第33話 治療(1)
神域の改造についてマーヤの考える先が分かります。
エルフの憧れる魔石生物化に対する答えに成ります。
ラーファは部屋へ帰るとカギを掛けて、神域へと入った。
神域の道を歩きながら、家への道に草などの緑が多くなっている事に初めて気が付いた。
マーヤが熱心に神域の改造をしていたのは神域に草を生やすか移植していたのだろう。
道の途中で周りを見回すと意外に木が多く目についたし草に花が咲いている場所も在った。
ラーファはマーヤが神域の環境を如何変えるのかマーヤに一度確認して見ようと思った。
家はやっと壁だけの状態からガラスと金属の枠で作られた窓が在る状態へと変化している。
窓には雨戸やカーテンが取り付けられているので、神域の中で雨が降ったり太陽が照り付けたりするのかもしれない。
家へ入ると玄関から居間へと入り、寝室のマーヤのベッドへとやって来た。
家の中は窓が付いて明るくなった様に感じる以外は変化は無いようだ。
マーヤは起きていたが、何事か熱心に行って居る様で目をつぶって頻りに手を動かしていた。
「マーヤ何をしているの?」
『お帰りラーファ、今神域の環境を変えている所だよ、まだ雨や太陽は無いけど木や草に花も咲いていたでしょう?』
如何やら道すがら思っていた通り、やはりマーヤの仕業でした。
マーヤのオシメを見て、お乳を上げます。
マーヤは上の空でお乳を飲みだしましたが、直ぐにお乳を飲むことに真剣になり「ゴキュゴキュ」と音を出して飲みだした。
「マーヤに聞こうと思ってたんだけどマーヤはこの神域をどんな風にしたいの?」
『うん、理想は外の世界を神域の中で実現する事かな?』
それで木や花や草が在ったのね。
『その為に今試行錯誤しているのが命をめぐる循環なの』
『色んな循環が外の世界ではあるけど神域では神力を使って代用しようと思っているから、それに合わせるのに大変なの』
『見た目は外の世界と同じ様に見えるけど、実際は神力でそう見える様にしているのが目標だね』
「それだと生き物と同じ体をしているけど、神力で動くゴーレムに成るの?」
『ゴーレムじゃ無くて神石が生命活動を制御している生物になるよ、神域の木も草も虫も動物もね』
「それだと魔石を持っているの?」
『うん、神石に成るけどね』
「木も?」
『うん、木も』
「草も?」
『うん、草も』
「虫もそうなの?」
『そうだよ虫も動物だって皆神石を持って動くことに成るよ』
「神域ってダンジョンなの?」
『いいえ、ダンジョンじゃあ無いよ、此処は神域なの』
「でもそれって、魔石みたいな神石を生き物に見える物全てが持っているって意味だよね」
『其の通りだよ、神石は神域が管理しやすくするための札であり道具の様な働きをするんだよ』
『ダンジョンとの違いで大きいのは、神域の神石生物は親から生まれて子を産んで死んでいくんだよ』
『木や草なら花を咲かせて受粉して実が出来る様な事が起こるんだ』
『でも、その先の倒木などを分解するキノコまでは作ったけど、死んだ動植物や排泄物を分解する生き物は神域の作用で代用しているんだよ』
『ある程度分解が進めば神域が作用して分解を進めて、土の一部や植物の養分と成り、結果生命の循環が実現するの』
「じゃあ普通の生物とはどこが違うのよ」
『それはね、生物と魔石や神石を持つ生物の違いは生命活動を自立して維持してるか石の魔力を使って維持しているかの違いなんだよ』
「分かんないわ、石が無くても関係なさそうよ」
『魔石や神石を持つ生物は生命活動に石の持つ魔力を使うんだ、魔力を使うと使うエネルギーが少なく成って、更に生物的に強く成れるんだ、代わりに欲望が無くなったり少なく成ったりするけどね』
「ものすごく大変な事だよ、欲望って生命活動には絶対必要な物よね」
『魔力で生命活動を行うと本来の生命活動で出て来るホルモンとかの情報が出て来なくなるから感情や欲求が無くなったり弱く成ったりしてしまうんだ』
『その感情や欲求を魔石や神石が欲として作り出して行動させているのが魔石生物や神石生物なんだ』
「じゃあ、魔石生物と神石生物の違いは何処なの?」
『魔石生物と神石生物の大きな違いはコントロールできる範囲が普通の生物みたいに生まれて成長して死んで行く事が出来るのが神石生物で、其れが出来ない食欲だけなのが魔石生物なんだ、まぁ魔石の等級によって神石に近づくけどね』
「神石で成長をコントロールした生き物よりも神石が無い普通の生き物を連れて来た方が悩まなくて済むよ?」
『目に見えないか小さい生き物は数が多くて管理出来ないから持ち込まない様にしたいの』
「虫が嫌いなのね」
『違うよ、単純に神域の環境が破綻するからね、外と違って小さな空間だから単純な環境のままにしたいの』
「もっと単純にゴーレムで作れ無かったの?」
『ゴーレムの様な知性を持った魔道具は作れても感情を持つことのできるゴーレムは作れ無いって』
『感情は生命活動の中から出て来るからゴーレムみたいに作れ無いんだよ、作れるならもうそれは生物だよ』
『敢えて生物を作るとしたら此の泡宇宙の全てを作る必要が在るんだよ、それが天地創造に成る訳』
マーヤはお乳を飲み終わると念話で疲れたのか寝てしまった。
如何やら体の要求に頭の方が抗えないようだ。
判断して動くゴーレムは作れても人間の様な感情を持つゴーレムは作れ無い?
エルフが成りたいと願う魔石生物の実態は、感情を失った食欲だけの生き物だったわけです。
生物はダンジョンと共鳴しない?、魔石生物の発生した原因は?、飛竜の様なダンジョン外に生息する魔物は?
これらの疑問は別のお話に成ります。