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第56話・1 (閑話)イガジャ男爵(2)・1

 ラーファがブレス無効化ポーションを使って、飛竜のブレス封じする任務へと出かけた後、村でラーファの帰りを待つイガジャ男爵様達です。

 黒々としたゴーレムの馬に乗ってイスラーファ様が任務へと赴いて行く。

 カークレイ(イガジャ男爵)は飄々として任務に出かけて行く姿をこれで見納めに成らなければよいがと思いながら見送っていた。


 「本当に飛竜のブレスが封じれるのでしょうか?」

 ダンガー隊長がイスラーファ様に聞こえない距離まで離れるとぼそりと囁いた。


 「オラは良く知らんが、ビェス様が話してくれる事がホントなら空を飛べるほど凄い魔術師様だと聞いただ、そんな方ならブレスが使えんようにして呉れそうだ出よ。」

 会議後も部屋に引きこもっていたオイラートはイスラーファ様の空を飛ぶ魔道具を見ていない様だ。


 カークレイは昔の様に動ける体にしてくれたイスラーファ様を信頼しているし、魔術師としての技量も信用している。

 だからこそ、飛竜に対してイスラーファ様が遅れを取るような事は無いと思っているが、今回は相手が5頭もいるのだ、心配するなと言っても心配に成るのはどうしようも無いだろう。


 「空を飛ぶ魔道具は儂も見た、大きな鳥のように軽々と飛んで飛竜の巣を偵察に行ってくれたな。」

 カークレイが村での対策会議の後、魔道具で空を飛んで偵察に行ったイスラーファ様の事を言うとダンガー隊長が頷いた。


 「私も空を飛んだ時は吃驚びっくりして腰をぬかしそうになりました。」

 数日前の飛竜偵察の事を思い出したのか、ダンガー隊長が手を広げたまま真っ直ぐ走ってピョンと飛んだ、「こんな感じで簡単に飛んで行かれましたなぁ。」とイスラーファ様の魔道具が飛ぶ様を表現したが、ダンガー隊長も空を飛びたいと憧れているのかもな。


 「イスラーファ様は自信が在りそうなことを言われていたから信じるしか無い、儂の目の前で飛竜の首から上を吹き飛ばしたお方じゃからな。」

 男爵は山狩りの時の事を思い出して改めてイスラーファ様の魔術の凄さを実感していた。


 見送り終わると本部の建物に3人で帰り椅子に座ってしばらく今後の予定を再確認した。

 明日は夜12時(午前5時)に此処(オイラートの集落)を出発し、餌を仕掛ける予定の場所へ移動する予定だ。


 餌の羊や食料などの用意はオイラートに、毒の入った革袋や弩などの武具はダンガー隊長に任せカークレイはイスラーファ様が失敗した時の対応を考えていた。

 ブレスを無効化できない場合は毒餌に頼るしか方法が無いので、弱った飛竜を倒すには弩を増やして対応する必要が在るだろう。


 領兵もこれ以上集めると門番や日々の村内の取り締まりに影響が出てくる、既に40名も引き抜かれた為に交代で当たる任務に支障が出ている。


 大公家との経緯でイガジャ男爵家が憎まれている事は承知しているが、この様な事態に成ると助けが無いのが残念だ。

 王家に頼むと事が大げさに成るが、最後に頼めるのは王家に成るだろうとカークレイは覚悟した。

 見返りにロマナム国との戦に駆り出される事に成るだろう、イスラーファ様が飛竜のブレスを封じてくれれば頼む事は無くなるので何とか成功してほしい。


 「何時位に帰ってこられるのかな?」他の2人の意見を聞きたくて声を掛けた。


 「こっから飛竜の巣まで12コル(3時間)ぐれぇ、往復だけで掛かりますだ。」オイラートが一番詳しいので彼が言うのなら間違いないだろう。


 「イスラーファ様が飛竜の巣でどの位時間が掛かるのか、任務を考えると夜明けまでに帰れると良いのだが。」カークレイは自分の思いを言葉に出しながら、往復の時間以外に飛竜の巣で過ごす時間がどのくらい係るのか分からないのが一番の問題だと思っていた。


 「イスラーファ様が飛竜のブレスを無効化される方法はポーションを飛竜に掛けるとしか聞いていません。」

 ダンガー隊長がイスラーファ様が飛竜の巣で行う事の見当がつかないと首を振る。


 「儂もそうだ、投げつけるのか、踏むように仕掛けるのか、魔術でどうにかするのか分から無いし時間がどれほど掛かるのかも分からない。」

 結局3人居ても分からない事が分かっただけだった。


 3人が雁首揃えてただ待つのも明日の出発の時間を考えると良くないだろう。

 オイラートは明日の準備が在るので早めに家へ帰した。


 イスラーファ様がいくら早くても2刻(4時間)は最低でも掛かるので1刻づつダンガー隊長と2人で交代に仮眠を取る事にした。

 ダンガー隊長が先に寝る事に成ったので(コイントスで決めた)、カークレイは一人お茶を飲みながらイスラーファ様の帰りを待つことにした。


 こうして夜に結果を待つのは、失敗した時の事ばかり考えてしまい気鬱に成ってしまう。

 頭を振って嫌な考えを振り捨てると、お茶を一口飲みイスラーファ様を始めて見た時の事を思う。

 一人本部の会議室に居ると色々此れまでの事が頭に浮かんでくる。


 初めてイスラーファ様を見たのは、残り岩と呼ばれている尾根の途中にポツンとある大きな岩に朝日を浴びて立ち上がる姿だった。


 集落から集められた村人を率いてカークレイがベロシニア子爵の居る場所に着いたのは、まだ日が高い昼9時(午後2時)位だった。

 着任早々に待機と食事の用意をするように言われて持ってきた荷駄を下ろしながら「ご苦労だった。」の一言で労われこき使われている自分が惨めだった。


 ベロシニア子爵の命令で傭兵が何人か此方の教導(督戦)に着く事に成ったのも気に食わなかった。

 男爵としての領民への命令権さえ蔑ろにされ、何処の者だか知れない傭兵の指示を受けなければならないのはイガジャ族への根強い不信感が未だに在るからだろう。


 今回集められた者の大半は商家の人足だ、彼らはキラ・ベラ市に本店が在る為、大公様に忖度することが多くイガジャ男爵に対して大公家の家臣よりも一段下に見ている。


 それでも身分の差は大きいのでイガジャ男爵が命令したら従うと思うが、今回は傭兵が教導(督戦)する様だ。

 夕食後松明を灯して谷川を渡り、残り岩を包囲するように尾根の裾野に展開して野宿した。

 傭兵の指示で翌日も夜の明ける前から前日に作った残りのオートミールだけの食事を食べ、包囲網を作り夜明け直前に上り始めた。


 夜明けは空から明けて来た、朝日に照らされて残り岩が浮き上がる。

 その時笛の音が木霊した、「ピーッ」と薄闇の朝焼けの空に響き渡る音が残り岩に立つ人影を示している。

 まだ尾根の裾野から登り始めた時だったので、朝日に照らされたシルエットのみだったが細身な体に長めな髪をされている姿が良く分かった。


 大公側の冷淡な対応はイガジャ族とキラ・ベラ市の大公との3代に渡るいがみ合いの歴史から来ています。

 この時の経緯は閑話イガジャ男爵(2)の最後の方で出します。

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