第68話・11 竜騎士見習いの戦(11)
盗賊団を竜騎士のブレスが襲います。
ラーファは竜騎士たちの後方上空から、使い魔のワイバーンを通して見ている。
竜騎士の二人は盗賊の砦近くまでゆっくり下降して行った。
砦の上空1/3ワーク(500m)を切ると急降下に入った。
レイが東からの急降下で地上50ヒロ(75m)まで降りると急降下から引き起こし、砦の手前から奥へとブレスで掃射した。
短い時間ブレスすると急上昇する。
少し遅れてアリスも同じ機動でブレスを吐いて行く。
二人とも心臓の鼓動で3拍ぐらいブレスしたが、その砦に及ぼした効果は地獄だ。
ブレスの通り道に在った、柵、テント、荷車、小屋、樽、袋、人、馬 全てが燃え上がった。
レイが2回目の攻撃を行う為に大きく東へ回り込んで来た。
その動きを見ていた盗賊達が南北の砦の門へと殺到している。
レイとアリスは二手に分かれ、その盗賊の集まりへとブレスを浴びせた。
燃え上がる盗賊、門の前は炎熱の地獄となった。
盗賊が柵を破って散り散りに逃げ出した。
コガジャ族軍が砦に迫って来た。
砦から尾根伝いに逃げ出した盗賊を次々に打ち取って行く。
尾根を下って逃げ出した盗賊は、イガジャ軍に打ち取られている。
それでもブレスを生き延びた盗賊は蜘蛛の子を散らす様に四方八方へと逃げる。
竜騎士の2度のブレスで盗賊団は集団での行動を封殺され、もはや個々の盗賊でしかなかった。
ワイバーンを引き上げる頃合いだろう。
魔女経由でレイへ攻撃の終わりを伝えてもらう。
使い魔のワイバーンはそのまま空に残し盗賊の動きを追わせた。
ラーファは離発着に利用している河原へ移動して竜騎士隊が戻るのを待った。
直ぐに西の尾根上空に竜騎士隊が見えてきた。
ワイバーン2頭が揃って河原に降り立つとラーファの側まで歩いて来た。
ラーファは降りてきたレイたちに声をかける。
「お疲れ様、攻撃は旨く行きましたね、良くやりました今回の最大の功績です」
「教官、ありがとうございます」
レイはダキエ式に敬礼してそのまま黙り込んだ。
横に並んだアリスの方は疲れた顔はしているが大丈夫そうだ。
後ろのポリーとミンも黙り込んでいる。
今回は盗賊とは言え一度に殺した人数が百人規模だ、若い竜騎士たちにはきつい事だろう。
でも竜騎士としてこれからも同じことが無いとは言えないだろう。
ラーファはレイたちに少しきつく言う事にした。
「レイ、それにアリスとポリーとミン、四人ともよく聞きなさい」
「今回もそして次回が在れば次回も此れは軍事行動だ」
「甘ったれるんじゃ無い!」
「竜騎士として命令に服す事はこれからも在るのだ、責任は命令した私や男爵様に在る」
四人とも何時に無いラーファの強い言い方に驚いている。
「レイとアリスはやがてその命令を下す立場に成るのですよ」
「その為にも呑み込めない事柄でも無理くりに飲み込みなさい」
「ポリーとミン、あなた達が目指す魔女は犯罪者を裁く裁判官でも在るのですよ、盗賊団は国でも大公領でもイガジャ領でも法律で死刑です」
「そして魔女とは死刑の執行も行う事が在ります、今回の様な覚悟が必要なのです」
若い人たちに無茶苦茶な事を言っているのは分かっているが必要な事だろう。
「今日は此れから休みなさい、其処で泣きわめこうが逃げ出そうが全て許します」
レイとアリス、ポリーとミンの二組に分かれてテントへと歩いて行った。
レイとアリスはイガジャ男爵家の家風として殺す訓練を行っていると推測している。
しかし今回は犯罪者への対処と言っても一度に殺した数がとんでもなく違う為、心を痛めたのだろう。
やがて統治者に成る彼らには被害者と加害者の両方を知った事は良い経験に成ったと思う。
ポリーとミンは人々を癒す魔女を目指している、彼女らにとって今回の任務は志に反することだろう。
しかし、魔女に成るには医者としての面だけでは無い、犯罪者を断罪する裁判官の面も持っているのだ。
ラーファはあえて今回の任務に同行させたのだ。
ラーファは残ったイライザとサマンサへ今回の出撃をねぎらった。
興奮気味のワイバーンを神域へ急いで入れると、そのままイライザとサマンサと一緒に救護所へ帰った。
ワイバーンの事はマーやが面倒を見てくれるだろう、魔女には治療所に治療が必要な人がまだいるのだ。
防衛隊も昼前に帰って来た。
報告では盗賊が何人か逃げて来たのを討伐したそうです。
隊長の話では、希望して参加した人たちが、鬼気迫る顔つきをして棒で散々殴り殺したそうです。
盗賊団討伐は終わった。
逃げ延びた盗賊は極少数だろう、ブロンソ達幹部の死亡はラーファが一人一人確実に確認した。
イガジャ領軍とコガジャ族軍は逃げた盗賊を追って山狩りを行った。
一人も逃さない事を行動で示す事で、戒めとするためだ。
盗賊は単にその場に埋めた、生かした盗賊はいない、逃げのびた盗賊は無いと思う。
今回の戦いで死亡したコガジャ族やラーファが見つけた死者は関係者を集め集団葬儀を行った。
幸いイガジャ族にケガ人は出たが死者はいなかった。
イガジャ領軍は規模を縮小して行き10月に成ると最後になった救護所の護衛小隊も引き上げた。
救護所も引き上げる事になり、元通りになるように上下水道などの施設も破棄した。
魔女の城塞に在る飛行場へ久しぶりに帰って来ると、マーヤが神域から飛竜舎へ飛び出して行った。
マーヤは一月ぶりの飛竜達との再会で、一緒に空を飛んでしまうほど我を忘れてはしゃいだ。
ラーファとの約束を破ったお仕置きで、マーヤのお尻を初めて叩く羽目になった。
飛竜と空を飛ぶところを目撃した竜騎士たちは飛竜に乗って飛んだと思ったようで、マーヤが飛空を使える事が知られ無かったのでラーファは安堵した。
この件で飛竜が軽めの人を乗せて飛べることが分かり、飛竜用の鞍が作られる事になった。
この鞍が出来てから飛竜の鞍に錘を乗せて飛行させる試験を行った。
体の小さいオスだと5グッシュ(35㎏)、体の大きなメスなら8グッシュ(56㎏)、までなら安全に飛行出来る事が試験結果からわかった。
成竜になる前に人を乗せて飛行できるまでに成長したのは、マーヤによると栄養状態の良い環境に居る飛竜たちは野生の飛竜より成長が早いそうだ。
このまま成長するとワイバーン並みの大きさまで成長するかもしれないらしい。
竜騎士見習いは全員卒業したため、ラーファは竜騎士隊長の任をレイにゆずって引退する事に成った。
飛竜舎では引き続き竜騎士見習いの育成が行われる事が決まっている。
今後は教官として竜騎士たちが新しく竜騎士見習いになる子供達へ教えていく事になる。
今回の事件で一番名を上げたのが竜騎士だったのは当然だと思う。
ただ、一吹きで千人を焼き殺すと噂が広まり、竜騎士たちは戸惑っている。
竜騎士への見習い卒業の件は、カカリ村へ帰ってから男爵様から正式に認定された。
竜騎士への昇進と今回の大きな栄誉を称える式典は10月にイガジャ領軍が凱旋してからイガジャ領を上げて行われた。
参加した兵士と魔女達や裏方で活躍した行政官達を集めて男爵邸の前の広場で式典が執り行われた。
ラーファはキラ・ベラ市から見物に貴族が来るので参加しなかったが、3日間盛大にお祝いが続いた。
中でもワイバーンを使った低空飛行は見物人の肝を震え上がらせて、竜騎士の名をオウミ王国はおろか近隣の国まで轟かせた。
竜騎士見習いの戦いはこれで終了します。
この後は閑話が幾つかの後、新章「別れ」が始まります。




