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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第6章 第1部最終章 別れ
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第84話 暗雲(4)

 竜騎士の活躍は意外な方面にも広がったようです。

 初級回復薬、中級回復薬として普及してく新型ポーションの登場です。

 本格的な冬が始まる前の10月、3年前に入学して来た王女や大公の子弟たち8人の卒業生で部隊を作る事に成りました。

 8月に竜騎士学園を卒業して、各家へ帰っていた卒業生を一時的に部隊として活躍させる事にオウミ国の上層部が決めたそうです。


 竜騎士学園を卒業した第1期生は、一度王都へ集合して臨時の新設部隊緋竜騎士隊の結成式を大々的に行う事が決まり。

 カカリ村に残る飛竜3頭の全てが王都へ移動して、緋竜騎士隊のお披露目式で王都の上空を飛行したそうです。

 王都からダンケル城塞都市へ、イガジャ侯爵城館、西の大公領都ガトヴォツェ要塞都市、を経てダンケル城塞都市へと3日で移動して行った。


 この時期に最前線のダンケルへと派遣されたのは、緋竜騎士隊が宣伝部隊の任務を担っているのだと思います。

 王女を含む8名全員が無事にダンケル着いた後、代わりにレイたち6名が休暇を貰って帰ってきました。


 恐らく高貴な貴族が最前線で活躍している事を国の内外に広める事で国民の士気を高めるのでしょう。

 オウミ国の指導者たちは冬の到来で、戦は春まで無いとみているのかもしれません。

 飛竜の方もキー、ティーとトドが帰って来て、チャとラスが代わりにアリスと魔女の竜騎士ミンと共にダンケルに残っています。


 レイにとってお腹の大きくなったアニータに会えるのは良かったと思います。

 レイは生まれてくるわが子が、男の子ならハードリイ女の子ならカーライルと名前を決めたそうです。

 男の子の名は先祖の名から貰った名前でカークレイさまやサンクレイドル様と話し合ってつけたそうです。

 女の子の名はアニータの曾祖母、イガジャ族で王家の側室に成った方の名前だそうです。


 秋が深まり、戦争も冬支度のためか直接的な戦闘は少なくなってきているようです。

 そんな中、カカリ村へも聞こえて来たのは、色とりどりの布や旗で飾られた緋竜騎士隊がロマナム国の王都ベイリンの上空へ何度も飛来し、降伏する様に書かれたビラを上空から撒いたと言う武勇伝です。


 特に姫竜騎士のメリンゼ王女は目立ったようです。

 2度目にメリンゼ王女が飛来すると、ロマナム国の王都に「歓迎メリンゼ姫竜騎士さま」と書いた幕を城壁に張り巡らしていたそうです。

 メリンゼ王女を賛美する者たちの仕業だったらしく、その次に飛来した時は撤去されていたそうです。


 アリスの事も知られていて、新妻竜騎士として人気だとか、此方は商人からの情報だそうです。

 何か戦争だと言うのに劇団の人気者に緋竜騎士隊がなったかのようです。


 ラーファは、敵の王都を竜騎士で火の海にしないのは攻撃後の悪名を嫌ったのか、停戦の機運が在ると判断したのか分からなかった。


 ラーファはしつこくラーファを求めるロマナム国が怖かった。

 出来れば竜騎士で王城ぐらい焼き討ちしてほしかった。


 カークレイさまに焼き討ちの事をぼやいたら、ぽかんとされていた。

 カークレイさまには焼き討ちの様な発想が全然無くて、王女様の行動は「見栄を張る」騎士の行動で敵陣に少数で近づき名乗りを上げる事で勇気を認め名声を上げる行為なのだそうだ。


 緋竜騎士隊以外は冬の間戦争は雪に遮られて自然に休戦状態になっています。


 レイの息子ハードリイが元気な産声を上げた。

 ラーファが魔女として出産を助けた、出産も安産で産後の経過も順調だ、アニータに回復魔術を行使したが魔女の薬でも良かったぐらいだ。

 レイが生まれた子供を抱きたいのに、抱くのが怖いのか先ほどから腕を上げたり下げたりしている。


 邪魔にしかならないレイを追い出して、生まれた子の産湯を使いながらマーヤの時の事を思い出した。

 ラーファは洞窟でマーヤを産んだ時、力尽きて死んでしまい、その後の事は彼の方が全て行ってくれた。

 マーヤも元気に生まれたと思うが、出産の最後の方の記憶は無いので、恐らくこんなに元気に泣いていたのだろうと改めて思った。


 彼の方の助けが無ければラーファもマーヤも死んでいた、改めて彼の方へ深く感謝した。


 世間の戦争気分も雪に埋もれ静かな冬を、ラーファは新しい薬の開発を試行錯誤して過ごした。

 魔女見習いでも作れる回復薬の件だ。


 現状は魔道具が無ければ薬を作る事が出来ない。


 だが、戦争は膨大な需要を作り出した。

 魔道具を作るには時間も資源も足りない、更に魔道具を操作する人員が絶対的に不足している。


 傷薬の需要は薬全体の95%にまで跳ね上がっている。

 切り傷、刺し傷、矢傷、打ち身、骨折、全て傷薬の対象だ。

 そして傷を負って直ぐに使用したいと現場から要望が来ている。


 形状も戦場で使用するには問題が在る。

 箱から取り出して、カップにセットして押す。

 手間がかかり時間が惜しい。


 一つの案が出てきた。

 魔女見習い5年ぐらいから身に付く初歩の回復魔術程度で作れる傷薬だ。


 錬金術で魔石を魔水化した物に魔女見習いが回復魔術を付与する。

 出来た回復薬に錬金術で簡易カプセルの作成を行い、カプセル状の入れ物に入れた状態で作る。


 使う錬金術は初歩的な付与と入れ物の作成ぐらいだ。

 一度に10個ぐらい作れるだろう。


 問題が在るとすれば、簡易カプセル作成なので使用期限が1年ぐらいで使えなくなる事ぐらいだろう。


 この回復薬を初級回復薬とする。

 効能は戦場で飲めば受けた傷なら瞬時に回復するぐらいの効果は在る。


 重症者の場合は、更に効能を高めた中級回復薬を作れば良い。

 恐らく魔女見習い6、7年目ぐらいで行使できるようになる回復魔術を行使すれば作れるだろう。


 更に上のひん死の傷でも回復する上級回復薬も魔女が作れば作れるだろう。


 これなら魔女教育に錬金術の教育が必要になるが、魔女学園で学べば大丈夫だと思う。


 次回は、戦の無かった冬が終わり再び戦が再開されます。

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