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第16話 四面楚歌(5)

大河ラニを渡る事が出来ました。断じて行えば鬼神も之を避くと言った所でしょうか。

雨の降った後ですから水量も多かった事でしょう。

 大河ラニを渡れた、ハンググライダーを使って空を飛んで対岸までたどり着いた時は、足が笑って力が入らなくなり、着地の走りでコケてしまった。

 幸い怪我も無く、ハンググライダーも壊れなかった。


 草地に寝転がり、意味も無く大きな声を上げて笑った。

 「アハハ!アーハッハッ、ヤーホーッ」


 『ラーファ、大丈夫?何処か打ったの?』

 終いにはマーヤが心配して聞いて来た。


 『いや、何だか、大声を上げたくなっただけさ』

 緊張や恐怖や楽しいと思う気持ちなどが混ざって気持ちが爆発してしまった。


 大声を出したおかげで気持ちも収まり、ハンググライダーを神域へしまい込む事にした。

 再び折りたたみ、神域の玄関の間に置いて置く、今後も練習を繰り返して空を飛ぶことに慣れていかなければと思う。


 今後追手に見つかり山へと追いつめられて行く予定だ。

 最後に山頂からハンググライダーで一気に追手から大空へと逃げ出す予定なので、練習しないと本番で失敗したらベロシニア子爵に捕まってしまう。


 大河ラニを渡った日は、川から離れた村の近くの森で神域に入って寝た。

 翌日、髪色変色ポーションの効果を医療魔術でキャンセルして元の髪色へと戻した。

 追手が良く知っているラーファとして行動して、しっかりと印象付けないといけないので。


 『マーヤこの辺の村では布地が作られていると思うわ』

 ラーファが神域を出て村を見ながら念話する。


 『どうしたのラーファ、布地ってどの村でも作ってると思うけど?』

 授乳が終わって寝ていた、マーヤの眠そうな念話が帰って来た。


 『最近毛を刈られた羊が飼われているのよ、それに川に近い方の畑に植えられているのは亜麻アマだと思う』

 まだ芽が出てそんなに時間が経っていないようで、1スン(約3cm)ぐらいまで成長した、麦とは違う柔らかい葉をしている。


 『この村なら、ウールや革にリネンも手に入りそうよ』

 朝早くから畑の手入れをしている農夫達を見ると、フェルトか革で作った帽子を被っている、作業用に着ている服は布地にウールで編まれた継が当てられている。


 『ラーファ、今日はフード付きのマントをして行く予定じゃなかったの?』

 マーヤが昨日と同じシャツとズボンだけで外に居るラーファを空間把握のスキルで知って聞いてくる。


 『大丈夫よ、玄関の間に置いているから、村へ行くときは被って行くよ』

 神域を開け、玄関の間のハンググライダーを置いてある上に無造作に置かれてあったフード付きのマントを取り出す。


 昨日、マーヤと今後の事を話した時、目立つのは頭に何も被って無いのも目立った原因の一つかもしれないと話し合ったからだ。


 大小の二つの布地を小さい方をフードに大き方をマントにして、二つを縫い合わせてフード付きのマントにした。

 拙いラーファの裁縫技術と錬金を組み合わせて、遠くから見ればフード付きのマントに見える物が完成した。


 背には新しく作った両肩に掛ける袋を背負っている、中にはお金とミョウバンを入れた袋や魔糸で作った大きな四角い布が入れてある。

 ラーファはマントを纏い、フードを被ったまま、マントを肩から後ろへとやると、村へと歩き出した。


 村はラニ川へと流れる2つの支流を堀にした環濠集落で、住んで居る人の数も多そうだった。

 村の街道沿いに作られた門へと歩いて行き、革やウール、布地を買いたい事を伝えると、門番から門の前の広場で待ってろと言われた。


 どうやら村の中へは入れてくれないようだが、門の前で買い取りは出来る様だ。

 広場で待っていれば村人が物を持ってやって来るらしい。

 ラーファを新人の行商人か旅人と思ってくれたようだ。


 魔糸で作った布を横に広げて、上にミョウバンを入れた袋とお金の袋を置いて待った。

 2コル(30分)ほどしたぐらいから村人が三々五々やって来た。

 ラーファはウールや革、布地を見ながら選別して買い取りするか決めて行った。


 期待していたように、ミョウバンを色止めや皮の鞣し用として欲しがる人は多く、ミョウバンと交換で手に入れた物も多かった。

 昼7前(午前中)の早めに、広げた布にウールや革と布地が積み上げられ、ミョウバンは売り切れた。

 ラーファが広げた布の四隅を括り出したのを見て、商いの終わりを感じたのか、村人たちは帰り出した。

 門番に、お礼にと棒銅を1本渡すと、肩の上に買い込んだ物を包んだ結んだ布を担ぎ歩き出した。


 結構重いので、体力の無いラーファでは村の側の人目の無い林まで歩くのが精いっぱいだったが、何とか人目に付かない所で神域へ運び込んだ。


 大陸をオウミ王国まで流れて来たラーファが見た限りでは、身分制度と服装の関係はほとんどなかった。

 身分が高いかお金持ちは良い服を着ているのは当たり前だが、かと言って身分の低い農民や行商人などの人々も同じ材料の柄物を着ている。

 生地が上質か質が悪いかの違いぐらいしか無いと言うのがラーファの結論だ。


 しかし、大きく違うのが男女差だ、男と女では子供の着る服からして違っていた。

 目立つのが被り物で、男は革かフェルトで作った物、女はリネンなどの植物から取った繊維で作った物を被っている。

 羊の毛などは男女とも一部分に使っているが、それだけで被り物にはして無かった。


 次に分かりやすいのは上着とスカート、上着は男物は丈が短く腰より上までの物、女物は最低でもスカートかズボンまで届く物で更に下までの物はお金持ちに多かった。


 スカートは女性しか履かないがズボンは男女どちらも履いている。

 マントを羽織るのは、商人や上流階級では男女を問わず当たり前のようにしている。


 色や柄物は誰でもが着ていて、カラフルだが、紺色などのように染色が難しい物や染料が高価な物は当たり前だがお金持ちや貴族しか着ていない。

 ベロシニア子爵などは高価なリネンに刺繍やレース編みされた見事な藍色の上着を着ていた。


 私が作れるのはスカートと下着位だけど、時間が在るのでシャツと上着に挑戦して見ても良いかも。


見つかって、逃げる作戦が始まりました。

追手より先行している事が前提の作戦ですが、策を弄さずにひたすら逃げる方が単純だけど確実だとマーヤもラーファも分かっています。でもベロシニア子爵への恐怖が何か対策をしないと捕まると思い込んでいるのです。

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