第42話 飛竜の巣(3)
飛竜対策会議です。
「今から飛竜対策の話を始める、つい先ほど飛竜の群れが西の山麓に巣を作って居る事が分かった。」
イガジャ男爵様が言った言葉の意味が会議場に居る人達に理解できるだけの時間を待って続けた。
「ビェストロ殿、飛竜の群れの発見までの経緯を話して欲しい。」
請われてビェスが立ち上がり話し始めた。
「ビェストロと申します、私は薬の木から作られる薬を求めてビチェンパスト国から遣ってまいりました。」
一度、話を止めてビェスの右に座るオイラートを立たせた。
「彼が薬の木の皮の採取人頭のオイラートです、彼と今日待ち合わせて薬の木の群生地へ視察の為に向かいました。」
ビェスがその時の事を思い出す様にゆっくりと話して行きます。
「彼と西縁峠からの下り坂へ差し掛かった時に、向かい側の薬の木の群生地から飛び立つ飛竜を見ました。」
飛竜の話が出ると場内が緊張で静まり返るのが分かった。
「咄嗟に峠道の崖を登り森の中に隠れて様子を伺っていると、最初の1頭の後から続けて2頭が飛び立つのを見ました。」
場内では「3頭か!」とか「多すぎだ!」、「放牧場のすぐ側だ。」などの囁きが出ている。
ビェスがオイラートへ話す様に促すと。
「ビェストロ様の言う通りでやす。」
少し話方がぎこちなかったが話を続けた。
「今日は、カカリ村の西の山々に生えるとるキイラ・チョウの木から、どの木から木を傷めずに皮を取れるか今年の出来を見に下見に行きやした。」
顔を青くして気後れしている様だが何とか話を続けた。
「群生地は山の中腹にありやす、そこへ行くには西縁峠を越える必要がありやして、丁度峠を越えて下ろうとした時、飛竜の奴らが森の奥にある岩場から飛ぶのを見ましただ、オラも3頭飛ぶのを見やした。」
と言って直ぐに座ってしまった。
二人の報告で再び騒めいた話し声が場に充満した。
「静粛に、少し質問を良いかな?」
がやがやと話し始めた出席者を鎮めてイガジャ男爵様が質問するようです。
仕方が無いのでビェスが立ったまま質問に答える事に成った。
イガジャ男爵様が質問した。
「飛竜はどちらへ飛んで行ったか見ましたかな?」
「飛び立った飛竜はしばらく3頭で旋回した後、南へと3頭共飛んで行きました、その後の事はカカリ村まで引き上げてきましたので分かりません。」
ビェスの話は此処までの様です、ビェスは話し終えると誰ともなく一礼して椅子に座った。
ビェスの話の後、イガジャ男爵様と乙名達が話すのを聞いていると、飛竜が飛んで行った先は羊が放牧されている場所の近くの様で被害を心配する声が多かった、薬の木の採取を諦めるような話もあった。
飛竜対策としては、西の空を監視して飛竜が来れば鐘を鳴らして村人に警告する事が決まった。
集落や周辺の村々へは飛竜に襲われるような事が無いように家畜などは小屋へ入れて警戒するように連絡する事に成った。
此処に集まった人達には真の脅威にさらされているのは、放牧場の羊達だと分かっているようです。
被害状況の調査をしてイガジャ男爵様に知らせる様に放牧場の監視をしている人に連絡する事も決まった。
これ以上の対策を考えるにしても一度飛竜の群れを調べる必要が在ると領軍の隊長から話が出た。
この話を受けて、イガジャ男爵様が飛竜討伐の経験がある方の協力を得る事を提案した。
イガジャ男爵様がラーファの方を見て声を掛けた。
「イスラーファ様、飛竜対策の為飛竜の群れを調べる必要が在ります、如何かお力をお貸しください。」
ラーファは立ち上がると、軽く礼をして名乗った。
「イスラーファと申します、飛竜を討伐した経験を買われてイガジャ男爵様から協力して欲しいと言われています、飛竜の調査とその後の飛竜討伐にも協力したいと思います」
イガジャ男爵様を返答は此れで良いのかと見る。
「イスラーファ様、引き受けてくれてありがとうございます。」
イガジャ男爵様はラーファの視線を受けてラーファへ深く礼をして感謝を表した。
そして、議場に居る人を見て言った。
「皆の者イスラーファ様は大公様も認めた飛竜討伐者じゃ、たまたまビェストロ殿の知り合いでな、私からお願いして協力していただく事に成った、頼もしい方じゃよ。」
イガジャ男爵様の説明で皆が納得してラーファを見ている、飛竜討伐経験者と聞いて頼もしさを感じたようだ。
中には山狩りでイスラーファを知っている者も居る様だ、頻りに「あの時の樹人様だ!」などと話し声が聞こえる。
ラーファとしては、飛行機の神域以外でのテストをしてから偵察をしたかったが、時間的余裕がなさそうなのでこの後直ぐにでも飛行機で飛ぶことにした。
ラーファとしては今後お世話になる村の為に引き受けています。
ラーファ飛竜の調査に赴きます。
イガジャ男爵がビェスの知り合いだと言ったのはおばばとの関係が秘密だからです。