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第28話 薬の木(3)

二人での食事です。

 ビェスが今泊っている宿を教えてくれたので、ラーファも村長に挨拶する前に宿を取るつもりだ。

 今は1軒のお店の前に居る。

 お昼時なので、ビェスに誘われて食事を共にする事に成った。


 「ここが僕が行きつけでおすすめの美味しい料理が出るお店だよ。」

 そう言ってビェスが料理屋の中へ入って行く。


 「1階は村人や行商人が主な客で、2階が予約席に成ってるんだ。」

 と言って中に入って、後ろを振り向くと。

 「ここは僕の食器を預けているから、何時でも気兼ねなく食事が出来て料理の美味しい店なんだ。」

 ビェスの行きつけと言うのは本当のようです。


 ラーファもお店から漂って来る美味しそうな匂いに惹かれて中へと入って行った。

 お店の中は昼時と在って若い村人や商人達が食事をしていて雑然としている。


 ビェスはその中を2階へと続く階段へと進み、階段の上に居た店の使用人に2人掛けの席が空いているか確認している。

 ラーファは階段を上がりながら階下の村人や店の使用人の視線が自分に集まっているのを感じて居心地の悪い思いをしていた。


 『昨日までラーファを追っていた人達だから、ラーファを見るのは仕方が無いよ』

 マーヤの慰めにもならない諦めるしかない言の葉がラーファに突き刺さる。

 『髪の色を変えててもあまり変装に成って無かったね』


 『そうみたい、もっと色素を多くした方が良かったかも』


 さっさと2階へ階段を上がるとビェスが確保してくれたテーブルへと向かう。

 ビェスがテーブルの側に立って待っていた、椅子を引いてくれたので座らせてもらう。

 ラーファが椅子に座ると、ビェスも向かいの椅子に座った。

 「ありがとう、ビェスはお姉さんか妹さんでもいるの?とても自然だったわ」


 「妹のアンナがいるけど、アンナは椅子を引いて上げてもお礼なんか一つも言わないよ。」

 「それよりもお腹空いたから、早く注文して食べようよ。」


 なんだかビェスが慌てて話を変えたのがラーファには可笑しかった。

 ラーファもお腹が空いているのは同じなので、メニューのような物が無いかと探す。


 店の使用人の雰囲気が少し緊張している様だが五月蠅いよりはましだろう。

 樹人が貴族だと勘違いされている事を思い出したラーファは、あまり気分は良くなかった。


 気を取り直して、改めてお店にメニューが無いかと探したが見つけられなかったので、ビェスに聞く。


 「ビェス、おすすめはある?」

 待ってましたとビェスが勧めて来る。


 「ここの一番美味しいお勧めはビーツ料理だよ。」

 「サラダにスープ、漬物まであるよ、コースで食べれるから一緒に食べようよ。」


 「それは楽しみね、ラーファも同じものでお願いするわ、でもお酒は飲まないから果汁かお茶にするわ」

 「僕は山ぶどうのワインにするから、ラーファは山ぶどうのジュースにすれば良いよ。」


 ビェスがお店の使用人に料理と飲み物を頼んでいます。

 こうしてみるとビェスも成人した男性に見えます。

 ラーファはビェスを子ども扱いしていた事に気が付いて、今後は成人男性なんだと思う事にした。


 店の使用人が二人、ビェスとラーファの前のテーブルにナイフやフォークとパン用のお皿を並べて行きます。

 フォークを使っている事からビェスの家は手づかみで食べる事を嫌っているのでしょう。


 どれにも櫂と槍を交差させた物を何かの枝で囲ったマークが描かれています。

 ラーファは櫂と槍の珍しい組み合わせにビェスの家の家紋の由来を聞きたいと思った。


 正餐は飲み物とカナッペで始まった。


 飲み物は山ぶどうのワインとジュースで香りは酸味を感じさせるけど飲んで見ると意外に甘かった。

 カナッペは小ぶりの黒パンの上に白いバターぽい物が乗って居たので聞いて見ると豚の脂身を塩漬けしたものだった。

 脂身の上に炒めて香りを出した、緑色のニンニクの茎が添えられている。

 食べて見ると意外とあっさりしていてバターより食べやすくニンニクが豚の臭みを感じさせず美味しい。


 スープはビーツで色付けした赤紫色のスープで上にサワークリームぽいヨーグルトが乗って居た。

 酸味が程よく、中に入ってる野菜も肉も柔らかく存在感が在るのにとろけるような美味しいスープだった。


 メインの肉は鹿肉で程よく熟成されていて掛けている甘めのソースはビーツの赤紫の色だった。

 メインと共に出されたサラダはビーツにニンジン、玉ねぎ、茹でたジャガイモ、緑色の豆、キュウリを細かく賽の目に切った物とキャベツのマリネを合わせて在った。


 パンとして出されたのは黒パンと鹿肉のパイ皮包で食べやすいように8等分に切れ目が入れて在った。


 最後に出されたのは、ニョッキ風料理でビチェンパスト共和国にも似た物が在るそうだ。

 小麦粉を捏ねた生地にチーズやキノコを炒めた具を包み団子にしてミルクを入れて煮込んだ物で、ビェスが言うにはおばあちゃんの味がするそうだ。


 食後のお茶はビェスはクコの実が入ったハーブティーを私は麦焦がしが在ったのでそれを飲んだ。

 自分で作った麦焦がしと比べても美味しさは同じぐらいなのでラーファは自作の麦焦がしに自信を深めた。


 1刻(2時間)程の時間を掛けてゆったりと食事をしたので、そろそろビェスが村長の家へ行く頃に成ってしまった。

 食事の料金は銀貨3枚と意外なほど安かった。


 ラーファが出そうとしたら、ビェスが自分に出させてほしいと先に払ってしまった。

 「これはねラーファ、貴方と出会って初めてのデートなのだから、誘った僕が出さないと誘った意味が無いんだよ。」


 と言われてしまえばラーファもお礼しか言えなくなる。

 「ごちそうさまでした、此のお礼は何時かお返ししますね」


 「ああ、期待してるよ。」

 と少し目を眇めて見る視線にラーファは腰が砕けそうな色気を感じてしまった。

 急いで笑顔で取り繕うと、二人で店を出た、もう他人の視線は気にしなくなっていた。


 広場に戻ると、ビェスは村長の家へラーファは宿を取りに行くので分かれる事になった。

 「では、1刻(2時間)後に村長の家で待っているよ。」


 「はい、ではまた後程」

 ラーファはビェスと分かれると、先ほど教えて貰った広場の南にある宿へ向かった。

 宿は鳩が巣ごもりしている看板で、やま鳩の塒と名前が書いてあった。


 商人の一団が止まる事を考えて作られて居る様で、広い庭と厩などの施設が在り、建物も3階建ての建物がコの字に建てられていて、100人位の集団が一度に泊まれるぐらい大きかった。


 ラーファが受付で宿泊の手続きをして、料金を一月分の銀貨30枚を支払い夏を此処で過ごすかもしれない事も伝えた。

 ラーファの考えではこの村を中心に各村々を日帰りで訪れて怪我人の治療を行う積りだ。


 宿の部屋は風通りの良い東向きの東棟の2階で東ー215号室だった。

 部屋に入って中を確認すると直ぐに神域へ入り、マーヤの待っている家へと歩いて行った。


 「マーヤ起きたの?」

 眠っているようなので声を掛けてみた。


 『まだ眠いよ、でもお腹空いた』

 マーヤの寝ぼけた様な念話が聞こえて来た。


 『神域を変化させていたら面白くて、でも眠くなっていつの間にか寝てた』

 如何やら神域を色々弄って居て寝るのが遅くなったようだ、寝不足になるぐらいなら早めに寝れば良いのに。

 寝ぼけたマーヤを抱っこして乳房まで口を持って行くと半分寝ながらお乳を吸いだした。


 お乳を吸いながら寝てしまったので、ゲップをさせてオシメを替えベッドへ寝かせた。

 マーヤの寝姿を見ながらラーファはこの様子だと夕方まで寝ているだろうと思った。


 どうも神域を弄るのに夢中になってつい先ほど寝落ちした様に見える。


ラーファは銀貨3枚が安いと思っていますが、高級宿の1泊が銀貨1枚します。

ラーファがデート中にマーヤは神域の改造にのめり込んでいたようです。

どんな魔改造か分かるのは、少し先に成ると思います。

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