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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第1章 私はママで、ママは私?
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第7話・5 (閑話)代官屋敷でのお話

お代官様は、常識的な人です。

 その日ホレツァの町の代官イブンハディ・ルイザスは昼を妻のサブリナと食事を共にして子供たちの話をしていた。

 妻は長男には王都で文官として働いて欲しいと夫に息子を説得して欲しいらしい。

 イブンハディは武を好む息子には文官で出仕するのは難しいと思うが、妻の強い申し出に反対しずらいと考えていた。


 妻に息子に話してみると伝えたが、息子が密かに武官として王宮に伝を頼りに任官を働きかけている事を知っていた。

 妻の手前、話すだけ話して無理だったと言い訳でもするかと考えている所に、部下の警邏隊の隊長から、宿で強盗が捕まったと話が上がって来た。


 森の鹿と言うこの町でも最上級の宿で泊り客が別の泊り客の部屋へ押し込み強盗を働いて、3人が殺され、2人が重症を負って捕まると言う事件が発生したとの事だった。

 殺された3人と、重症の2人は共犯で強盗を自白している。

 即日確定犯として処刑の手続きをして良いだろう。


 犯行に至った動機は、若い女の一人旅で泊まった女が夕食の時に不用意にダキエ銅貨を持っている事を宿のおかみと話しているのを聞いた事が発端で。

 冒険者5人組は翌日の昼過ぎ、宿から人が少なくなる時を狙って部屋に押し入ったと言う事件だった。

 押し入った冒険者は反撃され、3人が殺され、2人が重症を負ったと言う顛末だった。


 代官が驚いたのは部屋に押し込みされた時、女が寝ていた為3人に抑え込まれたが隙を狙って魔術で3人を殺した部分だった。


 この女は3人に抑え込まれた時、魔術を詠唱して魔術行使をしたのだろうか、もしそうなら殺された3人は余程間抜けか、女が手練れの魔術師としか考えられ無い点だった。

 3人共心臓を堅い棒状の物で刺されている、土槍と言う物らしい。


 3人に抑え込まれて一人づつ殺して行った様だが、男達の油断を待ったのか?

 真っ先に声を出させない為に口を押さえられるだろうに、詠唱をどうしたらできたのか?


 男達は服を着たままだった、女の服でも脱がそうとしていたのだろうか?

 一人は剣を抜いていたとあるから、女を剣で脅して嬲るか服を切り裂くつもりだったのかもしれない。

 室内で長い剣を振り回すより、短剣の方が扱いやすいから女を脅す為に抜いたのだろう。


 女が抵抗しなかったので、夢中になって口を押えている手を放したのだろう。

 そんな状況ぐらいしか魔術で倒すなど難しいだろう。


 更に、外で見張っていた2人が部屋の物音を聞いて部屋へと入ろうとした時もそうだ。

 女は「強盗!」と叫んで魔術で男達に怪我を負わせた。

 この件では、詠唱を唱えずに魔術の行使を行ったと直接は言っていないが、状況的にそうだと言っているような物だ。

 そして、この2人には手や足に複数の硬い棒状の物、土槍が刺さっていると報告が上がっている。


 そう考えると最初の3人へも無詠唱で魔術行使していると考えられる。

 無詠唱で魔術行使を行うなどと言う事は。

 そんなことが出来るのは樹人ぐらいしか居ないと言う事だ。


 イブンハディは警邏隊の此の件の担当者を至急呼びつける様にと命令した。


 オウミ国から地方の代官や領主へ回覧された連絡事項の中に、ダキエ国の政変によりオウミ国へ樹人が入り込んだ場合、国王陛下へ早急にお伝えし下知を賜る事が書かれている。


 ムディライと言う警邏隊の隊長の一人が担当したと言う事で入って来た。

 「代官様、お呼びとの事でしたのでムディライ参上しました。」


 「ムディライお前に確認したい事が有る。

 お前は樹人を見た事が在るか?」

 とイブンハディ代官が聞くと。


 「いえ、樹人は一度も見た事はございません。」と答えた。

 真顔なので本当の事だろう。


 「そうか、では今回の被害者の女だが耳は見たか?」と尋ねる。

 樹人の特徴は尖った耳を持っている事だ。


 「耳でありますか?気が付きませんでした、髪を長く伸ばしておりましたので見えませなんだ。」とあいまいな答えが返って来た。

 大方見惚れて顔ばかり見ていたのだろう、樹人は美人だと聞いている。


 「何歳ぐらいの女だったか?」と尋ねる。


 「は、20歳かもっと若いかもしれません。」と思い出しながら答えるがそんなに若い女が冒険者5人を相手に出来るとは思えんのだが。


 「落ち着いていたか?」と尋ねる。


 「は、終始落ち着いた態度でした。」益々疑問に思える、手練れの魔術師で樹人なら若い見た目で老獪な魔術師でもあり得るのだろう。


 「体つきや顔はどうだった。」と尋ねる。


 「体つきは細身で背は5キュビテ半(165㎝)ぐらいでとても美人でした。」思い出して美人の顔を思い出したのか警邏隊の隊長のくせににやけている、このバカ者が。


 「お前はその女を見張れ、ただし、見つかるな、見つかりそうだと思うなら引け。」

 「ただし、どの方向へ向かったかだけは確認しろ。」

 とムディライに命令すると、彼が出るのも確認せずに王への報告書を書き始めた。


 報告書を書きながら、陛下はこの樹人をどうされるおつもりだろうかと考えていた。

 友好的に迎え入れられれば我が国にとって魔術の技術向上に有益な事は間違いない。

 他にも樹人の技術は大陸のどの国よりもはるかに進んでいると聞いている。


 陛下には出来るだけ友好的に迎え入れる方向で出て欲しいと思うのだった。


 翌日、ムディライから女が町を出てキラ・ベラ市方面へ南下して行ったと報告が有った。


部下を美人に見とれたバカ者と叱っていますが、自分もラーファが犯人に服を脱がせられる想像でヌフフと成っていた事は気が付いていません。

マーヤが見て居たら『男ってバカよね』とでも言っていたでしょう。

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