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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第5章 魔女ラーファと竜騎士の卵達
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第65話 集落への診療(1)

 ワイバーンで集落への診療に出かけます。

 イーゴの集落はイガジャ領の北の山間に在る。

 この集落一帯は川に住む寄生虫により腹張り病の患者が多い地域です。


 イガジャ領はイルク山の南側に広がった山間部を中心とした領地です。

 その地形は東西と南に狭く北に広い形をして平地はほとんどありません。

 前は少し在ったそうですが、北の大公様に取られたままです。


 イガジャ領はカカリ村を含めて36の村と集落が在るのですが、村と集落が地域の中心と成っていてその周りに数家族が住む部落が形成され、集落毎の結束が強いのが特徴です。


 初めてこの集落へ来た時は、馬で移動していたので山道を登るだけで5日も日数が掛かっていましたが、今ではワイバーンを使って1刻(2時間)も飛べば着いてしまいます。


 ラーファが集落を診療して回る様になってから、各集落には宿泊できる診療所が作られて居ます。

 診療所の建設は集落毎の事情によって作られ方は様々ですが、基本的な設備はラーファが監修して備わっていますし、建設費の多くがイガジャ男爵さまからの補助金で賄っています。

 このイーゴの集落の様に小さな集落でも宿泊できる設備を備えた診療所が、集落と周りの部落の人に拠って建てられてます。


 1年前から、診療所には魔女か魔女見習い(診療の許された)が月に一度は訪れて、集落の領民の診療が出来るようになりました。

 カカリ村と近郷の5集落はおばばとカカリ村当番の魔女が担当しています。

 残りの30集落を残りの魔女2人と魔女見習いの中でも診療の許された者が組んで回って行きます。


 おばばはカカリ村専属なので動きませんが、3人の魔女の内誰かが担当地区の責任者と成り、健康調査隊から派遣隊へと変わった隊員を率いて診て行くのです。

 ラーファは特に希望して腹張り病の患者が多く出ている地域を含む10の集落を担当してます。


 診療所を管理する夫婦が常に住み込みで診療所の維持管理を行っているのは、派遣隊が居ない時でも診療所が使えて、ケガや病人の状態によっては診療所に泊まり込む事も在る為です。


 管理人は魔女達が居ない時には診療所に在る薬や器具や道具を使って簡単な手当が許されています。

 緊急時には管理人の判断で診療所に常備している8級魔石に付加した治癒魔術(ラーファ以外の魔女製で60日の有効期限)を使用する事まで出来るのです。


 勿論治癒魔術を付加した魔石は金貨1枚程では無いが、オウミ国の銀貨で50枚はする金額なので使用すると厳格な調査が行われる為不正は難しい。


 他にもラーファが進める手洗い歯磨き等々の啓蒙活動では集落での率先した活動と普及の責任者となる。

 集落の飲み水や汚水の処理などを管理し、病気の予防に大きく影響する役職でも在る。


 その為、診療所の管理人は集落の重要な乙名おとなに位置付けられている。

 役職上文盲もんもうでは仕事が出来無いので、どうしても集落の長か長の家族が成る事が多い。


 ここイーゴの集落に在る診療所の管理人は集落の長イーゴの娘夫婦が管理人に成っている。


 イーゴの集落の真ん中にある広場へワイバーンが2頭降り立った。

 今日は魔女がラーファとイライザ、魔女見習いはポリアンナ(ポリィー)の3人で診療を行う。

 竜騎士として竜騎士見習いのレイが来ている、領兵は2名で護衛と物資の管理を担当する。


 ラーファは出迎えてくれた集落の長イーゴに挨拶をして、代表と一緒に魔女達を引き連れて診療所へ向かう。

 残ったレイはワイバーンに積んだ荷物を領兵と共に下ろしている。

 下ろし終わると診療所のワイバーン(飛竜)用の厩に連れて行く手筈に成っている。

 領兵も荷下ろし後、診療所に荷物を運びこみ、それが終われば近くの部落へ往診に行く準備を始める。


 診療所の前で管理人の集落の長の娘夫婦が待っていた。

 二人に挨拶をして診療所の中へ入ると、既に診療を待つ10人程がいる。

 口々に挨拶して来る待合室の人にラーファや魔女達は声を掛けながら奥の診療室へと入って行った。


 「魔女様おはようございますじゃ」、「今日もお世話に成りますだ。」、「おお、ありがたや、ありがたや」。

 「皆さまおはようございます」、「お母さんお腹の痛みはまだありますか?」、「皆さまもう少しお待ちくださいね、診療は用意が出来次第始めますね」。

 声を掛けながら診療室に入る。


 診療室ではラーファとイライザは長と管理人夫婦から、魔女の居ない間の事や今懸念している事柄について聞き取りを行う。

 魔女見習いのポリィーはその間に診療が出来るように用意を整えていく。


 啓蒙活動や噂話的な事は、昼の食事休憩時にお茶を飲みながら聞く事にしている。

 意外な事に魔女見習い候補に成れそうな子供も世間話の中で見つける事が多いのだ。

 今も魔女見習い候補として7歳に成るのを待っている女の子が6人居る、今年はその内の2人が魔女の城郭へ入って来る予定だ。


 集落の診療は一人が診療所と集落で診て、もう一人が近辺の小さな部落を診て回る事にしている。

 部落を回って診療する魔女と護衛の領兵には集落から馬が2頭貸し出される。

 他にも集落の者が数人案内人や護衛兼荷物持ちとして付く。


 イーゴの集落はラーファが担当なので、腹張り病患者の現状を広く調べたい事も在り周辺の部落を回る方にしてもらっている。

 昼7前(午前中)に回る予定の部落は2つ、何処も歩いて1コル位離れている。

 この地は山間地に在る部落が点々と在り、何処も腹張り病の蔓延している地域だ。


 ラーファはこの2年間で何度も腹張り病の蔓延する地を訪れている。

 既に重傷者はラーファの治療で完治しているが、常に新しい腹張り病の患者が発生している。

 今はイガジャ男爵さまが河川への工事を少しづつ進めているがまだまだ著に付いたばかりなので完成は遥か先に成る。


 ラーファが月に1度診療に訪れる事で病の重症化と広がりを抑えている状況なのです。

 他にもケガや病を発病する人は多く、ラーファは啓蒙活動の広がりに期待する事が大きいのだ。


 ラーファは昼4時(9時)にイーゴの集落を馬で出発した。

 護衛の領兵とイーゴの集落から3人の案内人と荷物持ちの引く荷車を伴っている。

 荷車には各部落の代表の家に置き薬として常備して貰っている物から、使用した分の補充をするための薬と器具が入っている。


 マーヤ曰く彼の方の知識で置き薬屋のシステムなのだそうだ、そのシステムを取り入れている。

 使用した薬は補充され、期限が切れた薬も交換される。

 使用した薬のみ納税時に清算される。


 ただしイガジャ男爵さまの納税システムは影の組織に傭兵に出る集落へは薬に対して補助金が出るので大きな負荷に成らないようにしている。

 イガジャ男爵領の全ての集落は最低でも複数人が影の組織に傭兵に出ている。


 総数100名以上の全てがオウミ王家の影の組織が雇い主だ。

 勿論イスラーファの探索に影の組織もかかわっているが、イガジャ男爵家が秘匿する事柄へは忖度されるのでイガジャ男爵領は探索が行われていない。


 次回はイーゴの集落でのラーファの活動です。

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