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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第6章 第1部最終章 別れ
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第79話 (閑話)変化の兆し

 ル・ボネン国からの使者とロマナム国とオウミ王国の反応です。

 ル・ボネン国国王アルセウス・セルボネ・ネーコネン・ボネンはダキエ国から輸入したダキエ金貨1枚もするカガミの前で自慢の高く美しい鼻と鼻の下の髭を見ている。

 アルセウスは自分の高貴な鼻と立派な髭が自慢で、人々に自慢の鼻と髭を如何に凛々しく見せるか、毎朝カガミを見ながら考えるのを楽しみにしている。


 しかし、今日の見栄えは気に入らなかった、オウミ国でロマナム国の商人が引き起こした事件の知らせがもたらされ両国に比べ出遅れている自国の事が気に入らなくてイライラしていたのだ。


 アルセウス王はロマナム国の密約破りの行動を危機感を持って受け止めた。

 最初にイスラーファに気が付き対応したのはわが国だ、しかるにゼフュロス(ロマナム王)の奴がちょっかいを出して全てを混乱に突き落としてしまった。

 今回もゼフュロスが約束を破って手を出した、ゼフュロスは危険だ。


 そして一人美味しい思いをしているオウミ国を嫉妬の目で見ていた。

 聞けば最近販売され始めた魔女の薬も、うわさの飛竜と竜騎士もイスラーファが元だと言う。


 アルセウス王が幼少の頃から愛読している物語に出てくる、一騎当千の活躍をする騎士とはまさに竜騎士ではないか。

 ダキエ国にも無い、ポーションに匹敵する魔女の薬の数々。

 その全てを手に入れているアークライト(オウミ王)がうらやましい。


 アルセウス(ル・ボネン王)は使者を両国へと送った。

 ロマナム国へは恐れを裏返した居丈高に非を問う使者を。

 オウミ国へは提案と言う名のロマナム国を出汁にした要求の使者を。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ロマナム国国王ゼフュロス・ロマナム・ネーコネン・アルブレヒトはル・ボネン国からの今回の事件への非を問う使者を玉座から見下ろしていた。

 玉座に其の大柄で筋肉質の体を座らせて、顎鬚を弄びながらイラツク心を仮面の様に表情を出さず黙って聞いていた。


 心の中では「コシ・カッチェの奴、下手を撃ちやがって!」と舌打ちしたい所を我慢して心の内でコシ・カッチェを延々と扱き下ろしていた。


 ゼフュロス王が今回の事件への疑念を伝える使者が述べる言上を聞き終わり、手を上げると。


 玉座の下に控えていた、痩せて目ばかりがギラツク男が携えていた紙を広げ読みだした。

 「恐れ多くも賢くも… (前略)

 今回の貴国の申し出で在るが、如何せん貴族とは名ばかりの商人風情が他国で仕出かした事で在り、検討するに能わずとの結論に至った、恐れ… (中略)わが意は変わらず友誼を結び信頼を得る事で在る とのお考えは臣下一同全てが心得て… (後略)。」


 などと返事をするだけで謝罪も無く、今後の処分も決まっていないとしか返答が無かった。

 商人が使ったとされる手錠と首輪も保管されていると断言しており、たとえ本物を突き付けてそれは偽物だと言ったとしても盗まれたとでも言う積りだろう。


 ル・ボネン国の使者も「密約は守る」との言葉(臣下一同全てが心得ているだけである)を持って帰るしかなかった。


 大いに不満を抱えた使者が帰った後、ゼフュロス王は今回の事件が引き起こす一連の出来事を予想して幾つかの手を撃つ事にした。


 ダキエ国の商人へオウミ国で作られた薬を持たせ、更なる魔道具の提供を得るため、密使を向かわせた。


 ル・ボネン国以外のネーコネン一族の国々へ外交使節を送り出した。

 表向きは傭兵ギルドの設置を促す事だが、裏では密かにイスラーファと言う財宝を生み出す「神の子」を得るための同盟を結ぶために。


 今後はル・ボネン国だけでなくオウミ国からも非を問う使者が来ると思われる。

 さらには両国が共に我が国へ、懲罰を理由に戦を仕掛ける事を予想して、密かに戦争に備える様に臣下に命令をするロマナム王だった。


 そして傭兵ギルドへ密かに有力な傭兵団をロマナム国へ引き込む事を依頼した。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 オウミ国アークライト・ムコライ・オウミ国王は王城に在る客室の豪華な一部屋で椅子に座り、対面に座るル・ボネン国の使者から話を聞いていた。

 アークライト王は既に60歳を過ぎ髪も白くなっていたが矍鑠かくしゃくとした体に大きな丸い顔と真ん中にでんと在る大きな団子鼻が有名なお方である。


 「わが主(アルセウス陛下)は竜騎士を持ち、今魔女の薬を売り出されているあなた様がうらやましいと仰せです。」

 使者の言葉ににっこり微笑まれたアークライト王は、「わたしもイガジャ侯爵がうらやましいですね。」と返答なさり、使者から苦笑を引き出している。


 使者は続けて、

 「わが主はあなた様がイスラーファの存在を何故ル・ボネン国へ知らせて下されなかったのか残念にお思いでござった。」


 頷きながら聞いていたアークライト王は直ぐに返事を返した。

 「イスラーファの存在は王家も5月に知ったばかりで、使者を出す前に今回の事件が起きてしまった、ル・ボネン国へは色々と残念としか言いようが無い。」

 しかしアークライト王の返事は使者には少しばかり腑に落ちなかったが、アークライト王が今回の事件について苦々しく思っているのは間違ってはいないと判断した。


 オウミ国の王ともあろうお方が5月までイスラーファの存在を知らなかったとはあり得るだろうか?

 疑問は棚上げにして次の件を話す事にした。

 「わが主は魔女の薬とやらを大量に買い付ける事を陛下にお約束願えればとお思いです。」


 それに対し、アークライト王は、

 「オウミ国では薬はまだ量産が出来ず、国内でも困窮している事を知ってほしい、量産化を現在急いでいる所であり、量産できれば買い付けに協力する事はやぶさかでない。」


 「ありがとうございます、あなた様のお言葉わが主へ確かに伝える所存。」

 とわずかに頭を下げ礼を取る。


 「最後に竜騎士学園への入学を我が国にも開いていただきたい、この件は2国の友誼のためにも是非ともお考え頂きたい。」


 アークライト王は、しばらく考えていたが、考えが纏まったのか後ろに控えている一人の老人に聞いた。

 「ジョウガン、飛竜は今何頭いるのか?」


 「メスが3頭、オスが2頭でございます。」と聞かれた事だけに答える。


 使者は此の男がオウミ国の強さの一つ影の組織の長だと知っていたが、改めて問われるまで其の存在を分からなかった。

 壁沿いに控えている侍従らは室内に控えている事は見れば分かるが、彼だけは今の今に至るまで気が付かなかった。


 アークライト王は、老人の言葉に頷くと使者の方を向いた。

 「現在5頭居るが、繁殖には10才まで待たねばならぬ、後4年で卵がどのくらい得られるか、話はその後となるので待つようにお伝え願いたい。」


 使者はこの件は否定されなかった事こそオウミ国の方針を伝えていると受け取った。

 「は、この件あなた様のお考えの一端をお教えいただきありがたき幸せにございます。わが主にはしっかと伝える所存であります。」


 アークライト王は、頷くと、

 「今回の襲撃、オウミ王国にとっても唐突に置きた事件で在り、遺憾であることを知ってほしい。」

 と話を締めくくった。


 そして、今回の真の会談の内容、ロマナム国への制裁について言及した。

 「オウミ国は制裁の検討は賛成するが、先に両国でロマナム国への詰問状を連名で出す事を先にするべきだと提案する、貴国からの返事を待っている。」

 アークライト王は、立ち上がると使者が立ち上がり深々と礼をする姿を見て、後ろに在るドアから部屋を出た。


 使者はアークライト王が部屋を出るまで礼をしたままでいた。

 ドアの閉まる音がすると立ち上がりこの部屋に入る時に使った国王の出たドアの反対側に在るドアから出て行った。


 その日徴兵係の係官から傭兵ギルドへ密かに有力な傭兵団をオウミ王国が雇いたいとの依頼が出た。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 両国からの返事は蚊帳の外に置かれたル・ボネン国にとって満足のいくものでは無かった。

 オウミ国からの返答は期待したほどでは無かったが、待てば希望を叶えると言ってきているだけよかった。

 しかし、ロマナム国はあまりにも配慮に欠けた返事で、ル・ボネン国への侮りが透けて見える。


 アルセウス王は、オウミ国の提案に賛成すべく、使者を送る事を決めた。


 アルセウス王は軍務卿に傭兵ギルドへ有力な傭兵団を雇い入れる様に命令した。


 3国に再び戦雲の兆しが出てきた。


 国家間で詰問するされる場合は戦争の覚悟が前提ですが、あくまで脅しの段階です。

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