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第18話 四面楚歌(7)

追手が来ました。

ラーファ達は予定通りに逃げる積りです。

 しばらく下り気味の山の中を南西へ進み、木や藪でゴーレムが進めなくなったので、停止させ核を回収した。

 残った土を足で散らし、その後も山の中を南西へと歩いて進んだ。


 『ラーファ、追手の4騎が先ほどまでラーファが居た丘に着いたよ』

 うまく姿を隠せたか心配だ、恐らく鷹の目スキル持ちが居るだろうから直接見える場所だと見つかってしまう。


 丘から見えない木陰で神域へと入って、今日の昼の移動は終わりにする。

 次に動くのは追手が居なくなるのを待ってからに成る。


 先ほどの村で買い込んだ燻製のチーズとハムを食糧庫へと入れて、牛乳の入った壺とハチミツはこの後使う予定なので台所へ持って行きます。

 久しぶりの甘みは楽しみです、ナンよりも厚みが在って柔らかいパンの焼き物を作ろう。


 土魔術でガラス状の大きめの器を作ります。

 材料を食糧庫から持ってきます、卵はガチョウの卵が在るので、少な目で良いでしょう。

 この卵はキラ・ベラ市へと移動する途中の村で、お釣りが無いからと押し付けられた物の一つでした。

 長閑な農村でのひと時がとても遠い日々の出来事のように思えてなりません。


 器に卵とハチミツを入れ、グルグル混ぜながら牛乳を入れる、後お塩をひと摘まみ。

 小麦粉とパン種をザックリと入れて混ぜながら全体の硬さを見ます。

 やや硬めだと大きくしても美味しく焼けるのでやや硬めにします。


 後は上に布を掛けて1刻(2時間)程置いて発酵させます。

 倍の大きさまで大きく成ったら発酵は終わりです。

 潰して捏ねて、拳ぐらいの大きさに分けて形を整えたら、フライパンで焼きます。


 膨れてぶつぶつの穴が潰れなくなったらひっくり返して、両面を焼いて出来上がりです。

 全体にぶつぶつの穴が沢山ある、ほのかな甘味のパンの焼き物の出来上がりです。


 焼けたほのかに甘いパンにバターを乗せ燻製チーズとハムをお皿に添えて、麦焦がしのお茶で夕食にします。

 久しぶりの甘みに幸せを感じます。

 『マーヤもハチミツ食べたい』マーヤのおねだりです、適えて上げたいのですがダメです!


 『マーヤ残念だけどハチミツはマーヤが大きくならないと病気に成るかもしれないので食べられないわ』

 『ええ、そんな!』甘みに興味を引かれるのも彼の方の知識による物なのでしょうね。


 マーヤがまだ食べた事も無い甘みに興味を引かれています、赤ちゃんでも女の子ですね。

 でもダメな物はダメ、ハチミツは赤ちゃんには危険な食べ物です。


 『ラーファのお乳が一番安全で美味しいから、甘いのは離乳食が終わるまで待っててね』

 マーヤは好奇心が強いから、特に食べ物は注意しないと。


 マーヤに安全で美味しいお乳を上げます。

 マーヤをお風呂へ入れるとお風呂の中で気持ち良かったのか寝てしまいました。


 寝たマーヤが重たくなったような気がします、生まれて20日近く過ぎました。

 5月のはじめ頃生まれたマーヤも6月に入れば、もっと成長して重くなるのでしょうね、それが楽しみ。


 外は日も暮れて星明りの暗い夜空が広がっています。

 マーヤの次の授乳まで夜の山中を移動する事にします。


 昼間、騎馬の人達は丘の上まで来たけどそれ以上進む事はありませんでした。

 マーヤの空間把握では村に7人とも泊っているそうです。

 昼間逸れた道まで戻って、街道をゴーレムで西へと道なりに進んで行きます。


 一度授乳で神域へ入りましたが、夜4時(午後9時)まで進んで、今日の移動は終わりです。

 星明りの下ではゴーレムで進んでも歩く速度と変わりないようです。


 『ラーファお疲れ様』

 マーヤが優しく迎え入れてくれました。


 神域へと戻り、授乳やお風呂に入れたりとお世話しているとマーヤが寝てしまったのでラーファも寝ました。

 夜中と朝早くに起きて授乳しましたが、オシメを替えるのも、授乳も、ゲップをさせるのも半分寝ながらしていました。


 昼の5時(午前9時)ごろ起きて、マーヤのオシメを替えて授乳しながら半分寝ています。

 でもマーヤの次の念話で眠気が吹き飛びました。

 『ラーファ昨日の馬に乗った人達が来てるよ』


 『昨日の騎馬の人達ね、何人来てる?』

 昨日村に泊まったのは7人でした、その内の何人くらいが出て来たのでしょう。


 『6人馬に乗った人が、道を西へと馬を駆けさせて去っていったよ、後2人馬に乗った人が村人を30人連れて、ラーファが夜に道から逸れた場所まで来てる』

 6人が先に行った? 村人を連れて来ている? 道を逸れた場所まで来ている?


 ついにキラ・ベラ市の追手が来たのは確定です。

 村人を30人引き連れているのは、馬に乗った人が村人を徴集したのでしょう。

 それに先行した6人は、この先の村へ村人を徴集しに行ったのでしょう。


 最後にラーファが神域へ入る為に道から逸れた場所が、追手にはわかるスキル持ちか狩人のような鋭い観察眼の持ち主が居るのでしょう。

 追手の人数が増えているが、夜中に合流した人が居るようですね。


 やはり明るい内の移動は見つかりそうだ、移動は専ら夜にして、神域を出る時に周りに追手が居る様なら神域から出ない方が良い。


 それにしてもマーヤの空間把握のおかげで安心して神域を出入りできます。

 これがラーファの危機察知だけだったら7キュビテ(10m)ぐらいしか分からないので、監視が居ても近くへ行くまで分からないでしょう。


 マーヤに周辺の地図を念画像で出してもらいます。

 『思ったより早く追手が来たから、南へ飛んで逃げるのを明日にでも行う事にする』

 地図を見ながら近くにハンググライダーを飛ばすのに都合の良い場所を探す。


 『マーヤ、此処はどうだろう』

 今居る場所から実際に歩く距離にして、南西へ7ワーク(10km)離れた場所に周りの尾根より高い所が在る。

 頂上には岩場が在って、そこからハンググライダーを飛ばせそうだ。


 『夜に此の谷間の川を渡る事に成るけど、せめて夕方の日が在る時に渡ろうよ』

 マーヤの心配も解る、川を渡るのは夜は危険だろう、小さな小川だけど見えないとやはり危険だ。

 見つかる危険と比べても此処は日の在る内に渡った方が良い。


 此処から川までは1ワーク(1.5㎞)の下りだけだ、

 日の沈む1刻前の昼11時(午後4時)に神域を出る。

 神域を出る前にマーヤに神域の周りを空間把握で調べて貰ったが、人影は無かった。


 神域を出て南西へと山を下って行く、藪の様な低木や茎の長い草が茂った歩きにくい山だ。

 ラーファは藪漕ぎをしながら下の川を目指す。


 もう直ぐ川に着くと思った時、猛禽類の様な「ピーッ」と言う音が聞こえた。


鷹の目のスキルは厄介だと思いますね。

ハンググライダーで逃げ去る事は決めている物の、ハンググライダーの練習が出来ていないのが心配ですね。

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