第17話 四面楚歌(6)
上着を作っています。
ラーファがシャツの制作に挑戦を始めたが最初から躓いてしまった。
ラーファは貫頭衣のようなものを作ろうと始めたので、マーヤが彼の方の知識から型紙をラーファの体形に合った作りにして布地から切り出す事を提案した。
ラーファも彼の方の知識には敬意を払っていたので、一も二も無く賛成して型紙から作り始めた。
彼の方の世界とは長さなどの単位の違いは在る物の、着る人の違いは無いので、単位の変換が分かると型紙は直ぐに出来上がった。
貨幣から棒銅を作った時の残り物の亜鉛と銅から真鍮が作れたので、シャツのボタンとして使った。
最初に出来たシャツにはポケットも襟も袖口も無かったが、ラーファの体形にフィットした着心地の良い物が出来た。
こちらの世界では決められていないが、彼の方の世界ではボタンを留めるのは男は右前、女は左前に成っているので、作ったのは左前で留めるシャツに成った。
それで気分が良く成ったラーファが次に作ったのが、ブドウで染めた薄紫色の開襟シャツで袖口を簡単にボタン一つにした物だった。
『なんだかおしゃれな服に成ったね、装飾されて無いけど体の線に沿った美しさがある上着になったと思う』
マーヤがほめてくれました、これでラーファも自信が付きました。
ボタンも白銅と呼ばれる物を使いあまり目立たない様に小さめにしました。
白銅に使うニッケルはミョウバン石を取った蛇紋岩から微量取れたので錬金で製錬して銅と合金にした。
型紙が在ればラーファでも上着が縫えることが分かったので、服の作成は一時止めます。
『逃亡者として追手との追いかけっこを慎重に進める事にするわ』
『なんだか追いかけっこが遊びに聞こえるわ』
マーヤ、ラーファは真面目に追いかけられてるのよ。
布地を買った村はキラ・ベラ市から直線距離で20ワーク(30㎞)ぐらい離れている。
もう少し西に在る村へも顔を出して追手を誘導する事にして、神域から出る。
ビューティを起動して、ゴーレム馬で西へと移動した。
今日の交換品は麦焦がしです、ホレツァの町の宿屋の女将さんが作ってくれた物ですが、ラーファも何度か挑戦して美味しい麦焦がしを作ったので持ち込んでいます。
そして今日はサプライズとして魔道具のお茶セットを持ち込んでいます。
麦茶を村人に飲んでもらおうと、土魔術で作ったお茶を飲めるぐらいの小さい器も用意しています。
ジョモス村と名前が付いた村は、ラーファが訪ねるとしばらく門前で待たされたが、長と相談すると村内へ行っていた男が帰って来て言った。
「村の中に入って良いと村長から許しが出たから村の中の広場で商いをするように、それ以外の場所へは行っては為らない、その時は処罰する」
村長から許されたのなら、乳製品を中心に食料品を追加で買って、村人に顔を見せて移動すれば良いかな。
村の中の広場は門の前に在る広場で日ごろから行商人が店を開いて居る様で、地面に布を広げて商いの用意をすると、直ぐに村人たちが寄って来た。
「お前さん、この村は初めてだろう、何を商うのかい?」
と小柄で鋭い目をしたおばさんが近寄って来て声を掛けて来た。
「初めまして、小さい商店ですが色々と村々から仕入れて町で売っています」
と村に仕入れに着た事をアピールします。
「ラーファと言います、今日は乳製品が手に入ればと思いこの村に寄って見ました、今後ともよろしくお願いします」
何人かに同じような挨拶をすると、村人はそれぞれに売り物に成りそうな物を持って来た。
その中から、チーズとハムを桜の木で燻した物で品質の高い数点を棒銅と交換した。
他の村人は燻製にした売り物は無かったようで、牛乳を容器ごと買ったぐらいで終わった。
売り買いが終わっても噂話と言う名の情報交換は此れから、集まったおばちゃんたちに用意したお茶セットで麦茶を入れる。
お茶は用意した錬金で作った器に入れて出す。
これが村人に受けてお金は無いが、ハチミツが在るからそれと交換してくれと1グッシュ(700g)とハチミツ1壺(正味50gぐらい)を交換した。
他にもハチミツを飼っている養蜂農家が居て合計4壺交換した。
闇の森ダンジョンのドロップ品のハチミツは全て食べてしまっていたので、久しぶりの甘みが手に入って嬉しい。
ラーファが北からラニ川を渡し舟で渡って此方に来て、これからキラ・ベラ市へ行く所だと話すと。
おばちゃん達の話ではキラ・ベラ市では被り物に花を挿すことが流行りだとか、黒の海から商人たちが来ていて中の海の品物が手に入りやすくなっているそうだ。
『ラーファ、空間把握の端っこに東から集団で駆けて来る人達を見つけたわ、追手かもしれないので早く村を出た方が良いと思う』
マーヤがスキルで近寄る人達を見つけた様だ、マーヤの言うように逃げた方が良いだろう。
切りも良かったので、村人に引き上げる事を伝え、購入したチーズとハムとハチミツを包み肩に担いだ。
牛乳を入れた壺は手に抱えた。
門を出て、門番にお礼を言って銅貨数枚を渡し、ゴーレム馬のビューティに乗り、近寄る人達の反対方向へと進んだ。
危機察知では分からないので、マーヤに聞くと近寄って来る集団は1ワーク(1.5㎞)まで近寄って来ている。
その速さから馬に乗った集団と思って良いだろう、本当に追手かもしれない。
ゴーレムをウォーク(並足)で歩かせながら、とっとと逃げ出すことにした。
それにしてもまだ事件から2日過ぎた今日で3日目なのに、追手が来るのは早すぎだと思う。
西に在る小高い丘へ登って、近寄って来る騎馬達の反応を伺う事にする。
本当に追っ手なら、ラーファの事を知ったら、直ぐに追いかけて来るだろう。
丘について、村を見下ろすと丁度10騎ほどの騎馬が村の門に着いた所だった。
姿から武装した兵士か貴族や商人の護衛かもしれない。
門番と話している様子で、その内の1人が急にラーファの方を見た気がした。
『ラーファ、今何かのスキルでラーファを見た人がいたよ!』
『うん、ラーファも感じた』
騎馬の集団の様子を伺っていると、その中の3騎が今来た道を引き返して行った。
2騎が馬を下りて村の中へと入って行く、村長と話すのだろう。
残りの5騎は村の入り口からラーファの様子を見張っている様だ。
一端彼らから身を隠す事にする、今後の移動は夜に行ってなるべく長く見つからない様にする。
丘の上から西へとゴーレムを走らせ道を外れて南西へと進める。
『ラーファ、彼らの内4騎が追って来てるよ』
マーヤが知らせてくれます。
怪しい騎馬の集団が接近しています。
ラーファ達の予想では、ラニ川の東でウロウロしていると思っていたのに違って来たようです。




