第44話 飛竜の巣(5)
飛竜討伐へ向けての具体的な話が始まりました。
ラーファが村のある山の麓に着陸したのは昼12時(午後5時)過ぎぐらいだった。
ゴーレム馬のビューティを出して飛行服のまま乗ると村の門を顔パスで通り抜け、イガジャ男爵様の家へ帰り着いたのは1コルぐらい経ったと思う。
玄関先に居た使用人(ラーファを見ても今度は逃げ出さ無かった)に帰還した事を男爵様へ伝えてもらった。
直ぐにイガジャ男爵様がおばばやビェスに領兵隊長と共に玄関まで出て来た。
男爵様の執務室がある場所で偵察の結果を聞くと告げられて4人に囲まれ連れていかれた。
執務室にある応接用の椅子にラーファを囲むように座ると、男爵様から偵察の内容を聞かれた。
「イスラーファ様、飛竜の偵察はどうでしたか?」
皆が期待を込めた視線でラーファを見ている。
「はい、報告します、結論から申しますと飛竜は5頭、3つの巣を作っています」
「5頭か!」イガジャ男爵様が唸って考え込んでしまった。
おばばもビェスも隊長も吃驚して言葉が出てこないようです。
「1頭少ない気がするが、まだ巣に帰ってきていない飛竜が居るのか分かるか?」隊長がいち早く立ち直って質問してきた。
「そこまでは分かりませんが、偵察した時に5頭が巣の周りに固まって居ました、ラーファに気が付いて空へ飛び立ってきたのは2頭だけでした」
「襲われたのか?」ビェスが吃驚してラーファを気遣って聞いて来た。
「いいえ、飛び立ってきたので北へと高度を上げながら逃げましたので、2頭の飛竜は巣の上空を回るだけで襲っては来ませんでした」ラーファがビェスの気遣いに笑顔で簡潔に答える。
「イスラーファ様、貴方が倒した飛竜がこの群れかどうか分からないので、飛竜は最大6頭だと考えて良いだろうか?」と男爵様がラーファに確認して来る。
「はい、巣は3つでした、番いで巣を作る習性ですが、大きな群れですと20頭ぐらい群れる事が在るそうです」
急いで魔物図鑑の記述を思い出しながら、言葉を続けます。
「今年の春に巣別れした群れだと考えると番いで群れを作る事から最大6頭だと考えて良いと思います」
「番い以外に番いを作って無い飛竜が群れに居る事は考えられ無いのか?」と隊長。
「大きな古い群れだと考えられますが、今回の群れは去年には居なかった事から新しく巣別れした群れだと考えられます」ラーファは分かっている飛竜の習性を思い出しながら答える。
「よし、飛竜は6頭として討伐を考えよう。」と男爵様が言った。
「そうですね、恐らく5頭でしょうけど後から1頭増えるより最初から多めに考えて対処した方が良いと考えます。」と隊長も賛成した。
だが、討伐と言ってもどう仕掛けるか皆無言で考え込んでしまった。
だれも6頭もの飛竜を一度に討伐する事など思いつかない。
ラーファは空中で迎え撃つ事と、地上で襲う事の何方が領兵で対処した場合に実現性が在るのか考えていた。
ラーファは今後の事を考えるとラーファ一人で対処する事は何ら解決に成らないだろうと思っている。
3年後ならおばばや魔女見習いの中から魔術の使える人が出て来るだろうけど、領兵と連携して対応する事は変わらない。
今回も領兵が対応して倒さなければ今後もあり得る飛竜到来への対処の経験が得られない事に成る。
「1頭づつ餌でおびき出して倒して行く事が出来れば最大6回繰り返せば良いだけです。」とビェスが各個撃破の討伐方法を提案した。
「確かに1頭づつ討伐して行く事は基本だと思います、餌で吊る事も有効だと思いますが、その1頭をどうやって倒すかです、今の私では弩で周りを囲んで餌を襲う為に地面に降りた所を撃つぐらいしか考え付きません。」隊長が申し訳なさそうにビェスの提案の先を考えて言った。
3頭で来ても空中へ弩を放ち追い散らす事が出来れば、1頭だけ餌で吊る事も出来そうだ。
問題はブレスだ、空でも地上でも飛竜のブレスを防ぐ工夫が必要になる。
「餌に毒を仕込んで食べて弱った所を襲うのはどうだろう。」
イガジャ男爵様が毒餌を使う方法を提案した。
「巣の周りに食べた後が見られなかったので、飛竜は餌を捉えた場所か途中で食べるのだと思います」
ラーファが目で見た時の状況を思い出しながら追加の情報を言った。
「毒餌が使えれば、巣への攻撃も有効だと思う。」
隊長が一気に片付けられる方法として毒餌で決めたそうだ。
「そうだろうか、一度の襲撃で6頭を倒す事は難しいと思う。」ビェスは慎重派のようだ。
「と言っても、毒が回るのにしばらくかかる事を考えると巣へ戻ってから襲うしか無いだろう。」
結局隊長に賛同してしまった。
対策はブレスへの対応次第で難易度が変化しますね。