第71話 持ち込まれた難題(3)
竜騎士学園の事についてです。
イガジャ男爵様はラーファに「王家と婚姻する件で他に決まった事が在る。」と続けられました。
「飛竜の育成を目的とした資金を王家が出資し、行く行くは国内の貴族への飛竜の提供を目指す。」
「まぁ、名目だけじゃがな、そうでも言わんと金の出しようが無いからの。」
「で、王家から皇太子の一人娘が竜騎士学園に入学する事に成った。」
と、あっけらかんとおっしゃいます。
今の竜騎士学園はまだ飛竜舎のみのこじんまりとしたものでしかありません。
其処へ王女殿下をお迎えするのはいささか無理が在ると思います。
処が男爵様は更に続けられます。
「大公家へも痛みは伴うが竜騎士と言う うま味を与える事に成った。」
「陛下の妃は西の大公さまの妹じゃっで、西の大公さまは甥の子への婚姻のお祝いとしてコガジャ領を送る事に同意した。」
「そして西の大公の子弟を竜騎士学園へ入学できる約束を得た。」
男爵さまは嬉しそうですね。
竜騎士学園に入る時に王家や大公家の方が一人で来るとでも思っているのでしょうか?
それとも強制的に一人で寮に入れてやろうとでも思っているのでしょうか?
受け入れ施設を作る事に成るのでしょうね。
場所的には竜騎士学園が在る城郭にはまだ余裕かあるので作る事が出来ますが、肺病隔離病棟や魔女学園の施設は別の場所へ計画を変える必要がありますね。
ラーファが色々悩んでいる間も男爵様はお話されています。
「南の大公も皇太子妃の親として孫への結婚祝いに飛竜学園の建設費を全て出す事に成った。」
「そして南の大公も子弟を竜騎士学園へ入学できる約束を得た。」
あらま、建設費全額ですか、それはそれは良い事を聞きました。
奮発して王家と大公家の学生寮を豪勢に作りましょう、それに貴族用の学生寮も作っちゃいましょう。
「最後に、北の大公は領地をイガジャ侯爵へ割譲する見返りに子弟を飛竜学園へ入学できる約束を得た。」
まぁね、北の大公の事はどうでも良いのですよ。
「と言う事で、竜騎士学園に大公家の3人と王家の1人が入る事に決まったわけじゃ。」
「来年の6月までに人選を決めて儂へ知らせる事に成っとる。」
受け入れは決まりましたが、内容は此れからラーファが男爵さまと決めて行かねばなりません。
問題は、竜騎士の勉強だけしていればよい分けでは無く、貴族としての教養を学ぶ年齢を含む事です。
この件は王家や各大公家で教える内容が違うためにイガジャ家がかかわる事が出来ません。
結局、教養は王家と各大公家毎に学生寮を建て教養を学ぶのは王家や大公家に任せる事にしました。
ついでに所属する貴族の子弟が入学して来るなら所属毎の学生寮へ入れて面倒を見て貰います。
場所(学生寮)は益々大きな施設となって行きました。
必要な人員も増えますし提供する備品や食料など負担が大きくなって行くばかりです。
最終的に魔女学園の建設取りやめとなって、しわ寄せが魔女学園へと行ってしまいました。
竜騎士学園の授業はレイやアリスが学んだ内容をイガジャ領兵専用として、魔女見習いたちが学んだ内容を竜騎士コースと正式に決め、学んでもらう事になりました。
竜騎士学園への入学は9月時点で12歳以上18歳以下の男女で3年間学ぶ事に決めました、これは魔女見習いの子たちが学んだ内容を吟味してラーファが決めた事です。
入学枠も王家、大公家とも毎年2名の合計8名と決めましたが、此の人数は国内の貴族から増やせと圧力がすごかった、飛竜が5頭しかいないので物理的に無理として、男爵さまに頑張って貰った。
飛竜の頭数が増えれば、また入学の枠を増やせと言って来るだろうけど、5年先の事など今は考えたくありません。
3年間子弟をイガジャ領に預ける事に成る貴族ですが、王家の思惑も絡むためある程度の人選はする必要があるでしょう。
ある意味人質の様な意味合いを持つのかもしれませんがラーファのあずかり知らぬ事です。
竜騎士学園の事は決まりましたが、しわ寄せを食らった魔女学園の方ですが。
国中から能力のある少女を魔女見習い候補として魔女学園に入学させる事は断念しました。
竜騎士学園の規模が大きくなりすぎて敷地が足りなくなったからで、おばばは嘆いています。
ただし、入院患者専用の病院を竜騎士学園の城郭に建設する事は、最初の計画通りで、その一角に肺病隔離病棟も作られます。
魔女学園の名前を残したかったのか、おばばは飛竜舎と飛行場の在る一角を魔女学園として広く一般から魔女見習い候補を募集する事にしました。
結局、魔女の育成は此れまで通り魔女の城郭で行います。
魔女学園入学には魔力の有る事が前提となるため、入学資格試験が実施されます。
一般入学希望者へは魔力の有無を調べる事に成ります。
能力者を見つけて推薦する事は魔女の仕事の一つなので、推薦入学で入る事も出来ます。
魔女学園への入学は此れまでの魔女見習い候補と同じ7歳からです。
5月麦の収穫が終わり、領内が「ほっと」一息ついた頃。
9月から入って来る学生を受け入れる各学生寮の整備も終わり。
竜騎士学園と魔女学園の両校の入学も近づき、ラーファは男爵家の顧問として忙しく過ごしている。
結局ラーファはイガジャ男爵様に別れを切り出せずにズルズルと男爵家の顧問として諸問題の対処を続けていた。
あえて顧問に収まっているのは何時でも辞める事が出来そうな地位だからだが、返って何でも屋として問題の解決を押し付けられている気がしている。
もたもたしている内に、次の難題がラーファの元へやって来た。
イガジャ領に新しい産業(お金儲け)を男爵さまは見つけてラーファに無茶を言ってきます。