第54話 飛竜討伐(10)
仲間を討たれた飛竜達は相当怒りをため込んでいるようです。
オイラートの集落まで引き上げてきた飛竜討伐隊を集落の全員が出迎えてくれた。
飛竜を討伐出来た事は集落の全員が知らせで知っていてお祝いの用意をして待っていたのだ。
早速集落で祝勝会を行い飛竜討伐の幸先の良いスタートを祝った。
全員が座れる数の椅子とテーブルが用意されていた。
テーブルの上には、豚肉の塊やソーセージをキャベツとザワークリームで煮込んだ料理のビゴスや定番のグヤーシュや摺り下ろしたジャガイモと小麦粉の揚げ物のプラツェックが山と積まれていた。
飲み物はビールやワインが樽で饗されて村人と一緒に領兵は大いに飲み大いに食べた。
いつものようにお酒は飲まないラーファは、祝勝会で出た食事を早々に切り上げ、飛行機で残った飛竜の様子を偵察に行くことになった。
偵察はラーファから言い出した事だが、イガジャ男爵様もダンガー隊長も必要だと思っていたようでラーファから言い出した事に安堵したようだ。
一端本部の自室から神域へ行き飛行機の用意を済ませて戻ると、村の外で神域から飛行機を引き出し、直ぐに飛び立った。
すでに夜1時(午後6時)日の在る内に飛竜を偵察したいので急いで高度500ヒロ(750m)の高さまで上昇して、飛竜の居る崖へ向かった。
東から飛竜の巣へ前回と同じに近づくと、巣に飛竜が4頭居た。
4頭共飛行機を見上げて、頻りに何か囀っているようだ、怒りを含んだ鳴き声が上空のラーファまで聞こえてきた。
飛行機が巣に近づき北へと進路を変え北上する方向へ巣から離れて行くと1頭の飛竜が飛び立って来るのが見えた。
飛び立った飛竜は真っ直ぐに飛行機へ向かって飛んで来る。
前回や前々回と違って飛行機を追い払うだけで満足せずに今回は襲って来るようだ。
ラーファはしばらく北へと飛んで巣から十分離れた場所まで飛竜が追いかけて来るのを確認すると、飛行機を急上昇させた。
最初の時と違って今回の飛竜はブレスが封じられている、それだけで戦闘への負荷が軽くなっている。
ラーファの魔術が有効なのは先の戦いで確認しているし、魔力回復ポーションも手のブレスレットに用意している。
此の飛竜と戦って、十分勝ち目は有るとラーファは思った。
700ヒロ(1000m)まで上昇してから反転し飛竜へ向かって降下していった。
このまま300ヒロ(450m)まで近づいたら氷槍で翼を凍り付かせて撃ち落とそうと思っている。
飛竜へ向かって降下すると言っても線を引いたような斜めの線で飛ぶ事は出来無い。
前後左右にぶれながらその都度操縦桿操作して目標の飛竜へ降下先を修正しなければ目標の飛竜に近づく事さえ無理だ。
それに飛竜も飛んでいるので常に移動している、攻撃距離に近づくまで常に操縦桿をチョコチョコ動かしながら修正する必要が在った。
飛竜との距離が目測で300ヒロ(450m)を切って近づいた。
ラーファは最初に色の黒い土槍を射線の目安として3本づつ魔術行使した。
飛竜もラーファが何か撃ってきた来た事に気が付いたようだ、器用に尻尾で上昇する姿勢のまま前後左右に移動して躱して見せた。
狙いが付けられなかったので氷槍の魔術行使に変えるタイミングが掴めないまますれ違うことになった。
飛竜がすれ違う瞬間、裏返しになって足の爪で飛行機を攻撃した。
その瞬間ラーファは飛空を行使して瞬間的に浮かぶ事で爪から逃れた。
考えて行った訳でなく反射的な行動だった、しかも爪の攻撃が来る前に危ないと危機察知が働き回避する為飛空の行使を行うことを選択していた。
浮き上がった飛行機を推進力を最大にして垂直になるまで上向きに機動し、そのまま背面飛行に持って行った。
飛空からの上昇Uターンを行ったので飛竜の後ろを取ることが出来た。
背面飛行で飛竜の後ろ姿を確認し、姿勢を正常に戻した。
速さは飛行機の方が早いので、飛竜に近づくと後ろから今度は氷槍を3本づつ魔術行使して撃ち出した。
尻尾を使って器用に曲がって逃げる飛竜を何とか追いかけては氷槍を撃ち、避けられては撃つと言う事を何回か繰り返した。
飛竜は前を向いた飛行の姿勢のまま後ろが見えているようで、ラーファが撃ちだす氷槍を撃つ度に器用に避けている。
早さで有利なラーファは飛竜の後ろを、上下左右に器用に体をくねらせて逃げる飛竜から離されないように保持し続けた。
しばらく追いかけっこが続いたが、やっと30ヒロ(45m)ぐらいまで近づけた。
ここまで近づくと魔力を繋いだ氷槍が狙って打てるので1本の氷槍に魔力を繋げて魔術行使した。
魔力が繋がっている事は逃げる方へと曲げる事が出来る点で便利だが、目視で制御しているので遠いと外れることも多くなるのが欠点だ。
飛竜は躱そうと体をひねって下へと降下して逃げたが、氷槍も逃げる飛竜に合わせて曲がり飛竜の左の翼に当たった。
瞬時に氷槍が当たった翼から氷始め揚力を失った飛竜は墜落していった。
飛竜が山腹の木が生い茂る中へと激突して、凍った翼が砕けるのを見届けた。
首を動かしているのでまだ死んで無い。
止めを刺そうと飛行機を反転させ飛竜へ氷槍を撃とうと魔術陣を展開している時、クロスボウの拘束力強化を試すには絶好のチャンスではないかと思いついた。
地上から近寄る必要が在るので場所を覚えようと周りを見回して見た。
見覚えのある山腹に、下には見覚えのある集落が在る。
飛竜の墜落場所は意外にもオイラートの集落近くの山腹だった。
戦闘中は気が付かなかったが北から大きくそれて東へといつの間にか移動していたようだ。
これでブレスが無くても飛竜は厄介な相手だと分かった。
でも、勝てる事も証明できた。
飛竜との2度目の空中戦です、今回はブレスを恐れる必要がないのでラーファも落ち着いて対処できています。




