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第10話 キラ・ベラ市(3)

いよいよキラ・ベラ市へ入ります・・・

 もう直ぐ大河ラニを渡る唯一の橋が有る、キラ・ベラ市が近づいて来た。

 ある程度オウミ王国で使っている貨幣が手元に集まったので、キラ・ベラ市に長逗留出来るだけの銀貨は溜まった。


 住む場所を決める前にオウミ第2の都市キラ・ベラ市でしばらく逗留して、ダキエ金貨を両替したい。

 しかし、此処は、ル・ボネン国にまだ近いので長居はしたく無い、追手からもっと離れたい。


 キラ・ベラ市の近くまで来たので、ホレツァの町を出る時作った背負い袋を担ぎ、ゴーレム馬のビューティから降りる。

 「土へ還れ、ブラック・ビューティ、終了」手綱に魔力を乗せキーと成る言葉で命令して土に戻す。

 土の山の上に現れたゴーレム馬の魔核を拾い、土をはたくとパンツタイプのフレアスカートのポケットへ入れる。


 白い長袖のブラウスと藍色に染めたパンツタイプの裾の広がったフレアスカートは色白のラーファには良く似合っているとマーヤは思う。

 それだけに美人のラーファは目立つ、流通と情報の集まるキラ・ベラ市には近寄ってほしくなかった。


 ラーファが見渡すと、此処は大きな川の狭隘部で、橋が在る唯一の場所らしい。

 しかし、大きな橋だな。

 両岸は岩盤で水量の減った水面から橋までは高さ20ヒロ(30m)はありそうだ。


 橋の土台は石で頑丈に作られている、土魔術で作られているようだ。

 土台の上には石でアーチが幾つも作られていて、岸から岸へ真っ直ぐに架けられた、長さ70ヒロ(100m)もある立派な石橋だ。


 橋の幅も広く7ヒロ(10m)は在る。

 しかも車道と歩道が分けられていて歩道が一段高くなっている。


 買い物に訪れた村の乙名役の人達から聞いた話によると。

 大河ラニはオウミの闇の森ダンジョンから黒の海まで流れる大きな湿地帯が連なって川と成っている。

 その為川幅は広く周辺は湿地に成っていて川筋が良く分からない広い湿原が黒の海まで続いている。


 大河ラニの東側は王領で少しづつ開拓が進んでいる、その村も数十年前に開拓村として始まった。

 冬の終わりの雪解けは川幅を大きく広げ、開拓を始めた当時はその幅は200ワーク(300㎞)以上に成ったらしい。

 開拓が進んだ今はそこまで酷くない。


 ここで橋を渡り、真っ直ぐ南へと道を行けば此の国の首都オウミに着くらしい。


 橋の通行料金は銅貨50枚、これは一人が船で渡るより高いが荷物を持って渡るよりは安い料金だ。

 ラーファも支払いに困るような金額ではない。


 最近は私鋳銭の銀貨や銅貨を錬金でダキエ硬貨にするより、棒銀や棒銅にする方が簡単だし魔鉱物も使わないので銀貨や銅貨を棒銀や棒銅へと錬金している。


 そうは言っても小銭が必要な事もあるので、比較的程度の良い物は少し錬金で整形して残している。

 私鋳銭の中にはオウミ国の貨幣と同じ価値で扱われる物もあるので、私鋳銭かオウミ王国の貨幣かは区別して無い。


 『早く橋を渡ってお乳を上げるよ、そろそろお腹が空いて来る頃だろ?』

 橋を渡る人の群れが長く行列を作っている、早く並ばないと。


 『お腹が空いて来たけど、まだ寝てるよ』マーヤは純真で可愛いね。


 橋役人の居る柵の前に、橋を渡る人が何列かに分かれて並んでいる。

 見回してみて一番早そうな列の後ろへ並ぶ。


 馬車などは別の場所に固まっているので、荷物検査とか入る場所や料金が違うのだろう。


 橋を渡る料金を支払う列は少しづつ前へと移動して行く。

 ラーファの順番が来たので、棒銅を1本(銅貨50枚)役人に差し出す。

 橋を管理する役人が銅棒1本を受け取り、ベラ大橋だと役人の人が言ってた橋を渡り・・・。

 ええと、渡りたいのですが?


 お金を受け取ろうとする役人の後ろで見ていた偉そうな人が、お金の受け取りを手を出して邪魔をした。


 その偉そうな役人が私の顔を見て、私へ向けて指さすと言った。

 「お前の耳を見せて貰いたい。」

 一応お願いするような感じですが、口調は命令です。


 髪を手でかき分け、素直に耳を見せる。

 ピアスに闇魔術を付加して人の耳に見える様にしているが、魔術師が見れば違和感を持たれるかもしれ無い、私の闇魔術はとても拙い出来なので。


 「名前と何処へ何しに行くのか言え!」

 今度は明らかに命令です。


 「イスラーファと言います、此処からオウミの首都へ向かっています、魔術医で住む場所を探しています」

 何を知りたいのか分からないが、この場ではある程度正直に話す方が良いだろう、魔術医と言ったのは定住後の職業として考えていたから。


 偉そうな役人は少し考え込んだ後、此方を見て言った。

 「イスラーファとやら、詳しく聞きたい事が在る、手間を取らせるが私に着いて来る様に。」

 と橋の横に在る建物を指さして言った、魔術医と言ったのは間違いだったかも。


 彼は、私が支払ったお金を横に移動していた役人に渡すと、立ち上がって歩き出しながら話しかけて来た。

 「私はベロシニア・アースラットと言う大公様に仕える子爵だ、イスラーファ、話は部屋で聞く。」


 案内してくれながら話しかけて来た、偉そうな役人は貴族様でした。

 貴族が名前を明かしたのは、この先何かあれば「処罰するぞ!」と脅す為だと思う。

 貴族と知って無礼を働けば、大陸の国々では死刑もあり得る。


 「ベロシニア子爵様、何か問題でも在りましたでしょうか?」

 詳しく聞きたい事って?不安なので早めに内容を確認したくて聞いてしまう。


 「少し詳しく聞きたいだけだ、やましい事が無ければ何の問題も無い。」


 その言葉は怪しくてやましい事がある者に言う言葉だよね。

 『気を付けてラーファ、彼から魔道具の魔力を感じるわ』マーヤが警告を発しますが、遅かったようです。


 問題は、どんな魔道具で、ラーファの何に気が付いたのか、だと思う。


 橋を守る砦の城壁に在る小さな出入口を通りながら、奥に見える建物へと歩いて行く。

 この先にいったい何が待っているのだろう、不安に成って来た。

 『ラーファ、頑張って、いざとなったら神域に逃げ込むのよ』マーヤが励ましてくれます。


 しばらく彼の後を付いて行く、砦の中を奥へと進んで行く。

 『ラーファ、彼が持ってる魔道具は闇魔術に耐性を与える魔道具よ』

 マーヤが魔道具の性能を探ってくれた。


 最悪でした、ラーファの耳を隠す闇魔術は見破られたと考えてよさそうだ。


 砦の奥に作られている建物は、どうやら役人達が出仕する役所も兼ねている様です。

 ベロシニア子爵と名乗った役人は、役所へ入ると詰所に居る兵士を2名引き連れ、奥の一室へとラーファを誘い入れた。

 テーブル越しに椅子に座ってラーファにも座るように言った、2人の兵士はラーファの後ろに立っている。


 ラーファが座った椅子は、魔印章独特の魔力波が椅子の中から感じ取れる。

 どうやら嘘を見抜く魔道具のようだ。

 彼の目線もラーファの胸を見て居る様で、少しずれている、椅子の背を見ている様だ。


 「イスラーファ、貴方の正式な名前と身分とお聞きしたい。

 先ほど魔術医だと言われたが、何か身分を証明する物はお持ちだろうか?」

 言葉遣いが丁寧になった、緊張しているラーファを少しでも気を楽にさせる積りだろう。


 魔術医だからと言って何かあるのだろうか?裏が在りそうで怖い。

 だからと言って私に聞かれた事を話す他に選択は無い。


 「はい、名前はイスラーファ・イスミナ・エルルゥフと言います、身分証や魔術医の免状などの身の証は、今は持っていません」


 ラーファが教えて貰った、エルフの長達は魔術医と魔術薬のエキスパートの人達です。

 結婚してエルフと成った時、エルフの長一族に成ったら知らなければ成らないとして教えられた。

 此の惑星で最高の医師達でしたが、恐らく聖樹と共に火の中に消えました。


 ベロシニア子爵様は、私が言った事を書き込みながら、更に聞いて来る。

 「先ほども言ったが魔術医を証明する物は持っていないのだな。

 あなたには幾つか確認したい事が有る。

 先ず、エルルゥフと名乗るからには貴方は樹人か?」

 ベロシニア子爵様が隠したい事を聞いてくる。


 どう答えたらいいのだろう。


ラーファを狙う敵が湧いてきました。ホレツァの町の代官の願いは裏目に出たようです。

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