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第37話・1 治療(6)

 怪我人の治療が始まりました。

 広場で腕を体に縛り付けていた人が部落から来た2人目で、此の人は腫れが引いて無くて痛みが続いているそうです。

 ラーファは魔術療法で体調を整える時に腫瘍を見つけてしまったので密かに治癒した後、腕の治療を行った。


 腕の骨折は右上腕骨の肩に近い部分を骨折していた。

 話を聞くとあの時小石を積み上げた砦に数人で押し上げて貰い登り始めたが、足元の小石が崩れて小石と共に落下したそうだ。

 落下した時に石の上に右肩から落ちた様で、肩の周囲、肩甲骨から肋骨まで広範囲に骨に異常が生じていた。


 体全体の体調を整えつつ、肩の周辺から治療して行く、骨と腱や筋肉それを包む膜から皮膚組織に至るまで血管やリンパ管などのその周辺を通る器官を含めて治療の対象に成る。

 少し時間が掛かったが最後に上腕骨の骨折の治療を終えて、彼を部屋の外へ送り出した。


 ラーファが治療して回復した彼は部屋の中まで聞こえるような声で叫んでいた。

 「治っただ!、力を込れてん痛うねぇで!、これで働けるだよぅ!」

 部屋の外からは家族だろう祝福の声が聞こえて来た。


 2人の後はこの村の怪我人が3人だけど、まだ来ていなかったので先にイガジャ男爵様を診る事にした。

 イガジャ男爵様の事は一度診て治療しているけど、全身の体調を整える事まではしてい無かったので、改めて魔術療法をする事にした。


 血管の硬化や血行不良などが全身に見られて内臓へも影響を及ぼしていたので丁寧に不調部分を取り除いていき全身の体調を整えて行った。

 若返った様に元気になったイガジャ男爵様が久しぶりの体の柔らかさと充実した気力を感じたのか、部屋を飛び出して行き裏庭で飛び跳ねていた。


 部屋に帰って来るとラーファの手を取り、深く礼をして感謝を表した。

 「カークレイ・イガジャ生まれ変わった気分でござる、イスラーファ様にはこの恩義一生を掛けてお返しいたしますぞ。」


 そして後ろに控えていた息子に向き直ると言い放った。

 「儂はイスラーファ様の付き人に成る、サンクレイドル、父は引退するぞ、お前が明日から男爵ぞ。」


 唖然とした息子は、顔をキリッと引き締めると父に詰め寄った。

 「父上、バカな事を申しなさんな、引退など簡単に出来ない事は御存じでしょう。」

 ハッ、としたイガジャ男爵様がその事を思い出したのか悄然としてしまった。


 父を見ていた息子は此れで大丈夫だと思ったのか、イガジャ男爵様を先導するように傍へ寄り。

 「分かればキリキリ村の為に働いてください。」


 いきなりの引退宣言を簡単に否定して見せた息子のサンクレイドル様はラーファに一礼すると、父を引っ張って執務室へと消えて行った。


 おばばがその様子を見てラーファに言った。

 「レイの奴は領主として知恵も知識も在るが、行動は騎士と同じ心で動く奴何じゃ、先ほど言った事は本心じゃろうな、まぁ、息子のクレイに任せればコンコンと言い聞かせてくれるじゃろう」

 おばばも呆れた様子なので、何時もの事なのかもしれないとラーファは思った。


 その後は村の怪我人が纏まって来たので怪我の酷い人から順に診て行く事にした。


 最初は足の腓骨を骨折してゆっくりとしか歩けなくなっている人が家族に付き添われて来た。

 足の痛みか顔色も悪く、咳をしている。

 此の人は骨折以外には胃と肺に炎症が見られたので骨折の治療と合わせて治療した。


 まだ若い20代なのに肺炎に成りかけていたのが気に成ったが、治療したので再発するようなら魔女の館へ往診の知らせが来るだろうと思う。

 後ろから見ているおばばも気になったのか、憂い気な顔をしている。


 4人診ただけだがイガジャ男爵様以外の村人に体調不良の人が多すぎな気がする。

 ダキエ国の患者しか診た事が無かったので、他国ではこれが一般的な事かもしれない。


 残りの2人は腕の尺骨の骨折と手首の複雑骨折だった。

 此の2人は肝臓と消化管の間の門脈や消化器官周辺に血を吸っている半スン(1.5㎝)程の大きさの虫を大量に見つけたので全てを排除して全身の体調を整えた後骨折の治療をした。


 2人が帰った後、排除した虫をおばばに見せると、「腹張り」と言う腹部の膨満する病の時に見られる虫だそうだ。

 「腹張り」に成る前の初期なら治療できる薬が在るそうだが、初期を過ぎると薬を飲んでも肝硬変などを引き起こして死んでしまうらしい。

 後期に成ると腹が膨れ上がって衰弱して死ぬそうだ。

 死人の腹の中からこの虫が出て来る事もあるので虫の事を知っているそうだ。


 昼7前に全ての診療が終わり、思いっきり背伸びをすると気持ち良い疲れが伸びた背から抜けて行くのが分かった。


 診療が終わりましたが、怪我人よりも病を持つ人や厄介な地域病かもしれない病を見つけてしまいました。


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