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魔術師、異世界をソロで往く 過去編 第1部  作者: 迷子のハッチ
第6章 第1部最終章 別れ
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第76話 持ち込まれた難題(8)

 新しい治癒魔石は新しい難題を引き寄せたようです。

 新薬の供給を増やすために、新しく工房を魔女の城郭以外に作る事に成りました。


 ジョモス村はラーファも知ってる村ですが、昔はイガジャ領で前は北の大公領、今年からイガジャ侯爵領となった村です。

 アリスの結婚に合わせて新イガジャ侯爵邸の工事が始まっています。

 この侯爵邸の一角に薬の工房を作る事にしたのです。


 カカリ村の工房と侯爵邸の工房の2ヶ所で製造すれば増えた需要に対応する事が出来るでしょう。

 新設の工房は恐らくイガジャ男爵さまからのアリスへの結婚祝いだと思います。

 今の生産数でも月に金貨1500枚の売り上げが在る薬の製造を5倍にして作るのですから。


 薬の卸オズボーン商会へは領民への置き薬の値段の倍の金額で出荷しています。

 オズボーン商会はそれにどの位の値段を付けて売っているのか知らないのですが、巨大な利益を上げているようです。


 イガジャ領に入るお金はサンクレイドル様がこの頃ニコニコしている事でよく分かります。


 6月に行われたアニータさまとトークレイ(レイ)の結婚式には子爵家からはご両親が来賓として見えられた、アニータさまのお母さまは陛下の末の姫様です。

 レイは男爵家を継ぐ者ですから此の結婚式はイガジャ領を上げてのお祝としてイガジャ邸で盛大に執り行われました。


 式にはアリスの婚約者ヘンドリック殿下も出席していたので、ラーファはアリスから魔女の一人としてラーファの名で紹介して貰った。

 魔女は名を隠すと言っても領主まで隠す事はしないので、名前で紹介されるのは仕方が無いのでしょう。


 式の後アニータさまへまで魔女のラーファとして紹介されたので、ひょっとしたら王家はラーファがイガジャ領に6年前から住んで居る事を知っているのかもしれない。

 知っていて知らないふりをしていたのなら王家はラーファを捕まえるより、前に通達で知らせた様に友好を結ぶ事を選択しているのかもしれません。


 ラーファはこのままイガジャ領に住んで良いのでしょうか?

 別れを決断してもなかなか言い出せなかったけど、もう言う必要が無いのかも、恐らくですが。


 侯爵邸はジョモス村を見下ろす道に沿って山の中を大きく切り開き作られている。

 城塞としての機能を持つので三層の堀と石壁で囲われた大きな物です。

 工房はその最重要部分の三層目の中に在ります。


 工房の重要性を考えるとここしか無いのですが、人を雇うには困った事に成ります。

 三層目まで入れるような身元が確かな人材は既に雇われている人かこれから社会に出て行く新人ぐらいしか居ないからです。


 人材と言えば治癒魔術が使える魔女も人が居ない、既に魔女として活躍している人に声をかけておばばの元で学び直しを呼び掛けているのですが、誰も来ない。

 魔女として使い魔や薬の知識を身に着けてしまうと、新しく魔術まで習う気がしないらしい。


 そこで魔女見習いをしている子を対象に師匠の魔女へ、新しい魔術を覚える気が在るならおばばの元へ来るように伝えて貰った。

 するとイガジャ領の周辺から結構な人数(8人)が集まったのです。

 おばばは張り切って、魔女学園に初等科と高等科を作って彼女たちを高等科で教える事になりました。


 ラーファは工房に魔道具を据え付けるために飛竜のピースィに乗ってやって来た。

 ピースィを神域へ入れ、周りを見回すと工事の人足が基礎工事の終わった場所へ石を積んでいる。

 城館に成る部分だろう。


 侯爵邸の工事の総責任者は家宰のバンドル様ですが、そのバンドル様が迎えてくれました。

 側に居る人を、薬の工房の建築を引き受けた請負人のダルトンさまとラーファに紹介してくれました。


 「初めてお目にかかります、王都で建築と土木を営んでおります。」

 礼を取る姿からは、穏やかな雰囲気を纏った腰の低いお方の様に見受けられます。


 「こちらこそ宜しくお願いします」

 魔女ですから名乗りはしません。


 ダルトンさまに案内されて工房へと移動します。

 バンドル家宰さまは本館の工事を監督するために残られました。


 工事中の城館からしばらく歩いた南端に、三方を城壁に囲まれた出城の様な場所に新しい工房がある。

 侯爵邸が完成すればここは最奥の隔離された場所に成るのだろう。


 工房は既に完成していて内装もほぼ完成している。

 建屋の中程に在る薬の製造場所は広い一部屋で中はがらんどうです。


 これから魔道具を設置して行くのだから何も無いのは当たり前ですが、とても広く感じます。

 恐らく魔女の城郭に在る工房の10倍は広いのではないでしょうか?


 今日は設置だけして試運転は、明日から始めます。

 今此処には、ラーファを迎えた工事の請負人のダルトンさまや現場の責任者の方が何人かいます。


 ラーファの周りにいる人に部屋から出る様に伝えます。

 これから製造魔道具を設置するのに周りに人が居れば邪魔ですから。


 さて何時もの様に神域インベントリから出して設置して行きましょう。

 何せ数が多いですから効率的に設置して行かないと日が暮れてしまいます。


 研磨機が10台、各種治癒薬製造魔道具が20台、計30台もの数に成ります。

 新しく作った各種治癒薬製造魔道具は1台で4種類の薬が作れる優れものです。

 既に魔女の城塞の工房へ設置して薬の製造を始めています。


 昼10時(午後3時)位に魔道具の設置と確認作業が問題なく終わりました。

 現場の責任者の方に作業が終わった事を伝え工房を出ます。


 工事の請負人のダルトンさまが近づいて来て、「お疲れ様でございました。」と言ってラーファの左手に何か黒い物を載せました。


 何を乗せたのでしょう?

 「ガチャッ」と音がして手錠がラーファの手首に嵌りました。


 近づいたダルトンさまが右手を掴んで残りの手錠も嵌めてしまいました。

 あまりにも自然で、危機察知も何も察知していません。


 手錠が出てきました、油断が在ったとしか言いようが在りません。

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