第7話・1 ホレツァの町(4)
ラーファは性格的にあまり考えて行動する人ではありません。
食堂に行くと、何人かの女性がウエイトレスとして働いていたので、声を掛けて空いているテーブルに案内してもらった。
夕食は、ナンと呼んでる麦の粉を塩水とバターで練って丸く広げヨーグルトを入れて発酵させているそうです。
3刻(6時間)ぐらい発酵させてから石竈で焼いてゴマ油を塗った物が、主食として出た。
美味しかったので、作り方をウエイトレスさんに聞きました。
マーヤが話を聞いていた様で念話して来た。
『美味しそうだけど、ラーファのお乳の方がマーヤは好き』
なんて可愛らしいんだろう、大好きよマーヤ。
『母乳は料理と違うと思うけど、ありがとうマーヤ』
おかずは野菜を煮たごった煮風で、ソーセージを大きく丸ごと入れ、カブやニンジンにジャガイモと煮たポトフだった。
味付けは基本塩で、香辛料は入ってなかったが、ハーブを入れているようで食べられないほどひどくは無かった。
ラーファにとっては2ヵ月ぶりの兵糧以外の真面な食事なので、残さずに食べ終わった。
体が食べた物をぐんぐん吸収して体中に行き渡る気がする、久しぶりの満腹感に幸せを感じた。
ナンが香ばしくて美味しかったので、明日の昼にラーファも神域で作って見よう。
食事にはビールに似たエールと言うお酒が付いていたが、授乳中なので大麦を焦がしたハーブ茶に変えてもらい飲んでいる。
この麦焦がしは宿のおかみが作っていて売り物らしい、美味しいので買う事にした。
早速ウエイトレスに麦焦がしを買いたいと聞く。
「この大麦の焦がした飲み物は売っているそうですけど、今買えますか?」
「はいよ、1グラン(700g)で銅貨10枚だよ」と大柄で声の大きい女性のウエイトレスが答えてくれた。
結構高い値段です、しかし買えない事は無いですね。
「1グッシュ(7kg)欲しいからダキエ銅貨1枚で買えますか?」
と聞いて見る、ダキエ銅貨は万能ですから大丈夫でしょう。
すると困った顔をして、「少し待ってな」と言って奥へと行ってしまった。
どうしたのでしょう、何か変な事を言ったのでしょうか?
彼女が行った方を見ていると、大柄な初老の女性が出て来た。
「お客様、私は此の宿のおかみのグレイスと言います」
宿のおかみさんが出て来ちゃいました。
「グレイスさんですね、私はラーファと言います」
「ラーファ様ですか、麦茶をダキエ銅貨1枚分欲しいとおっしゃる方は」
女将のグレイスさんの困った顔を見ると頼んだ量が多かったのかもしれない。
「はい、ダキエ銅貨しか持ち合わせが無いので、ダキエ銅貨でお支払いしたいのですが」
「分かったけど、麦茶をそんなに用意していないから、明日の夕方ぐらいで良いかい?」
やっぱり多かった様ですが、どうやら作ってくれる見たいです。
「はい、此処を出るのは明後日の朝ですから、十分間に合います」と答えると。
「よっしゃ、承ったよ、明日の夕方までには作っとくから声を掛けとくれ」
グレイスさんが懸念が消えたのか、笑顔で承諾してくれました。
これで、麦焦がしのお茶が楽しめますね。
マーヤがほっとしたように念話して来た。
『声も体も大きな人だったね』
マーヤが少し怖がっている気がする。
『どうしたの、声が大きくて吃驚した?』
『うん、少し怖かった』大声は苦手なようだ。
部屋に戻ると、早速神域へ行きます。
マーヤはまだ寝ているようです。
そうっと顔を覗いて見ます。
「スヤー」と寝息を立てて寝ています、抱き締めたいぐらい可愛いです。
『起こさ無いでよ』とマーヤ。
「ええ、起こしませんよ」そんな事しませんよ、寝顔が可愛いのに起こしたりしません。
『ラーファ、少し警戒心を持たないと危ないわよ』とマーヤ。
可愛いので、ほっぺをつつこうとした指を引っ込めて、聞く。
「え、どうして?」
『今日ダキエ銅貨を彼方此方で使ったでしょ』とマーヤ。
『しかも、食堂で他の人が大勢いる中でダキエ銅貨しか持っていないって言ったでしょ』とマーヤ。
「確かに言ったけど、ラーファは強いから大丈夫よ」
『強いかもしれないけど、其れで闇の森ダンジョンへ逃げ込む事に成ったのでしょ』とマーヤ。
「あれは追手がしつこく追って来るから仕方が無かったのよ」
『今度は盗賊や盗人がシツコク追って来る事になるわ』とマーヤ。
「大丈夫よ、やっつけちゃうから、それに逃げるのも速いのよ」
『一度に何十人ものシツコイ強盗から囲まれて、魔力が尽きればラーファは無力よ』とマーヤ。
4日間休みなく追われ続けた悪夢の日々を思い出した、あれは良くない、夢にも思い出したくない。
「そうね、魔力が尽きたら、反撃できなくなるわね」
彼の方の知識を持っているマーヤに聞いてみた。
「何か良い手立てが無いかしら」
『そうね、空に逃げる事が出来れば追って来れないわ』とマーヤ。
「飛空は出来無いわ、何か魔道具が在ると良いけど、空を飛ぶ魔道具なんてあるかしら?」
『ハンググライダーと言う物が彼の者の知識に在るわ』とマーヤ。
『前方下から風の魔術を受けて空を飛べる乗り物だそうだよ』とマーヤ。
『魔糸は闇の森ダンジョンで手に入れていたよね、どのくらいあるの?』とマーヤ。
「えーとね、魔糸は50グラン(35kg)ぐらいあるよ」
『それぐらいあれば足りると思う、後は軽銀を3グッシュ(20kg)ぐらい軽銀の合金で管にしてほしい』とマーヤ。
「分かったわ、洞窟で採石したミョウバン石を錬金で軽銀にしたのがあるから」
(あっ・・・おしっこ出た、うんちも出そう』と泣き出すマーヤ。
「あらあら、まぁまぁ」
のんびりした親子の会話が少し不安気味になってきました。
年はそこらの人では足りないぐらい有りますが、生活の常識はダキエ国内限定です。
マーヤはもちろんですが、ラーファも常識が有りませんから、危なっかしい事をル・ボネン国に居た時からやらかしています。