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第20話 (閑話)ベロシニア子爵(3)

ベロシニア子爵の閑話の3です。

馬車の中の出来事や、その後の展開です。

 ベロシニア子爵は大公殿下の前に跪きながら、忸怩じくじたる思いを募らせていた。


 思いのほか簡単に抵抗も無く捕まえたと思っていたイスラーファは、逃げるチャンスを狙っていただけだった。

 馬車の中で大公殿下へ献上する前に武器など隠し持ってい無いか確認しようと、体を探って居たら思いもよらない高価な魔道具のゴーレム核を持っていた。


 睨みつけるラーファを意識しては居たが、無視をした、恨むなら逃亡者と成ったその身を恨め。

 他にも無いかとイスラーファを見ると、胸の一部が濡れている様だ、盛り上がった先端が。


 兵士に乱暴に扱われて怪我でもしてい無いか心配して見ていると、ふと懐かしい乳の匂いがした。


 もしやと思って、服の上から胸を掴み揉んでみると、小ぶりだが弾力もあり中々掴み心地が良いなと思ってしまった。

 そのまま言葉が出てしまったのは不味かった。

 「はは、樹人も女には変わり無いな、胸が小さくとも柔らかく掴むと弾力的で張り?・・・」

 張りと言うより凝り? それに服が更に濡れて来た?


 思わず、胸の中に手を入れようとしてしまった。

 大公殿下の後宮に入る者に直に手で触れるような事は断じてダメな事だが、この時は確かめたくて我を忘れていた。


 乳が出ているのではないか?


 確認する事は出来なかった、イスラーファの魔術で昏倒させられたからだ。

 だが間違いは無いだろうイスラーファは最近子供を産んでいる。


 ベロシニア子爵邸へ付いて、いくら待っても降りてこない事に不信を抱いた使用人がドアを開けてベロシニア子爵が馬車の床に倒れているのを発見した。

 同乗していたはずのイスラーファは影も形も無く消えていた。


 幸い使用人に声を掛けられると気が付いたので、自分で起き上がって馬車から降りた。

 馬車から降りたベロシニア子爵が最初に思ったのはイスラーファが馬車から降りたのは何処か?だった。

 ベロシニア子爵の周りで騒ぐ使用人を無視して、異変に気が付かず恐縮している御者を問い詰めた。


 御者によると、北門の砦を出て、第3城壁内の街中へ出るまで止まる事は無かったそうだ。

 第1と第2城壁の間を通り、その先のトンネルを抜けて第3城壁の中の市街地へ出るまで止まることなく走り続けた。

 そして市街地に出た後、交差点が何か所か在り、そこで馬車のすれ違いで何度か一時停車をしたらしい。

 イスラーファが馬車から逃げたとしたらその時だろう。


 長年仕えて来た御者が、最後まで馬車内の異常に気が付かなくて申し訳ないと頭を下げて謝罪した。

 御者の怠慢ではあるが、イスラーファに気絶させられたベロシニア子爵の矜持が御者の罪をとがめる事を許さなかった。

 「よい、そなたの怠慢と言うより我の油断が招いた事態だ、気にするな。」


 イスラーファは馬車から降りて、そのまま城門の外へと出た可能性が高い。

 城門は入る者へは入市税を取り立てる為に改めるが、出る者には特段問改める様な事は無い。

 イスラーファも簡単に門から出て行っただろう。


 急いで各門へ使用人を走らせる、遅いかもしれないが未だ門を出て居なければ門で留める手立てをしなければ成らない。

 第3城壁に在る東西南の3つの門とベロシニア子爵が砦守であるベロ大橋を守る北門へと知らせを送った。

 ベロシニア子爵は大公殿下の宮殿へと報告の為急いで向かった。


 而して大公殿下の前に跪き己の失態を報告した次第だ。

 ベロシニア子爵の報告と対応を聞いた大公は深く考え込んでいる。


 ベロシニア子爵の思う所では大公殿下は美女と名高いエルフを自分の後宮に入れて他の大公や王へ自慢したかっただけの言わば出来心でしか無かった。

 それが、魔術医で魔術師で子供を生んだばかりのエルフの女へと価値が変化したのだ。


 専属の魔術医を抱えられれば、子孫繁栄、寿命も延びるのは確実となる。

 エルフの魔術師が居るだけで、他の権力者は大公殿下を侮れない実力者と忖度して来るだろう。


 そしてエルフの子供を手に入れられれば親のエルフを臣従させる事はたやすいだろう。


 つまり、逃げられても「残念だった。」で済ませられる事が、政治的、軍事的に重要度が跳ね上がったのだ。


 大公殿下は人をやって一人の男を呼びつけさせた。

 部屋へと入って来た男は、細身だがそれは着やせして見えるだけで鍛え上げた肉体は鋼のような力強さを感じさせた。

 10代前半と思しき子供を連れている。

 茶色い目と髪の色をした男はガルシアと大公殿下に言われて私に名乗った。


 「ガルシアと申す、これは倅のビェストロ、ベロシニア子爵様にはお初にお目にかかります。」


 ガルシアと名乗った男は、ビチェンパスト共和国出身の傭兵で黒の海まで手下を率いて商人達の船団の護衛をしながらやって来たそうだ。

 子供も頭を下げただけで後は無言で佇んでいた。


 「シニア子爵、こ奴はな海賊も恐れる海の傭兵じゃ、ビチェンパスト共和国では最強の傭兵団の団長じゃ、息子のビェストロも中々の面構えよゆくゆくは父の後を継ぐだけの気骨を持って居る。」


 身分が低いと思われる不信な男を大公殿下は親しげに接している、子供へも声を掛けられている。

 恐らくビチェンパスト共和国の重鎮の一人と察せられる。


 ガルシアが率いる護衛船団は中の海で有名な海賊達からも一目置かれていると大公様の前で自慢している。

 黒の海の独立商人共の護衛としてキラ・ベラ市まで来たそうだ。


 そんな男を大公殿下が呼び出したのは訳が在った。

 「シニア子爵、このガルシアと呼ぶ男は、傭兵団の頭と言うだけで無く鷹の目のスキル持ちじゃ。」


 大公殿下はガルシア傭兵団を言い値で雇うとベロシニア子爵の下へと付けた。


 ガルシアが黒の海から陸へ引き連れて来たのは、傭兵団の内の50名だけだそうだ。

 黒の海の独立商人達が帰る一月後まで金貨200枚で全員を雇い入れた。

 そして大公殿下の親衛隊から1個中隊50騎を自由にして良いと貸し出して下さった。


 ベロシニア子爵はガルシアや親衛隊の隊長を自宅へと誘い、共に帰ると部屋へ招きイスラーファ捕縛への大まかな事を話し合った。

 その結果、ベロシニア子爵はイスラーファの人相や特徴を記した手配書を作成し、周辺の村々へくまなく周知するように親衛隊2騎を一組とする分隊に分けて派遣した。


 そうしてたった2日でイスラーファを探し出す体制を作り上げた。

 村からイスラーファかもしれない人物の連絡が在れば、ガルシアを入れた10騎で構成された小隊を派遣しイスラーファか確認する。


 疑わしい人物が居ればすぐさま騎馬にて連絡をする。

 連絡を受けたベロシニア子爵は本隊を引き連れて出発する。


 其れと同時に、ベロシニア子爵の率いる残りの配下もイスラーファを包囲するように周りの村々へと連絡し村から人を出させる。


 全てはイスラーファを確実に捕らえる為の手配だった。


 イスラーファ、今度は絶対逃がさん、お前を捕らえる為、眠り薬や煙玉、魔術の行使を邪魔する魔道具と薬を用意した。


 1度は逃がした、だが2度は逃がさん!


ラーファ達が思っていたような捜査は初めからありませんでした。

ラーファ達はしなくても良い危険なかくれんぼにわざわざ自分から飛び込んだようです。

罠を張っている中へ飛び込んだ獲物ですが、計画通り逃げれると良いのですが。

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