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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第6章 第1部最終章 別れ
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第87話 決意(4)

 ラーファはル・ボネン国の誘いに乗ってオウミ国を出ようと考ます。

 ル・ボネン国からカカリ村へ使節が5月の中頃やって来ると言う。


 船で出国する時に盛大に見送りする件は、一端保留になったようです。

 それよりもル・ボネン国の使節がカカリ村へ来てラーファと話し合う準備を急いで整えている。


 名を出さずに、エルフ系の見た目の女が船でオウミ国を出る様子を見せつけるのは攪乱程度の効果は在るかもしれません。

 それよりも、ラーファがル・ボネン国の誘いに乗ってオウミ国を出国する方が人目を引くでしょう。

 一時的にでもイスラーファが滞在すればオウミ国を出た証拠に成りますから。


 それに、友軍で在るル・ボネン国には海を渡って上陸した時からロマナム国と違っていきなり捕まえようとはしないで受け入れてくれました。

 傭兵団に襲われた時は後ろに誰が居るのか分からないので逃げ出しましたが、今はロマナム国が雇ったと分かっています。

 同じネーコネン一族ですが、ル・ボネン国に悪い感情は持っていません、それどころか迷惑を掛けたと思っています。


 ル・ボネン国次第なのですが、着いた後イスラーファと名乗らない様に説得出来ればと思います。

 その時ラーファの事を魔女と呼んでくれるのが最も良いのですが。

 別にエルフ系の女だと思われるのは問題在りません。


 ですが、エルフ系だとカークレイさまが言った『名を失ったダキエの女』で通すのが良いかもしれません。

 さすがに姫と呼ばれるのは勘弁かんべんです。


 半月程するとル・ボネン国の使節がイガジャ領に来ますが、彼らはマーヤの事はどう考えているのでしょうか?

 ル・ボネン国に行くのはラーファだけで、マーヤに付いては知らぬ存ぜぬを通したいですね。

 使節と話し合い、ル・ボネン国の考えを確かめて判断する必要があります。


 ル・ボネン国へ行く方法ですが、使節の帰りに同道するのは問題が在ります。

 神聖同盟に目を付けられているラーファが、オウミ国から出国して占領中のロマナム国を経てル・ボネン国へ移動?

 戦争中の国を横断するだけでも問題が在るのに、馬車だろうと地上を何日も旅をするのは危険です。


 それよりもワイバーンでル・ボネン国へ飛んで行くのは良い案だと思う。

 問題が在るとすれば、ル・ボネン国の代表を最低でも一人ワイバーンに乗せろと言い出しそうですな事ですね。


 『ねぇラーファ、問題はそこじゃ無いと思う、ワイバーンには訓練して無ければ乗れないと言って拒否すれば良いのよ』

 『一番の問題はオウミ国もル・ボネン国も手錠と首輪を持っている事よ』


 『マーヤ、考え過ぎよ、オウミ国はラーファに使ったりしないと約束してくれてるわ』

 『ル・ボネン国だってこれまで使う素振りも無かったから大丈夫じゃないかしら』


 『マーヤはそこまで信頼できないわ、オウミ国だって神聖同盟の件が無ければ王都で何が待って居るか分からなかったと思う』

 『ル・ボネン国はオウミ国より信頼は低いから、何が起こるか心配なの』


 『大丈夫よマーヤ、いざとなれば神域へ逃げて来るから問題ないわよ』


 『あのね、ラーファ、前にも言ったと思うけど首輪は神域へ持ち込めないのよ』

 『さらに首輪をされると認識を歪められて神域を開く事も出来なくなるの!』

 マーヤが怒って念話を止めてしまった。


 マーヤの言う通りだけど、簡単に首輪をされる積りは無いし、前回のロマナム国の襲撃で危機察知が洗脳には対応できない事も理解している。


 それにオウミ国の件もマーヤが言ってる様にラーファが国を出て行く事で考えは一致している。

 今回ル・ボネン国に出国すれば、オウミ国が対峙するのはロマナム国だけになるのは時間の問題だろう。


 ラーファがル・ボネン国の王宮前にワイバーンで乗り付ければ、事前に知らせたとしても大騒ぎになるだろう。

 でも、ワイバーンを見せるのは危険かも、竜騎士に送ってもらう方がより効果的かもね。

 そこまですれば、神聖同盟もラーファがオウミ国から出て行ったと確信するだろう。


 問題は、ル・ボネン国がネーコネン一族に周りを囲まれた国だと言う事です。

 ル・ボネン国からどこへ移動すべきか、それとも行方を眩ますか。

 神域を通ってマーヤの居るカカリ村へ戻るのは決めているけど、オウミ国へ戻ったと知られる事だけは避けなければ。


 ラーファの決意が決まったのでル・ボネン国へ行く前にするべき事に着手した。

 先ずは、王都への移住とおばばへの錬金術と新しい薬の作成方法の授業をマーヤへ引き継ぐ事、それに贈り物ですね。


 王都への移住の前に、ラーファはイガジャ家の人達に贈り物をすることにした。

 マーヤに頼んで用意して貰っているけど、準備に時間が掛かるので月末近くになってしまった。

 マーヤが創ってくれた贈り物が用意できたので飛竜舎に運び込んだ。


 魔女学園の飛竜舎におばばとカークレイ様を密かに呼び出し、其の贈り物を披露した。


 「これは飛竜の卵か?」カークレイ様は飛竜舎の孵卵器に収められた卵を見ながら不思議そうに聞いた。


 「はい、ワイバーンの卵ですが孵れば飛竜として育てられますよ」

 マーヤに頼んで神石ではなく魔石を持つようにして貰った。

 ラーファは、全部で6個の卵を見て8年前の孵卵器で孵したばかりの頃の飛竜の子達の姿を思い出して笑顔が浮かんだ。


 「どこで手に入れたんじゃろ?」おばばが不思議そうにつぶやいた。


 「私のワイバーンの卵ですよ、今年産んだ卵です」

 マーヤに頼んで手に入れたのは秘密です、ダンジョンに住むワイバーンは卵を産みませんし子育てもしません、神域に住むワイバーンだからこそですね。


 「5年後にはこの飛竜達も竜騎士を乗せて空を飛ぶ事でしょう」


 「飛竜と竜騎士の育成を間違わなければ、オウミ国は神聖同盟が相手でも十分対抗出来る力を持てるようになります」


 「どうかオウミ国とその国民を竜騎士が守ってください、ラーファに出来る最後のお礼です」

 おばばとカークレイさまに深くカーテシーをして、この8年間の感謝を表す。


 カークレイさまがラーファの両手を取って、跪くと頭を下げられました。

 「イスラーファ様、最後の最後まで恩恵を頂き、このカークレイ、オウミ国の全ての民に代わり最大限のお礼を申し上げます。」


 ラーファは慌ててカークレイさまに握られた手を引き上げます。

 「カークレイさま、お気持ちはありがたくいただきましたから、どうぞお立ち下さい」


 おばばは頷いて頻りに涙を拭いています。

 跪いて動かないカークレイさまを引っ張るラーファを包み込むように抱きしめてくれました。

 「ありがとうよ、ラーファ、本当に感謝するばかりじゃ」


 ワイバーンの卵の件はアニータさまから秘密裏に陛下へと知らされる事になり、アリスの王都への便に同乗してアニータさまも王都へ行くそうです。

 ついでに陛下にひ孫を見せに連れて行くそうです、ハードリイ君は生後4ヶ月寝返りが出来るそうです。


 領兵竜騎士科の全員でこのワイバーンの卵を孵すことになり、膠着こうちゃくした戦争の暗い雰囲気の中で其処だけ明るい雰囲気が漂う空間に成ってます。


 ラーファは4月最後の日に王都へ移動し陛下と面談する事に決まった。

 王都でビチェンパスト国へ船団が出るまで王都のイガジャ侯爵様の下屋敷に住んで良い事に成り、そこで待機する事も決まった。


 それに合わせておばばから新しくミンが魔女に任命された。

 ミンは王都で魔女学園を開く準備をする事に成っている。


 ミンは攻め入る軍への伝令として頻繁に行き来していた時知り合った、下級貴族の騎士と去年結婚していた。

 妊娠まではカカリ村とダンケル城塞都市で住まいが別々だったが、飛竜便のアリスと組んでいるので頻繁に行き来していた。


 ミンの妊娠を期に夫婦で夫の実家が在る王都へ帰っていた。

 ミンの夫が、王都へ帰還中に近衛騎士として任命され、そのまま王都に留まる事と成った。

 ミンの夫の軍功が評価されての事だ。


 王都におばばの弟子の魔女を招き魔女学園を開きたいと常々考えられていた陛下にとって、ミンの夫の任命式で知ったミンの事を良い機会だと思われているそうだ。


 おばばは、王都で出産するミンを魔女として認定し、そのままミンは王都で魔女学園開設の準備をする事に成った。


 第2城塞内に住まいを与えられて、ミン夫婦は住まいを整えるのに大忙しだそうで。

 ミンによれば義母殿が家政婦や料理人を紹介してくれるので人集めは助かっているそうです。


 ラーファが住むのは第3城壁内のウルーシュの町中に在る下屋敷なので、だいぶ離れているのは残念です。


 8年間過ごしたイタロ・カカリ村、イガジャ領に住む沢山の知り合い、ラーファは此処でマーヤと楽しく過ごす事が出来ました、どんなに感謝しても足りません。


 ありがとう皆さん、ラーファは旅立ちます。


 次回閑話で第1部終わりです。

 次のビチェンパスト国編の第2部は5月中旬から始める予定です。

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