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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第5章 魔女ラーファと竜騎士の卵達
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第66話 集落への診療(2)

 腹張り病の蔓延地へ往診に出かけます。

 小さな部落には名前など付いていないが、イルク山のふもとの部落とか山の上の部落とか呼ばれている。

 もっともイルク山の山頂はイガジャ領の北にある、この辺で一番高い山で裾野も広く全ての部落や集落は麓と言える。


 ラーファが今日最初に向かう部落は山からの小川沿いに在る小河地部落と呼ばれている場所で、川沿いなので特に腹張り病の多かった部落に成る。

 ラーファが来る前までは部落は人の行き来も儘なら無い半ば隔離された部落だった。


 ラーファは部落の中まで蔓延っていた中間宿主の巻貝を生石灰を撒く事で駆除して行き、飲み水を地下深くの水脈から水道菅を設置して供給する事で川水から人々の生活を分離した。


 今でも川沿いに生石灰を撒いて中間宿主の巻貝を部落に近寄らせない様にしている。

 最初は腹張り病の治療は部落のほぼ全員が対象だった、さすがのラーファの魔力も部落の治療が終わる頃には空っぽになっているありさまだった。


 2年目の今では、新たな患者の治療を行なえば次の診療までにこの腹張り病で死ぬような病人は居なくなった。 


 診療は部落の家の部屋を借りて行う。


 最初の患者が入って来た。

 「おはよう、調子はどうですか?」ラーファは最初に挨拶をして患者の反応を判断のきっかけにしている。


 「はぁ、前回の時から変わりぁせんでがす、体に痛ぇとこはねぇです。」

 最初の最高齢のおじいさん(41歳)が歯の少なくなった口ではきはきと答えてくれる。


 声の調子からは元気そうだ、使い魔におじいさんを嗅いでもらう。

 使い魔からは歯茎に歯周病が在る事を知らせてくる。


 おじいさんの前回の処方箋を見ても歯周病以外は元気の様だ、治癒魔術をかけて使い魔に再度匂いを嗅いでもらう。

 今度は使い魔からも元気と帰って来た。

 「お元気の様ですから、その調子で次回まで歯磨きを毎日行ってくださいね」


 「へぇありがとうごぜえますだ。」おじいさんがお礼を言って帰っていく。


 歯磨きの習慣はなかなか根付かないようだ、今のおじいさんも歯周病がなかなか治らないのは歯磨きの習慣が無いから、40歳で既に歯を10本無くしている。


 部落の人の診療は次から次へと進んで行き、4コル(1時間)で部落の5家族30人の診療が終わった。

 ラーファが診療している間に、領兵の方が置き薬のチェックと交換を行ってくれている。


 置き薬の確認と聞き取りを部落の代表から行い、次の部落へと移動する。


 2か所の部落を昼7前(午前中)に見て回り、昼7時にイーゴの集落へと帰って来た。

 案内人の3人は集落の自分の家へ食事に行き、ラーファ達は集落の長と管理人夫婦と食事の後お茶を飲みながら話し合いをする。


 集落の長イーゴがラーファが来る前の事を思い出したのか言ってくる。

 「此の部落も前に比べてだいぶ落ち着きましたじゃ。」


 管理人の娘がラーファと夫を見ながら言う。

 「そうね、前はひどかったわ、私が結婚できたのも魔女様が腹張りの治療を皆にしてくれたからよ」


 「前は人が部落から出る事も嫌がられとったし、山の上の部落のオラが此の部落に近寄る事さえ禁止されてただよ、魔女様のおかげですじゃ。」


 「今日は腹張り病の患者さんが一人もいなかったわ」イライザが今日の診療を振り返って言った。


 「置き薬の治療薬も使って無いの?」ラーファが聞いてみる。


 「はい、治療薬は前回のまま使っていませんでした」

 ポリィーが置き薬の確認をしたからか知らせてくれた、管理人夫婦が揃って頷いている。


 「初めてじゃ無いかしら、腹張り病の患者が出なかったのは?」ラーファが皆に聞いてみると。


 「私も初めてだと思うわ」イライザも肯定した。


 これは中間宿主の巻貝と部落の人との関りを遮断した効果が出て来たのかもしれない。

 「イーゴさん、生石灰は届いていますか?」


 生石灰はカカリ村から荷馬車で此処まで送られてくるので、ラーファには必要量が在るのか分からなかったので聞いてみた。


 「はい、今月分は10日前に届いていますし、川辺に撒いて毎日見回りも欠かさず行っています」

 娘さんが答えてくれたので安心しました、この集落がきちんと対策を行っている成果が出たのでしょう。


 生石灰はイガジャ領の南側に石灰岩の岩が露出しているので、其処で作られている。

 領内の北側は道路網が未整備な為、道路の整備が急がれているが予算不足と人手不足で難航している。


 この1年で人の往来が活発になって来ているので、人手不足は解消されるかもしれない。

 イガジャ男爵さまは魔女の魔法薬(魔石に付加した治癒魔術)をオウミ王国へ売る事を考えているそうです、これが実現すれば予算不足の方も解決するかもしれません。


 昼7後(午後)から残り3か所の部落を回ります。


 各集落に啓蒙活動の拠点と責任者を置き、上水道と下水道を分離して設置する。

 下水道の設置はまだまだ進んでいないが、上水道は去年設置が終わった。


 上水道を必要とする全ての部落に上水道を設置するには1年もの時間が必要だった。

 他の魔女にも応援してもらい、診療で訪れる度に設置して行ったがそれでも時間が掛かった。


 今日上水道と生石灰の散布の効果が確認できた、やっと明るい展望が見えて来た気がします。


 ラーファの頑張りで多くの人が救われています。

 次回は竜騎士見習い達の訓練風景です。

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