第62話 プロローグ3年間(5)
イガジャ領にはびこる深刻な疾病、ラーファと魔女達は立ち上がります。
新しく魔女と成ったのは、ラーファ、イライザ、サマンサの3人だ。
更に魔女見習いへ見習い候補からベアタ、ダグマラ、ハリナの3人が魔女見習いに成った。
新体制は魔女が、おばば、ラーファ、イライザ、サマンサの4名。
魔女見習いはエリスが見習筆頭、ポリアンナ、ジャスミン、ベアタ、ダグマラ、ハリナの6名。
竜騎士見習いポリアンナ(ポリィー)、ジャスミン(ミン)、ベアタ(アタ)、ダグマラ(タマラ)、トークレイ(レイ)、アイリス(アリス)の6名。
飛竜の名前はオスのトド、ラス、メスのキー、ティー、チャの5匹。
他に魔女見習いのハリナ(リナ)も今年竜騎士見習いに成る予定です。
イライザはラーファの来る前から結婚していて子供も居る、サマンサはラーファが来た年に結婚し1年後子供が生まれた。
新しく魔女見習い筆頭と成ったエリスは今年結婚する事が決まっている。
魔女と成るには子供を産んだ事が在る事が必須の条件と成るそうだ、理由は子育ての指導を行う為に経験が在る方が指導しやすいからだとおばばは言っている。
しかし、真実は使い魔の使役をする為には性的な興奮が伴うために経験が在る女性で無いと使役出来ないのが真相だそうだ。
ラーファは使い魔を使役中の魔的繋がりが使役者の性的な興奮を起こしているのでその部分を遮断すればよいだけなのだが人族は魔力が少ないので遮断できないのだろうと思っている。
体制が整って来た事で領民の健康調査を行う事に成った。
長はおばばが務め事務的な事を取りまとめてくれた。
実行隊長はラーファ、健康調査隊を引き連れイガジャ領を隅々まで周り領民の健康調査を行う。
イライザとサマンサは交代でカカリ村での診療を行い、それ以外の時間でラーファに同行して健康調査を手伝ってくれる。
魔女見習いからも助手として3名が同行する事に成っている。
健康調査隊はカカリ村で最初の健康調査を行い、徐々に周りの集落へと調査を行っていった。
調査隊を率いるラーファはイガジャ領の隅々まで精力的に集落の間を魔女見習い達と領兵を引き連れて治療と健康調査をして回った。
1年間健康調査を行って見て、集落を回る内に幾つかの問題点が見つかって来た。
イガジャ領にはびこる2つの疾病、一つは腹張りと呼ばれる寄生虫による物。
もう一つは肺の病、肺病。
ラーファはマーヤが知る彼の方の知識から似た症例を探し対処法を研究した。
ラーファ達が治療以外に人々への啓発活動を重要視して、清潔な水の確保を各集落全てにいきわたる様に簡易水道を家々に設置していった。
これは土魔術による物で、土菅魔術で作った中空の管を地下深く伸ばし、水脈から水を引いた物だ。
此の魔術はおばば以外にもイライザとサマンサ、後エリスが行使できる。
それと同時に井戸水の水質検査を行い良質な水脈を選べるようにした。
使い魔に匂いを嗅がせれば水質検査は良質かどうかは直ぐに分かる。
安全な水を確保して、手洗いと歯磨きを最低でも行う事を領民全てが行うように指導していった。
腹張り病への対処は罹患した患者への治療と腹張り病蔓延地域に生息する中間宿主となっている川辺の小さな名も無い巻貝を根絶する事。
2つの対処をこれから長い年月行っていく事をイガジャ男爵様が理解し、続ける事と成った。
腹張り病の初期の段階なら寄生虫を殺す薬を作る事に成功していた。
長い期間腹張り病に罹患していると寄生虫や寄生虫が生む卵が体内に多量に発生し、寄生虫を殺しても血管を詰まらせたり内臓の機能を阻害する為、薬だけでは対処できなかった。
その為にラーファは重症化している患者には寄生虫を殺して短距離転移で排除する治癒ポーションを作って治癒していく事をしている。
肺病への対処は病を見つける事から始めた。
これには犬系の使い魔に匂いを嗅ぎ分けさせて水質検査を行った経験から、匂いで判断する実験を何度も繰り返した。
実験結果から、色々な病をかぎ分けられる事が分かって来た。
各種ガン、虫歯、歯周病、パセドー病、肺病、腹張り病、糖尿病等々殆どの病を嗅ぎ分ける事が出来た。
これにより使い魔に嗅ぎ分けさせた結果と症状から病を診断する事が出来るようになってきた。
病は人の数だけあるとも言われているので全ての病の診断も治療も出来ないが、ラーファの教えた治癒魔術を行使する事で簡単な身体の不具合を治療し整える事が出来るようになった。
この方法だと初期の病なら治療してしまえるので多用できる。
魔女の診療は最初に治癒魔術を行使してそれでも残る身体の不調を使い魔を使って診断していく流れに成る。
肺病も初期段階なら治癒魔術で治る、しかし進行した肺病には患部の排除や再生まで行う必要が在り、ラーファ以外に複雑な魔術の行使は出来なかった。
でも定期的に治癒魔術を行使していると肺病の進行が止まり、ゆっくりとだが治癒していく事が分かって来た。
3年間ではラーファの努力は実を結ぶまでは行かなかったが、確実に其の成果を刻んできた。
プロローグは此れでおしまいです。
聖樹年53、145年 聖樹の変から3年後の5月3日マーヤの3歳の誕生日から始まります。