガジャ男爵家の臨時救護所としてサンクレイドル様から教官に辞令ってのが降りたんですよ」


 私がぽかんとしているラーファ教官に「知らなかったでしょう」と名前が変わった事を聞いて唖然としている珍しい教官の顔を覗き見た。

 最初見た時、看板を見て不思議そうな顔をされていたから恐らく気が付いて無かったわね。


 わたしが教官で遊んでいるのを気にして、真面目なポリーが食事の手を止めて話しだした。

 「第1便でレイと領兵2人、アリスと魔女のお二人が到着しています」


 「魔女のお二人は到着してすぐに救助者を見て回り、数人の患者さんの治療を始めたそうです」


 「私達は第2便で来ました、今は治療所で魔女見習いとして治療の助手をしてます」


 ラーファ教官がここで質問して来た。

 「領兵の方はどうなっているの、護衛隊の人数が多そうだけど?」


 ポリーの説明を聞いて、領兵と防衛隊の関係を知りたくなったのだろう。


 いつまでもポリーに話を取られている訳にもいかないので、張り切って答えた。

 「領兵は今日の3回の飛行で3人が3回の計9人増えて、レイを入れて14名も居るんですよ、あ! アリスも居るから15名だった、レイの話では明日にも予定の16人がそろうって言ってた」


 息継ぎで話を区切ったらポリーが割り込んで私から話を取り上げてしまった。

 「防衛隊は、領兵が指揮をしていますけど、救助者の人たちが大勢います」


 「レイが倉庫用のテントからテントを張る時に使う棒を大量に持ち出して持たせました、テント用の厚地の布を切ってハチマキをさせたのはアリスです」


 ラーファ教官がなるほどと言うような顔付きをされた、レイやアリスのやり方に感心したようだ。

 「ずいぶん人が集まった様ですけど、昨日の人達から希望者を募ったのですか?」


 レイから聞いた話では、防衛隊の元ネタはラーファ教官の言い出した事だったよね。


 ポリーが答えをまとめている間に取られた話をここで取り返す。

 「はい! 防衛隊に参加したい人を男女を問わず募ったら、75人も応募したんだよ」


 「レイが防衛隊を3個小隊に分けたんだって、小隊って一番小さい軍隊の事ですよね」


 ここで又ポリーが話を横取りした。

 「防衛隊を27人づつの3つの小隊に分けるとか各小隊に領兵から小隊長と先任の兵を付けるとかは領兵の隊長さんが助言してくれたってレイが言ってました」


 「それから、小隊毎に順番で哨戒、休憩、救護所の雑用、これは主にここの食事係です、この3つを行ってるのはアリスの言い出した事なんです、特に食事係を強く主張したって言ってました」


 大好きなラーファ教官に話したい事がまだまだたくさんある。


 次回の閑話はイガジャ男爵が行軍で苦労した話です。

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